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なぜ俺は放課後、天使と堕天使のハーレムと正義の味方してるんだ!?  作者: 一色一二三
第三章 正義の味方、エンジェルレンジャー部
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第二十四話 信じる者は救われる、と天堂城太郎は見せつけられる

今回はかなり短いです。

また追加するかもしれません。

「でも……悪魔召喚って、そんな簡単にできてしまうものなのか」

《本気で信じるならば、幼子にもできる》

「マジかよ」

《安心しろ。多くの者は信じぬ。。貴様とて、最初は我らを天使と信じなかっただろうが。人間が具象に頼っている以上、一かけらの疑いが挟まれるものだ》



“私は謳おう。

 あなたは地の底、虚空の闇、

 すべての善の双子でありすべての人の陰。

 光の前に闇があり、水面に映る影がある。

 肉を歓び欲を尊び、邪を愛でる闇の子よ”



 なおも禍々しい詠唱は、場違いなくらい明るく晴れやかに謳われている。


《心の底から悪魔を、理を超える者の存在を信じ、儀式を行えば――否、儀式すら『信じる』ための補助具に過ぎぬ》

「信じる者は救われる、ってか」

《そうだ。例え天使でも、悪魔でも、すべての父に対しても》

「それはありがたいことで。てめーら天使だろ、精神体アストラルだろ、召喚場の方向ぐらい分かんねーのかよ」

精神体アストラルだから分からぬのだ。禍々しい気にかき乱され、上も下も区別がつかぬ》


 確かに、ウリエルはくるくると頼りなく浮いているばかりだ。

 仕方ない。俺は血の聖書を開いた。

 指でページを弾く。

 あった。予想は当たっていた。

 ウリエルの詠唱が読めるようになっていた。

 俺の記憶にじっとりと、血の聖書の文言がしみ込んでいく。


「太陽から地上を見下ろした、おまえの『目』を借りるぜ」


 悪魔には、悪魔を裁いた天使の眼を。


「“南座専術サウス()天通眼アストロスコープ”」


 俺は目を閉じ、開いた。

 聖なる光が空間を貫き、視界が一変する。

 ウリエルの姿も、禍々しい「気」とやらも、はっきりと俺の眼に映っていた。


“来たれ、来たれ、来たれ。

 私は天を踏み地を頭上に戴く。

 血を呑みくだし、あなたに淫し、業を孕もう。”



 学校は昏い霧に包まれていた。

 月明かりすらろくに映えない。

 だが、そんななかで、うす紫色の光が見えた。

 屋上だ。

 あれは商業科棟だろう。

 目と共に研ぎ澄まされた耳も、あの方向から響く詠唱を、はっきりと聞き取っていた。



地獄ゲヘナの孕み子よ。

 ジュデッカ、トロメーア、アンテノーラ、カイーナ、

 プレゲドン、ハーデス、ステュクス、アケロンの住人よ。

 セフィロートの鏡よ、実像を喰らう虚像たちよ。


 罪びとを打ち据え、偉大なる堕星に仕えども、

 あなたに名はなく、あなたに姿はなし。


 嗚呼! 堕星のみどりごよ、罪の枝葉よ。

 アドナイ、エル、エロヒム、エロヒ、エヘイエー、アシェル、

 エハイエー、ツァバオト、エリオン、イヤー、テトラグラマトン、シャダイ、

 言葉より先にまします主の名において、

 あなたを呼び、あなたの力を願う。”



 俺は目を見開いた。

 天通眼アストロスコープは、異常をはっきりと映していた。


「まずい」


 俺は商業科棟に向かって駆けだした。

 耳鳴りがひどい。目まいもする。この空間全体が俺を拒否している。


「“加速ビーダッシュ”……“加速ビーダッシュ”! 畜生!」


 数秒も経たぬうちに校舎に辿りついた。

 佐久島の姿はない。

 おそらく空間のゆがみに乗じて、もう屋上にいるのだろう。

 俺はお呼びではないから自力で行かねばなるまい。


《焦るな。ことを仕損じるぞ。貴様、何が見えた》

「いたんだよ」

《なにが》

「悪魔が。思ったよりことが進んじまってる」


 校舎の裏に回りこみ、梯子に手をかけた。

 憑依のおかげで身体が軽い。

 梯子を登れば登るほど、風が強くなる。


 中学生のころ、屋上で弁当を食べる高校生活に憧れていた。

 誰もいない屋上でひとりきり。

 もしくは、友だちと秘密のランチ会場に。

 それとも、そこで新たな出会いがあって。

 でも大抵の高校生と同じく、俺も進学して幻滅した。

 屋上とは名ばかり。

 安全の名のもとに、扉は固く閉ざされていた。


「佐久島!」


 俺は名を呼び、屋上に立った。

 臭気に満ちていた。

 錆びた、酸っぱいにおいだ。

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