何もしておりませんが世界を救ったようです。
私、転生しました。
神様がご褒美にって大好きなファンタジー小説の世界に転生させてくれたんです!っていっても小説の中ではないんですって!その作家さんは自分の前世の世界や人物をモデルにして私が大好きなファンタジー小説を書いていたそうです。本当にリアルなファンタジーって評判の小説だったんですよ。次回作も同じ世界の話でそっちはラブコメな話がメインらしいですが、それを読むことが出来なかったのは残念ですね。でもでも、そんな憧れの世界に転生です!!
ちなみにご褒美の理由は私がすばらしく良い子で聖人並だからだそうです!すごいでしょ!!!
いやー、自らの手で殺生をしたことが無い今時、珍しい子だなんて褒められちゃいましたよ。蚊すら殺さないっていうのは難しいらしく、何千万人に1人の確率らしいです。実は…私、すっごくドンくさかっただけなんですけどね……。蚊やGを殺そうとしたことは何度もありました……。全て逃げられましたけどね!まぁそんな感じでご褒美くれたんです。死んだ時の記憶は無いんですよ。覚えているのは、学校からの帰り道にバナナを踏んで……はっ!そっそんな花も恥らう16歳の乙女ですよ私!バナナで滑って頭を打ったなんて、そっそんな……。まぁ、私の死因は美人薄命ってことで!いいですね、皆さん!
そんなこんなで神様に色々、希望を言って転生させてもらったんです!
『勇者様に守られて~世界を救っちゃったりなんかして、あっもちろん美しくって、皆に愛されたらうれしいな~』
ええ、分かっています……はい…うかれておりました。
だって!夢だとおもったんですもん!そりゃ、好き勝手言うでしょ!
そして私は勇者に守られ世界を救うモノになりました。皆に大切にされ愛されておりますし、その美しさといったら光り輝いております。
なにしろ救世の為に神が残した聖珠ですからね!とっても敬られておりますよ!
玉ですけどね!
皆さんに見蕩れられる美しさですよ!
七色に光り輝く美しい水晶球ですからね!
上げ膳据え膳で勇者様に守られてますよ!
何しろ手も足もなんにも無いですしね!
はぁ……私は生前、珠子って名前でした。あだ名はタマちゃんやオタマでした。うっ……本当に玉になる日が来るなんて…。あの小説では勇者様の周りにはお姫様とか巫女さんとか女の人いっぱいいたのに~!なんで無機物?まぁ過ぎたことを嘆いていても仕方がありません。前向きな私は浄化の力を持つ聖珠としてがんばって生きる(?)ことにしました。
小説にもありましたがこの世界を救うには、勇者様が反神殿派によって隠された聖珠(私)を見つけ出し、神殿に戻せばいいのです。そうすれば、私の力により世界は浄化し救われるのです。ええ、勇者様には様々な苦難が訪れますよ!私を見つけ出してからも反神殿派は諦めずに襲ってきます!私を守るためにボロボロになる勇者様や仲間達!私、何も出来ませんでした。本当に……。私だって頑張って小説の知識を伝えようともしたんですよ!でも勇者様や仲間の魔道士さん、神官さんに巫女さんに王族の方々や通りすがりの方や敵さんにも……ひたすら話しかけましたが、私の声が聞こえる人は誰もいませんでした。光り方すら変えられませんでした。
そんな無力な私はずーっとただただ守られて無事に神殿に祀られました。それに、よし!やっと出番だ!って思ったら……私が祭壇に安置された途端に自動的に光が強まり勝手に浄化が始まりました。ええ、私なにもしておりません。小説では書かれていなかったので知りませんでしたが、どうも祭壇に浄化システムが入っており私はただの鍵というか電池の様な物だったようです……。というか浄化って……巨大な空気清浄機?な感じでした。空気よくなかったんですよね、この世界。ということでお空が綺麗になりました。空を覆っていた白いもやがなくなり澄み切った青空が!!!
もう一度言わせてください。私、何もしておりません。しかし世界を救ったようです。
そんなこんなで世界を救った私ですが、暇です。本当に。最後に、力いっぱい言わせて頂きます。
「ひまだー!!!!」
そんな彼女は知らなかった。彼女が好きだった作家さんは確かにこの世界で前世を過ごしたが、もっとずっと後の時代を生きたのだということを。その作家さんの次回作こそ、作家さんが前世を生きた時代であり世界を救ったご褒美を神様から貰う理由になった事件(?)を題材に書かれたものである。
そう、作家さんの前世は聖珠が神殿に戻り空気を浄化させた百年以上経った世界だった。そしてその時代には、ある危機がこの世界には迫っていた。そんな時、神殿で神に祈る巫女姫にご神託がおりたのだった。それは聖珠を剣に取り付け、聖剣として、剣にその力のかけらを全て吸収させることが出来れば女神が復活し、この世界に迫る危機から救うというものだった。 そう、実はこの世界には様々なモノに女神の力のかけらが封印されていた。勇者や仲間と供に聖剣に一体化した彼女が様々なモノに封印されている女神の力のカケラを全て回収するのは苦難の連続だった。最初はウキウキとお出かけ!冒険!と喜んでいた彼女だったが……。
「ちょっと!いやー!そんなんに刺さりたくない!!!いやっ!血が!なんで緑なの~!!!」
「ちょっと!勇者!ばか!そんなん触った手で私に触るな~!!!」
「いや~!!!助けて勇者!魔道士が私を拭こうとしてる布、さっき戦士さんが体拭いてた布だ!!!」
「キャー!なんで立ちシ○ンするのに私も連れてくるのよ!!!いやーもうお嫁に行けない……」
「馬鹿勇者!そんなに振り回すな!!!あぁ~気持ち悪い……」
「前の勇者様は大切に守ってくれたのに!優しく磨いてくれる巫女姫がいる神殿に帰りたいよ~」
「馬鹿勇者達!!今に見てなさい!!!!絶対!復讐するからね!!!」
今日も誰にも聞こえない彼女の叫び声が澄んだ青空に響いていた。
そんな試練のせいで立派な潔癖症(?)になった彼女は無事に女神として光臨し、勇者達を復讐がてら下僕にすることに成功、そしてこの世界の衛生観念に革命をまき起こした。聖珠から聖剣になり最後には清めの女神と呼ばれることになった珠子はこの世界に迫った危機である疫病に見事に打ち勝った。そんな珠様と呼ばれる女神と下僕になった勇者に恋は生まれるのか…?
また、勇者の仲間で女神の復活後は勇者とともに女神の下僕となった魔道士が女神の語る前世の世界や小説に興味を持ち、神様に転生をお願いして珠子がいた時間軸のちょっと前の世界に転生を果たしたことは神様しか知らなかった。そんな元魔道士が前世の記憶を元に勇者と女神のラブコメ小説を書いてそれが映画化までされることになるとは……実は面白がって彼らを転生させていた神様でさえ読み通せなかった。もちろん、自分の使い走りだった魔道士が現代日本に転生して自分が大好きだった小説を書くとは珠子は知る由も無かった。
つづ……きません(笑)