表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

第一話

誤り等がございましたらすみません。


 見渡せばそこは視界に収まり切れない緑が豊富な森の中。人間の倍以上はある木々に、その木々を上回る天を突かんと立つ巨大な樹木が堂々とその存在を主張していた。

 そんな木々や樹木に囲まれた大自然の中を嬉々とした様子で歩く者がいた。身長百八十五センチぐらいの白髪で紅い目をした丁度二十歳ぐらいの男だ。黒いロングコートに白を基準に所々赤のラインが入った服装、背中には二本の剣を黒いベルトで固定していた。

 


 その男の名はソラ。緋ヶ崎空が愛用し、彼が凝りに凝って作り上げた自慢のアバターだ。

 


 ソラが今日やる事はズバリ、期間限定のイベントクエストだ。彼が嬉々とした様子なのはそれが原因で間違いない無いだろう。

 

 しかし、それと同時にソラは焦ってもいた。何故ならそのイベントクエストの期間が今日までで終わるからだ。今は楽しみにしている気持ちよりも早くやらなければと言う焦った気持ちの方が勝っているだろう。

 

 ソラは左手の人差し指をピンッと立てると縦に軽く振るう。すると目の前にメニューウィ ンドウが出現する。このメニューウィンドウは自分だけしか見ることが出来ない。これは例えフレンド登録をした者達であっても例外ではない。

 


 ソラは左人差し指を動かして『クエスト』という項目をタッチし、現在配信されているイベントクエストを探す。そこに、期限が今日まででソラが今からする『蒼鬼神の孤島』というクエストを選 択する。名前の通り蒼鬼神が支配する孤島だ。クエスト達成条件は、この孤島にいる蒼鬼神を討伐することだ。蒼鬼神は神クラスに位置するモンスター だ。当然一筋縄では上手くいかないことは容易に想像が付く。

 


 やっぱりここはギルド全員で挑んだ方がいいだろうか?と、ソラは考えこむ。 久し振りに全員で狩りに行きたい気もするが、それだと今からギルドの仲間を全員誘うのに時間が掛かる。

 

 ソラは一年程前からギルドと呼ばれる組織に入っている。


 ギルドというのは八人以上のパーティーの事を言い、これに所属していない者は片手に数える程しかいなく大概は全プレイヤーが所属している。

 

 

 ソラが所属しているギルドの人数はソラを含めて総勢八人。他のギルドに比べてかなり少ない類に入るがその強さは桁外れだ。

 

 そのギルドの名は『リアル・ニート・デイコーゼ』、全員が男で構成されている。名前は正直何とも言えないかもしれないが、驚く事に今では最強クラスのギルドとしても名が知れている。

 


 その中でのソラはギルドの切り込み隊長よろしく特攻隊長をしている。

 これはソラのレベルと職業が関係している。

 

 職業には基本、メイン職とサブ職の二つがある。また、超位レベルまで行くと、サブ職2とサブ職3が追加され、合計四つの職を持つ事が出来る。

 

 ソラはメイン職を戦士系の職業である剣士を取っている。また、超位レベルまでいっている事もあり、サブ職2とサブ職3が追加されている。

 サブ職は魔法系の職業である魔術師、サブ職2には退魔術士、そしてサブ職3には拳闘士を取っている。


 メイン職とサブ職の違いは、レベルの値の差だ。


 レベルの最大値は150がMAXで、メイン職はレベルが150までいくのに対し、サブ職はレベルが75までしかいかない。


 ここがこのゲームの難点で、メイン職を何にするかで今後の自分に大きく影響するだろう。

 このゲームで狩り以外をするつもりの者 なら、例えば商人や職人などの戦闘向きでない職業を選ぶ者でも、どの職をメイン職にするかで悩むだろう。


 また職業にはそれぞれくらいが あり、その位によりレベルの限界値が決まる。

 

 まず下から初級、下位、中位、上位、最上位、そして最上位を超える超位という位がある。 

 初級はMAXレベルが15となり、これが初級レベルの最大値だ。続いて、下位のMAXレベルは30、中位はMAX60、上位はMAX90、最上位がMAX120となる。超位のMAXレベルは当然150である。

 そして、レベルがMAXになると次の位に昇格する事が出来る。


 位が昇格したら様々なボーナスや能力値とスキル等の飛躍的な上昇が発生する。

 それでまたMAXまでレベルを上げるのだが、上位まで昇格すると正直面倒になってくる。

 PEO は初級クラスの時でさえレベルが上がりにくい。それが昇格する事に更に上がりにくくなり、上位になると一つレベルを上げるのに多大な経験値が必要になってくる。最上位クラスから超位クラスとなると、もはや笑ってしまう程の膨大な経験値を稼がなければならない

 しかし、裏を返せばこれはこれでやりがいがあるのもまた事実だ。


 さて、改めてイベントクエスト『蒼鬼神の孤島』を確認する。


 参加レベルは最低でも最上位クラス以上、それもレベルが95以上のだ。

 ソラのレベルは150なので十分参加する事が出来る。

 150ーーつまり超位クラス、それも超位レベルMAX。ここまで来るともはや廃人を通り越して廃神と呼ばれる事間違い無しだろう。

 そして超位クラスの特異点の一つとして、驚くべき事に職業の名前が変わる。

 

 ソラのメイン職は剣士だが、職名が変わって『剣王セイバーロード』となった。

 これがソラがギルドの特攻隊長となった所以ゆえんだ。



 「ん?」



 クエストの内容をじっくりと見つめていると、ある項目で不可思議な点を見つける。

 それは、参加条件という項目で参加レベ ルとは別に書いてあった。



 「巫女?」


 

 女性の巫女クラス、つまり職業で女性の巫女を取っている者がいないと参加出来ないと書いてあったのだ。詳しく見てみると巫女のスキルの一つである《神楽》を使い、蒼鬼神を目覚めさせないといけないらしい。



ーーー厄介だ!。なんてこった!。巫女なんて職業取ってないぞ!。それに俺、男だし。



 このままだとこのクエストが受けれないと、ソラは激しく動揺する。



(蒼鬼神め。いや、蒼鬼神に怒るんじゃなくて運営側に怒るべきか?)



 どうしてこんな条件にしたんだと心の中で叫ぶが、こうしている間にも時間は確実に過ぎていく。

 しかし、そこでふと気付く。



(そういえば、この森の近くに転職屋があったよな?)



 転職屋とはその名の通り職業を転職する場所であり至るところにある。珍しい素材やアクセサリー等も売っておりプレイヤーの中では色々と重宝されている。

 性別はメニューウィンドウのシステム画面のアバター変更から変える事が出来る。

 

 しかしソラは抵抗感を覚える。自分が作り上げた自慢のアバターを変えるのもそうだが、それ以上に性別を変えるという事に強い抵抗意識が芽生える。

 

 だが、それと同様に蒼鬼神の素材が欲しいと言う気持ちもあった。

 限定素材はかなりのレア物だ。モンスターが落とすドロップアイテム、それも神クラスとなるとこちらもかなりのレア物にちがいないと容易に想像が出来る。それに期間限定クエストで入手出来る素材等は、終了してしまうと絶対ではないが入手が極めて困難になってしまう。


 それに比べれば性別とアバターを変えるぐらい簡単じゃないか、とソラは自らを奮い立たせる。



ーーーそうだ!、ずっとじゃ無いんだ!。あくまでイベントクエストが終わるまでの一時的なものだと、言い訳地味た言葉を自分に言い聞かせる。



 イベントクエストを終わらせたらすぐに元に戻そうと決めると早速取り掛かる。

 システム画面に行きアバター変更をしようとしてピタリと止まる。



 どうせ変えるなら一から作り直そうか?。


 

 今の状態で性別だけを変えるのなら、今のアバターを少しだけいじる程度だけで済むが、それだけだと何だか面白みが無い。

 どうせ変えるのならせっかくだし始めから作り直した方が面白そうだと、ソラは一からアバターを作り始めた。







 それから、ある程度の時間が過ぎてようやく出来上がった。

 その仕上がりに思わず笑みがこぼれるが、そこではっと気付く。



ーーー自分の好み、いや、性癖がもろ丸出しだ!。



 慌てて消そうとするが、クエスト受付の時間が残り少ない事に今更ながら気付く。

 また作り直すとなると今度こそ時間が無くなる。それに、まだ転職屋にすら行っていない。

 もう時間が無いからいいやと、今出来上がったそのアバターに変更するとアイテムボックスから転移石を取り出し言った。



 「転移・転職屋」



 言い終わった直後、ソラは白い光に包まれて消えた。





お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ