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Lily  作者: もんかる
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小さな魔族の可愛くて恐怖の10話

「んで、なんでボクなんすか?」

「初対面にむかって露骨に嫌な顔しないでよ」


 魔王が貸してくれた四天魔はラグドリィと名乗る少女だった。身長はリリィよりも20センチ程低く、体型も子供である。ロングの赤い髪はお下げのツインテールにしていて、毛先が外側にくるりとはねている。

 カワイイ。

 リリィは可愛い妹を見る目でラグドリィを見る。もちろんリリィに妹なんかいない。


「なに見てるっすか」

「カワイイだもん」

「くだらないこと言ってないで早く行くっす」

「めっちゃオシャレさせてあげたいんだもん」

「ボクを褒めてくれるのは魔王様だけでいいっす」

「アレに外見を褒める甲斐性なんてあんの?」

「魔王様をアレって言うなっす!仕事に対するお褒めの言葉ならあるっす……」


 魔族は全体的に服装に対して特に重点を置いていないらしい。ラグドリィの服装も、リリィからしてみるととても地味だった。

 もっとフリルとかついてるやつのが絶対似合うのに!

 心で思いつつも、実物がない以上オシャレをさせてあげられない。


「ベルだってカワイイ格好の女の子のが好みだと思うけどなぁー」


 ピクっと角と耳が揺れる。


「せっかく素材がカワイイのに服が地味だなんてがっかりよねー」


 わざとらしいリリィの誘いにラグドリィはまんまと耳をそばだてている。


「ま、まぁ、そんなに服が重要だっていうなら着てあげないこともないっす」

「でも生地がないんだもーん」

「生地なら人間の町ニカエッジにきっとあるっす」


 その言葉を待ってました!

 リリィは、なんとなく期待していた予想が見事にはまって小さくガッツポーズを作った。

 この世界に来て以来のお城の外。少し緊張気味にリリィは歩きだした。

 ラルシアの話では、基本的に結界内には魔物は存在しないらしい。いても下級魔物なため、ラグドリィなら一瞬で消しさることができるという話だ。


「魔物……いないわよね?」

「下級魔物だけっすよ。退屈っすね」


 戦いたいんですかこの子は。

 魔物という響きだけで尻もちをつきそうなリリィとは対照的に、小さな歩幅でのんびりとあくびをしながら歩くラグドリィ。


「あ、さっそくいたっすよ」

「ひゃうっ!」


 リリィは思わず後ずさりする。

 視界に入ったのは人間よりも小さいけど人の形をしているなにかだ。少し皮膚がドロドロしているようにも見えるし、常に口を開けていてアーアーと小さく唸っている。正直に言って気持ち悪い。


「ほらほら、あんなグールなんて蹴飛ばすだけで倒せるっすよ。リリィとかいったっすよね?倒してみたらどうっすか?」

「むりむりむりむりむりむり!」


 ラグドリィは少し嫌な笑みを浮かべ、その場に座り込んだ。戦う気はないらしい。

 ちょっと待って、ほんっとに勘弁だってば!あんな気持ち悪いのと戦えるわけないし、武器だってないし、魔法だって使えないし、私にどうしろっていうのよ!


「ら、ラグちゃん!お願いだからやっつけてよ!」


 なぜか、グールは少しずつリリィの方へ歩み寄ってくる。

 やれやれと首をふり、ラグドリィは座ったまま右手でスカートの下に隠していた多節棍を握り、一直線に繋ぎ合せる。それを杖代わりについて立ち上がりグールを睨んだ。多節棍はラグドリィの身長をはるかに超える長さがあり、その姿は異様だった。


「しょうがないっすねぇ」


 しょうがないってあんたの仕事でしょうがぁ!

 などと心の奥で叫び、早くやっつけてくれと切に願う。


「烈風衝!」


 ラグドリィが多節棍を振りおろしながらなにやら叫ぶと、多節棍の先端から見える風がグールにむかって飛んでいった。そしてグールは一瞬にして風によって切り刻まれ、無残な姿となってリリィの目の前に転がった。


「うわ……」


 見ることがつらい。臭気によって吐き気すら催しそうになる。


「雑魚っすねー」


 その無残な残骸とは全くの無縁といった無垢な笑顔でラグドリィがリリィに近付いてきた。

 怖かった。こんな小さな子が、なんの躊躇もせずにやっつけてしまう。


「ほら、立つっすよ。さっさと行って、さっさと帰るっす」


 リリィはなんの言葉もでなかった。ラグドリィから差し伸べられた手を掴み、無言で立ち、無言で歩き始めた。

 これが魔界ヴィルゲニス。これがこの世界の常識なのだ。

 圧倒されつつ、リリィは必至にこれが普通であると心に言い聞かせながら人間の町ニカエッジにむかって歩いた。


「とんだ腑抜けっすね」


 小声でラグドリィがなにか呟いたようだが、リリィの耳には届かなかった。

なかなか動きのないストーリー展開で申し訳ないです!

人間界の様子も少し入れていって、徐々に動かしていこうと思います。

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