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Lily  作者: もんかる
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眠りから眠りへの2話

BCLLビークルのバーゲン!!」


 という一言で少女の目が覚めた時、その言葉を自分自身が発してたことに気づいて恥ずかしくなった。

 あれ、ベッド?あの大きな犬は?

 洋風なデザインで暖炉があり壁紙から絨毯まで綺麗に整った温かい部屋には、少女以外に誰もいなかった。もちろんあの化け物のように大きな犬の姿もない。

 洋風というか、これはもはや中世レベルの豪華な部屋だろう。


「どこのラブホ?」


 思わずついた一言に、少女は乙女の発する言葉じゃないと思って慌てて口に手を当てた。実際に行ったことがあるわけじゃないため想像でモノを言ったようだが、どうやらこのベッドは回らないらしい。

 前回目が覚めた時と同様の格好に、荷物もしっかりとベッドの横の机に置いてあった。

 あぁ、制服にしわできちゃったじゃん。

 そんなことを思ってベッドから立ちあがりスカートのシワを伸ばしていると、ちょうどこの部屋唯一の重厚で大きな扉が重い音を立てて開かれた。


「あ、起きてる」


 扉の音と対称的な軽い一言。

 言うなり入ってきたのは、赤い髪に二本の角が生えメイド服を来た女性だった。

 って角!?

 異様な姿の女性を目の前に少女がゴクリと唾を飲むと、


「小娘、起きたなら名乗ってからさっさと出て行きなさい」

「ぇえ!?」

「私の私の私の私の私の魔王様に近付く女はもう増えなくていいのよ」

「は、はぁ?」

「ほら、早く名乗って!」

「あ、えっと、三上梨璃みかみりりです!」


 少女はわけもわからないままに自分の名前を口にした。


「はい、じゃあバイバイ」


 メイドが初めて見せる笑顔で手を振った。とても冷たい笑顔で。


ガコン


 突如、少女がそれまで立っていた床がなくなった。

 あ、これ落ちるんだな。

 そう思った時にはもう少女の体は自由落下を始めていた。

 落ちてる!落ちてるよ私!!

 上の方から「いったーい!!」という謎の悲鳴が聞こえてきたが、今はそんなことはどうでもいい。


ドシン


 お尻から落ちた。ちょっと痛かったとお尻をさする。

 いや、ちょっと痛いですむ高さじゃなかったと思う少女は自分の丈夫さに驚愕した。


「あれ?」


 今度はさっきの部屋よりももっと豪華で広い空間に出た。

 少女の目の前には玉座みたいな椅子がある。そして、その立派な玉座に座るのは――若い男。

 漆黒というくらい深く黒い髪の毛に、さっきのメイドとは違った形状の角が二本。中世風の立派なお召し物を着て、マントまでついている。

 さっきのメイドといい、この男といい……あぁ、そっか。あれだ、コスプレだ!なんのキャラのコスプレなんだろう。あんまりアニメとか詳しくないけど話についていけるかな?でも、とにかくそんなことよりも、


「ここ、どこなの!?私はなんでこんなところにいるの!?あなたたちは誰なの!?そんでもってあの大きな犬はなんだったわけ!?」

「黙れ小娘」

「あっ……」


 男のその一言で、少女は気圧されて黙り込む。


「リリィといったか?」


 玉座に肘をつき、足を組んで少女――リリィを見下ろす。


「え、はい」


 ちょっと名前のイントネーションが違うけどめんどくさし怖いからそのまんまでいいとリリィは必要以上に開かない口をそのままに魔王を見る。


「お前、人間だな?」


 なにこの人、なんで当たり前のこと言ってるの?それともそういう設定なのかな?ここは合わせてあげないとかわいそうだよね。

 そしてリリィは冷静に考えた上で慎重に発言した。


「あなたはまさか……鬼!?」

「魔族だが?」

「魔族ですよねー」


 あぶなー、角だから鬼なのかと思ったけど魔族の方だったのね。もう、まぎらわしいのよ。っていうか魔族ってなに?角があるものなの?


「我が名は魔王ベルゲンス・バッシュリードだ。覚えておけ」

「ベ、ベルゲ……?」

「……」

「そ、それでベルは王様なの?」


 言うまでもないが、リリィは慣れ慣れしくそう発言したわけではない。覚えきれなかったから堂々とごまかしてみただけである。

 ふと、何か怖いものを感じたリリィが後ろを振り向くと、いつの間にかさっきのメイドが頭をさすりながら立っていた。


「魔王様に向かって呼び捨てとは……!」

「そんなことはどうでもいい」


 メイドが言い切る前に魔王が制した。


「まぁ、そうだな。俺は魔族を統べる王だ。ふむ、そうか……」


 魔王はリリィを見てなにかを少し考える表情をし、それから悪いことを思いついた顔をして一言呟いた。


「死刑にしようか」


 え?

 エ?

 えええええ!?

 あまりに唐突で残酷すぎる言葉にリリィの頭の中はパニック状態になった。


「なに言ってんの!?バカなの!?そうなの!?」

「お前の服装見るとイラつくから死刑」


 はぁ!?私はこの制服が好きでこの高校受けたのに、それ否定とかひどくない!?っていうかそんなとってつけたような理由でなんで死ななきゃいけないのよ!


「あんたいい加減にしなさいよ!大体ね、変なコスプレしちゃってさ、あんたの方が私より100倍キモイ格好してるわょ……イタッ!!」


 リリィが言い切る寸前、後ろから後頭部をおもいっきし小突かれた。


「魔王様になんてひどい口の利き方を!私の魔王様に!」

「いやラルシア、俺はお前のじゃないから。なに強調してんだ」

「そんな魔王様!あの夜のことは忘れられてしまったのですか……!」

「……」


 呆れた表情で魔王がラルシアと呼ばれたメイドを見る。

 くだらない愛の茶番劇場を目の前にリリィはため息をついた。


「とりあえず牢屋な」


 あまりにも軽いノリで言われている。そのことに疑問と不満とその他多くのことを思いながら、とりあえず抗議の声をあげてみる。


「ちょっと待ちなさいよ!私はなんも悪いことしてないでしょ!」


 殺されてたまるもんですか!とリリィが思った次の瞬間、魔王が指をパチンと鳴らしてリリィの意識は遠くなった。

 なんなの催眠術?ここに来てから意識飛んでばっかなんですけど……。

 バタリと倒れたリリィを見て、魔王は小さく零した。


「誰かさんにそっくりだ……」

主人公の名前をそのままタイトルにする安易さってアリなのでしょうか?

けけけけ決して手を抜いてつけたタイトルじゃないですよっ!?

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