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Lily  作者: もんかる
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5話だから説明するメイド

 魔界の食事は不思議だった。なんの動物の肉なのかわからないが、豪快に焼かれてジュージューと肉汁を滴らせている骨付き肉。付け合わせには青々しいサラダとこれまた何でダシがとられているのかわからないがキラキラと輝くコンソメ風のスープ。

 そもそも魔族は食事をとる必要がないという。それにも関わらず、味覚もあるし腹を満たすという感覚もあるらしい。


「おいしい!!」

「魔族は人間と違って魔力を生きる活力としています。魔力は大気に満ちているものですので、この角から適度に吸収されます。従って、魔族が食事をとるのは稀なのです。ただし、魔力のない世界では食事が必要です。食事からも魔力を摂取することができますので」


 丁寧にメイド――ラルシアが説明した。

 リリィは食べながらも適当に相槌を打っていたが、おそらく半分も理解していないだろう。


「言っとくけど、私はあなたがこのお城に住むことに賛成はしてないからね。ただ、私の魔王様がどうしても住まわすって言うからしょうがなく……。だから魔王様のご期待に答えて、一応このお城の説明をしておくわね」


 さっきの説明とは打って変わって軽い口調になった。きっとメイドとしてのプロ意識があるのだろう。


「このお城は魔王様のお城です。魔界ヴィルゲニスにおいて数少ない建造物のひとつです」

魔界ヴィルゲニス?」

「この世界の名称よ。それくらいわかりなさいよ」

「知らないもん……」

魔界ヴィルゲニスは大きく分けて、多くの魔物と少数の魔族やその他の種族によって形成されています。ただし、文明を持っているのは魔族と龍族のみになります」

「へぇ」

「そして、このお城はその魔族の長である魔王様のお城になるわけです。それでは話を進めますよ。このお城には魔王様の下に四天魔がいます」

「シテンマ?」

「そうです。魔王様には劣りますが、魔族の中では最上級に力を持つ者たちです」

「ふーん、ラルシアは?」

「呼び捨て……まぁいいわ。私は魔王様直属のメイド長となります。魔王様から仰せつかったのであなたのメイドでもありますが……身の回りの世話をするつもりはないんでよろしく」

「メイドとしてどうなのそれはっ!?」


 わざわざ丁寧にお辞儀までされて言われたため、思わずリリィはツッコミを入れてしまった。


「四天魔には粗相のないようにしてください。面倒くさいことになりますので。それから、食事はこちらで用意しますのでご心配なく。あとは、このお城の外には出ないようにしてください。魔物もいますし、色々面倒くさいことになるので」

「あ、はい」


 とりあえず、面倒くさいことになるということだけわかった。


「ふぅ。こんなもんでいいわよね?」


 体裁を取り繕って疲れたのか、ラルシアはリリィが食事をとる対面の席に腰をかけた。


「ま、とりあえず、魔王様を渡すつもりはないんで」


 正直なところ、ベルにそこまでの魅力があるのだろうか。確かに顔は芸能人並みにかっこいい。更に身長も高いし、スタイルもいい。しかし、性格がどうもリリィには気に食わないところがあった。それは初対面での印象が悪すぎたということもひとつなのだろう。

 リリィは心底興味のない顔で答えを返した。


「ふーん。どうでもいいけどそのメイド服さ、もっとフリルつけようよ。地味じゃない?」


 リリィにとって、服の話こそ一番の話題なのである。恋愛は女の子として興味がないわけではないが、他人の色恋沙汰にはまったくもって興味がなかった。


「なっ、じ、地味だなんて失礼よ!せっかく魔王様からプレゼントしてくださったものなのに!」

「基本的なデザインはいいと思うんだけど、ちょっと地味すぎだよー。今度その服貸してね、可愛くしておくから」

「いやよ!」

「絶対ベルだって可愛い方がいいってば、むっつりそうだし」

「……そうかな?」

「うんうん、そうそう」

「か、考えておくわ」


 何を想像したのか、ラルシアはフフフとにやけていた。

 リリィは食事を終え、自分のカバンの中身を確認した。その中には簡易的な裁縫セットがしっかりと入っていた。常にカバンに入れているもののひとつなのだ。あとは生地があれば完璧である。


「わんわんっ」

「ん?」


 最初はラルシアの頭がおかしくなったのかと思ったのだが、どうやらこの声はラルシアから発せられているものではなかったようだ。


「あら、パトリシアじゃない」


 テーブルの下から顔を覗かせる犬のような魔物。

 どこかで見たことがあるような気がするんだけど……。

 リリィは首をかしげて考えるが、よく思い出せなかった。


「パトリシアっていう子なの?」

「この子は魔王様の従属魔物でジェンバジェンバ・パトリシアよ」

「パト!」

「わんわんっ!」


 可愛い!!

 角の生えた犬と考えれば、普通に愛でることのできるレベルの可愛さである。


「わんっ!」


 尻尾をフリフリしながら扉の方へ走って行った。


「散歩がしたいそうよ」

「行くっ!」

「あ、散歩の前に、この部屋があなたの部屋になるからちゃんと場所を覚えておいてね」

「はーい」


 返事だけは良く、パトを追いかけてリリィは外へ出て行った。


「あの子、私のありがたい話を三割も理解してなさそうね……」


 独り残ったリリィの部屋から大きなため息が聞こえてくる。

サブタイ通りに説明回でした。といってもそこまで大した説明はしてないんですよね。今後にとっておきたいと思います!

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