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第三話

誤り等がございましたらすみません。

更新は週末を予定してます。

 

 ソラは見落としているんじゃないかと思い目を細めて見るが、やはり消失していた。


 何故?。


 項目が消えるなんて通常はありえない事だ。

 まさかアップデートによるものなのか?、それとも何かのバグか?。 

 様々な疑問が浮かび上がるが、こうなってしまってはもはやクエストどころではない。何せそのクエストをする項目が無くなってしまったのだ。こんな状態でクエストの受託は不可能だ。

 とりあえず、こういう場合は運営側に連絡をしようとシステムの項目に指を持っていくが……。



「嘘だろ……」



 そこには更なる衝撃があった。


 何とシステムの項目がクエストと同様にまるでそこには始めから何も無かったかのように、跡形もなく綺麗さっぱりと消滅していたのだった。


 ありえない。  


 システムの項目にはGMコールの他に“ログアウトボタン”もあるのだ。

 つまり、何が言いたいのかと言うと運営側に連絡どころかこのままではログアウトをする事すら出来ないのだ。

 すなわち、現実世界に戻る事が出来ない。運営側に連絡を取る事が出来ず、完全にゲームの中に閉じ込められたと言う事だ。


 だからこそ、システムの項目の消滅と言う異常事態にソラはその場を動く事が出来ない程衝撃を受けたのだが。


 その衝撃は唐突に消えていった。 


 ソラはその急な精神の落ち着きに動揺する。

 あれほどの衝撃が一体何故急に消えたのか、どうしてこんなに冷静に落ち着いていられるのか。 


 そこでふと自分の身体を見回す。


 まず始めに気が付いたのは今まで無かった胸にある二つの丘。


 ……丘?。


 その丘の正体について数秒考えて、わかった途端にざっと顔が青ざめる。


ーーーまさか!?。


 その二つの丘に恐る恐る自分の小さくなってしまった手を伸ばす。


 柔けぇーー!。


 自分の小さな手から零れそうなぐらいの大きさのそれが手を動かすごとに形を変えていく。 


 さっと手を離す。


 今の自分の顔は酷く真っ赤になっている事だろうとソラはうつむきながら思う。


 そして次にこれがなかったらもう終わりだと、若干の諦めと希望を抱えて股を触る。


ーーー終わったぜ。俺の聖剣が無くなった。


 ソラはどこか遠い目をして項垂れるが、何時までもこうしている訳にもいかず頭を振ると同時に気持ちを切り替える。


 今の状況を整理しこれから何をすれば良いのか思考する。 


 やはりまずは情報だ。これが無い事にはどうする事も出来ない。


 とりあえずは自分と同じプレイヤーを探して情報を得る事と周辺の地理について把握する事から始めようと考えると開いたままだったメニューウィンドウを操作する。


 その目的は今の装備の変更だ。


 PEOは防具やアクセサリーは自分の体格に合うようにサイズの調節がされるが、武器だけはそういう訳にはいかない。その結果、自分の体格に合った武器しか装備する事が出来ない。


 想像してみれば分かるように自分より大きい武器、例えば今のソラの背に自分よりも身長が高い大剣を装備するとしよう。


 はっきり言って物理的にも無理がある。


 大剣が地面に刺さっているような状態で着いておりその状態で移動など、見ただけで分かるようにおかしい。

 

 だからと言って武器のサイズを調節する訳にもいかない。

 そんなことをすれば色々と問題が起きてくるのは明白である。


 故に武器の装備だけはどうしても制限が掛かってきてしまう。


 しかし、それは少なくないプレイヤーの不満を買った。

 何故なら自分の使いたい武器を使う事が出来ないからだ。


 そこで、運営側がそんな不満の声に答えたのが緊急装備という機能だ。


 この機能はいわば手に武器を装備するのだ。


 通常は背中や腰に装備をするのだが、この緊急装備の場合は直接手に抜き身のまま武器を出現させ装備することが出来るのだ。

 これにより装備した武器は例外なくどんな武器でも使用出来るが、当然制限がある。

 緊急装備をする事が出来るのはあくまで自分の体格に合わない武器だけだ。


 それ以外は通常装備になる。また、緊急装備をする事が出来るのは一つまでで、武器を出現させて戻した時は一定時間使用が禁止される。



 たが、“今は”どうだ?。

 

 今のこの状況下でPEOのシステムがどれくらい適応されるのか確かめる必要があった。


 ソラは背中に差してある二つの剣を通常装備のスロットから外すと、代わりに緊急装備のスロットに入れて装備をした。


 右手の人差し指と中指を合わせて横に振るう。緊急装備はこの手順で使用するのだ。


 すると何も無いところから急に両手に収まる形で二本の抜き身の剣が出現する。


 二本の剣を離しそれが地面に落ちると光の粒子となり消えた。


 緊急装備のスロットを確認すると確かにそこには先ほどの二本の剣がある。

 再度右手の人差し指と中指を合わせて横に振るうが、今度はエラーが生じる。

 この結果、緊急装備の機能は生きているとわかった。



 続いて防具の装備を変更する。


 このアバターでは先ほどの戦闘で気付いたが、剣士として戦うにはあまりにも不向き過ぎる。


 身長と共に剣を抜く為の腕の長さが足りない。緊急装備を使えば良いが、それだとどうしても限界がある。

 

 一定時間使用禁止の制限に対抗して常に装備をするとして、その状態でプレイヤーにあったとしよう。


 それでどうなるか。


 無論プレイヤーは警戒するだろう。


 PEOはPKプレイヤーキルが有効だ。

 PKを専門とするプレイヤーさえいるのだ。

 そんな見ず知らずの人が武器を抜いた状態で近寄って来るのだ。

 例えPKプレイヤーで無くても警戒をするなと言う方が無理があるだろう。

 只の会話でも武器を出したままの相手と果たして落ち着いて会話する事が出来るだろうか。安心して話す事が出来るだろうか。



 ソラはサブ職である魔術師用の防具を装備する。

 今の状態では魔術師をメインにした方が良いだろうと言う判断だった。

 服装が変わり黒いロングコートから黒いローブに変わる。続けてシャツとズボン、グローブにブーツと全て黒を基調に紅の刺繍が入った物になる。


 全ての武器や防具、アクセサリーやアイテムなどにはレア度があり下から初級、下級、中級、上級、最上級、超級、伝説レジェンド級、神器アーティファクト級、世界アース級となる。 


 今のソラの防具は上から下まで全てシリーズ式で、黒獄蝶こくごくちょうと言う虫系統の超級モンスターの素材で作られている。

 レア度は超級と普段の剣士の防具に比べると二つ下がる。

 ソラの本職は戦士職系統の剣士であり魔法職系統の魔術師ではない。

 故にこれが今の手持ちの魔術師用の防具の最高である。

 

 こういう事ならもっと強い防具を用意しておけば良かったと悔やむが無いものはしょうがない。


 次にアクセサリー類の変更をしようとしてはたと、手が止まる。 

 その視線の先には現在首に装備している戦女神の首飾りと言うアクセサリーがあった。


 レア度が神器アーティファクト級のこのアクセサリーには全異常状態無効の他に全属性耐性、HP自動回復(最上)、MP自動回復(上)、そして精神異常無効の効果もあった。


 ソラは先ほどの急な精神の落ち着きはもしかしてこのアクセサリーが関係しているのではと、ふと思ったがそれは無いかと装備の変更を再開する。


 ゲームの中で本当に精神に作用するアクセサリーなどあるはずがないのだから。


 “ゲーム”ならだが。


 ソラは装備の変更をほぼ終わらせると、最後に武器の変更をする。


 そして、驚愕する。



「ひのきのぼうしかねぇー!」



 魔術師用の武器がそれだけしか無かったのだ。

 酷い何てものではない。ここまでくれば、むしろ凄い。

 そもそも何でこんなのをずっと持ってたんだ?と、ソラは頭を抱える。

 とりあえずひのきのぼうを装備するソラだが、こんな初級武器を装備して歩いているなど襲って下さいと言っているようなものだと、この時のソラは気づかない。


 全ての装備の変更を終わらせたソラはステータス画面に表示されている容姿を見る。


 そこには腰まで伸びる絹糸のような綺麗な銀髪に澄み渡る空を連想させる碧眼、透き通るような白い肌。完璧に整ったその美貌は絶世のと言う言葉では足りない程。まだ少女と言うには早いような年齢の女の子が、今の自分だと認識すると改めて痛感させられる。



 溜め息をつきながらソラはまっすぐ前を見て歩き出す。


 その頭の中にはこの異常事態の出来事ーーではなく、この容姿でギルドの仲間に会ったらどうしようと言う事でいっぱいだった。







お読み頂きありがとうございました。

次回から物語が進みます。

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