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第四話

いよいよギルドメンバーとNPC達の登場です。

誤り等がございましたらすみません。


 

 あれから特に何事もなく草原を抜けて平地に出たソラは、自分の視界に映る周囲の風景を眺めながら足を進めていた。


 草原もそうであったがこの平地も全く自分の記憶に無い場所であった。

 例え初級モンスターが出る初心者向けのフィールドだとしても、周りの風景を見ればすぐに思い出す。それほどまでにやり込んだのだ。

 アルスニルの世界のほぼ全てを見て来た。足を運んだその場所は今でも鮮明に覚えている。

 だが、それでも全く見に覚えのないこの風景に戸惑いと共に好奇心も涌き出てくるのもまた事実だ。新たなフィールドに興奮しないプレイヤーはいないだろう。



 ソラは視線を正面に戻すと遠くに見える濃い緑色の森を注視する。

 転移石を使う前にいた森と同じように、太い木々が立ち立派な枝が大きく広がっている。

 しかし、大きく広がっている枝が太陽の光を遮っているせいか何だか暗い。その暗さは何とも言えない不安を煽る。


 ソラは気を引き締めるとその森を目指して進む。



◇ ◇ ◇



 間近で見る森の中は案の定視界が悪いが、《闇視》のスキルを持つソラにこの暗やみは全く問題はなかった。今のソラの視界はまるで昼間のように明るく鮮明に周囲がよく見えている。


 森の中は不気味な程静寂に包まれており物音一つしない。


 しかし、そんな静寂を壊す高い声がソラの目の前の木々から突然聞こえた。



「止まって下さい」



 ピタリと、ソラは森の中に入ろうと踏み出そうとしていた足を止める。

 目の前の木々に注視すると木々の間から人影が出てくる。

 一体何者なのか。そんな事はわかっている。


 “プレイヤー”だ。


 声を発するなどプレイヤー以外あり得ない。 

 PEOはモンスターの雄叫びなどはあるが、実際に声を発して言葉を話すのは例えNPCノンプレイヤーキャラクターでもプレイヤー以外は出来ない。


 つまり必然的にプレイヤーと言う事になる。


 しかし、声が硬いというか冷たいというか妙に敵意を含んだ声にソラは警戒をする。


 それは当然の事なのかも知れない。 

 PEOには決して少なくないPKプレイヤーが至るところに潜んでいる。何故PKプレイヤーキルをするのか。ましてやそれを専門とするのか。

 それは経験値が多めに発生するのや新たなスキルが習得出来るのもそうだが、何よりもそうさせるのは相手のアイテムを奪えるからだ。

 もし、数に限りのある希少なレアアイテムや入手に困難な限定アイテムがあったらどうなるか。

 無論誰もが欲しがるだろう。



 それにプレイヤー同士の戦いなど珍しくも何ともない。むしろ多いぐらいだ。

 ギルド同士で戦う大規模な戦いだってある。

 有名なギルドやプレイヤーになる程狙われやすい。それはソラが所属するギルドだって例外ではない。

 また、ギルド同士の戦いとなると勝った時様々な特典が貰える。代表的なのが城といった拠点やその拠点の拡大などである。

 これは実に魅力的であり、プレイヤーのほぼ全員がギルドに所属するのも頷ける。



 さて、とりあえずはまず相手の警戒を解かない事には何も始まらない。

 ソラは相手の顔を見て口を開こうとするのだが、驚愕に目を見開く。



「あっ……!!」



 顔だけでなくその全貌が視界一杯に入る。

 まず、目を引くのはセミロングの綺麗なブロンドの髪にアイスブルーの瞳。白雪のような白い肌に完璧な顔のバランスたが、それは美しいというよりは可愛い類の方だろう。


 そして何よりも目に焼きつくのは白とピンクのフリルがついたロリータ服。

 白いぴっちりとしたストッキングとミニスカートとの間から見える肌は絶対領域、素晴らしいものだ。

 短めの白いマントを羽織り手にはいかにも魔法少女が持つ魔法のステッキ的な白とピンクの小杖ワンドを持っている。先端には白い羽の豪華な装飾が施されておりその真ん中にはルビーを思わせる紅くて大きい宝石が埋め込まれていた。

 年齢は十三か十四くらいの少女で、耳は長く尖っており背中には白く透明な蝶々のような羽を生やしている。

 服やマントの下から羽が出ているという事は、恐らく羽を出すための穴が開けられているに違いない。


 そして、ソラはこの少女を知っている。



「アリスか!!」



 ソラが驚愕の表情のまま叫ぶように言う。



「えっ!。どうして私の名前を!」



 すると少女ーーアリスもまた大きく開けた

口元に手を当てて目を見開く。


 彼女はソラが所属する『リアル・ニート・デイコーゼ』のギルドマスター、ロリコの専属NPCにして変態でロリコンな魔法少女好きのギルドマスターの願望を体現したような“魔法少女”だ。ちなみに余談だがエルフ好きでもある。


 そんなギルドマスターの願望ならぬ欲望が具現化したNPCが目の前にいるのだが、それよりも気になる事がある。



「アリス?」

「はっ!。何で私の名前を知っているんですか」



 アリスはソラに名前を呼ばれてはっと我に返ると目付きを鋭くしてソラを睨む。

 

 たが、そんな事よりも驚愕すべき事がある。


ーーーNPCが喋った!。


 それも口を動かして。更に顔の表情を変え、しっかりと受け答えをしている。


 ありえない事だ。


 NPCの表情は動かないのが基本。ましてや声を発して喋るなど。

 いや、そもそも何で彼女がこんな場所にいる?。

 ソラが神妙な面立ちで思考に浸っているところへアリスは更に警戒の色を含んだ声で言う。



「答えて!。至高の方々から頂いた私の大切な名前をどうしてあなたが知ってるの!」



 至高の方々?。 

 ソラは気になる言葉に思考を中断する。

 名前を至高の方々から頂いたという事はつまり、そのアリスという名前をつけたアリスを創造した人物。

 そうなると至高の方々というのは……。


(ロリコさんを含めたギルドメンバーの事か?)


 アリスに視線を戻すとこちらを先ほどよりも更に鋭くなった目付きで睨みつけてくる。また、アリスの周囲の空間が徐々に歪み始めた。

 これはまずい。

 ソラは慌てて口を開く。



「落ち着け!。俺はソラだ!。ロリコさん達と同じリアル・ニート・デイコーゼのメンバーだ」



 至高の方々というのが自分を含めた同じギルドメンバーの者達を差すのなら、今にも飛びかかって来そうなアリスを止める事が出来るかも知れない。

 少なくとも話しを聞いてくれるはずだ。

 しかし、



「嘘!。ソラ様がそんな“幼女”な訳がない!」

「あっ!」



 そうだった。

 アバター変更してたんだった。

 思い出したと同時にソラは何とも言えない複雑な気持ちを抱く。だが、それ以上に幼女と言われた事にショックを受ける。せめてそこは少女と言ってくれと叫びたくなるが、逆にその考えがまた更にショックを生む。


 そんなソラの心の内など知らないアリスは更なる追い討ちを掛ける。



「ソラ様は長身で白髪で綺麗な紅い目をした強くて素晴らしい“男の”方です。あなたみたいな“幼女”とはそもそも性別自体が違い、存在そのものが違う」



 ぐはっ。

 ソラは心に大きな傷を負った。

 別に好きでこんな姿になったんじゃないと、全く説得力の無い言い訳を頭の中で連呼する。

 しかし、良い情報を得た。

 それはアバター変更をした前の姿だが自分の事を知っているという事だ。

 様々な疑問が次々と浮かび上がるがまずは自分がソラだと証明をしなければならない。


 では、どうやって証明をするのか?。


 言葉だけではまず無理だ。ギルドに所属する仲間達でしか知らないような情報でも疑われるだけだ。そもそもこの容姿だ。アバター変更する前の姿ならまだしも、この容姿で何を言っても先ほどのような結果に終わるだけだろう。

 ステータス画面を見せれば一発で分かるだろうが、残念ながらそれは自分だけしか見る事が出来ない。

 

 ならばどうするか。

 

 自分達ギルドメンバーだけしか持っていないアイテムや、例えば身分証のようなせめてその代わりとなる物などがあれば良いのだが……。

 そこでソラは気づく。

 ある!、あるのだ。自分がソラである事は今はともかく同じギルドメンバーだという事は証明出来る。


 ソラは若干の安心を感じながらメニューウィンドウを出現させるとアイテムボックスを開き“あるもの”を取り出す。

 その取り出した物は指輪だった。

 何もない空間から右の掌に突如として現れた黄金に輝く指輪をアリスに見えるように動かす。


 その指輪にはリアル・ニート・デイコーゼのギルドサインが刻まれている。


 拠点を持つ時に貰える特典の一つで、装備中に同じギルドに所属しているギルドメンバー達の間で伝言メッセージが送れる他に、指輪を持つ者同士が近くにいれば全ステータスの数値上昇の効果がある。


 形状は何も指輪だけではなく、腕輪や首飾りと合計三種類あり、特典を貰える時にこの中から選べるのだ。


 アリスはその指輪を見た途端、これ以上ないくらい目を見開く。



「そ!、その指輪は!!」



 どうやら成功のようだ。

 アリスの周囲の歪みは消え、敵意もだいぶ薄れたのを感じる。

 最後に指輪を右手の人指し指にはめる。すると指輪は一瞬だけ眩い輝きを放つ。

 この一瞬の輝きこそ、その指輪の所有者という何よりの証明だ。

 まあ、同じギルドメンバーなら誰でも起きる現象なのだが。



「どうだ?。これでわかってくれたか?」



 それでも恐る恐るといった様子で聞くのは仕方のない事なのだろう。




お読み頂きありがとうございました。

まだまだ個性豊かなNPCは出てきます。


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