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食堂で朝食を摂った後、メリーさんと共にティーナ様の部屋へ向かう。
ティーナ様の着替えを手伝い、髪を結う。
アイテム選びはティーナ様本人が行っているようだ。
それが終わると朝食だったりお茶を淹れたり本を運んだり、ティーナ様がやりたいことの手伝いをする。
家庭教師が午前に2時間授業に来るのでその間は部屋の隅で待機。
合間の時間のお茶の準備をしたりするのだ。
お昼の準備やお昼寝の準備。
家庭教師が午後にも2時間やって来るので、部屋の隅で待機。
此処までが朝番のお仕事。
週に1回お休みを取るため、1日だけ朝番と昼番、両方をする日がある。
今週は早番で6日目に両方、7日目がお休みとなる。
お休み明けからは遅番。6日目がお休みで7日目が両方、その繰り返し。
第十三王子だし、まだ幼いし、仕事内容は軽い。
リリスフィアでは国王が複数存在して王位継承争いというものがない。
国王=議員、多数決、みたいな?
第十三というのはそのまんま13人目の王子ってことだけど、国王全員の子供を通算して数えるのでたぶん次男だったはず。
王位継承破棄しない限りは国王は年々増えて行くことになる。
王位継承は国王の血を引く男児なら誰でもOK。国王は一夫多妻制なので増えるときはがっつり増える。
だがしかし王位継承を破棄する王子は意外と多いらしい。
*
ティーナ様の選んだドレスは桃色のふんわりとした形だ。
それなのになぜ靴は茶色なの!リボンは黄色なの!
ひとつひとつはかわいいアイテムなのに残念すぎる!!
「ティーナ様。そのドレスならばこちらの靴の方がティーナ様にお似合いだと思います」
メリーがぎょっとしてる。
まずかったかしら?
でも誰の目から見てもこれはおかしいでしょ!
私が選んだ桃色のバレエシューズの方が断然かわいい!
「それからリボンはこの素材、この色!シューズのこの飾り部分と同じ色合いだし、ぴったりですわ」
ぽかんとしているティーナ様。
うん、ここまで来たら言ったもの勝ちよね。
「さ、かわいく結って差し上げますわ。鏡の方を向いてくださいませ」
うふふふふ。
リィリィシュカには負けるけど、ティーナ様も美少女(?)だもの。
楽しいわー。
実際は男の子だからちょっと髪質固い気がするけど、大丈夫。
リボンを絡め前髪からサイドへと編み込みつつ、纏め上げる。
完・璧!
いい仕事した!
「ほら、かわいいでしょう?」
ティーナ様は瞬いて、それから微笑んだ。
「すごい!こんな髪型初めて見たっ!」
あら今日は素直ね。
軽く興奮状態のティーナ様はぴょんぴょん飛跳ねて私に抱きつく。
小さい。
細い。
かわいい。
頭を撫でてやると我に返ったらしく、勢いよく離れた。
つまらないわね。
「・・・・・・?」
そして眉間に皺。
「どうかなさいましたか?」
「良い匂いがした」
良い匂いで思い当たるのは色々ある。
ベッドや洋服ダンスにバラのサシェを置いてある。
マイブームがバラなので、部屋のアロマオイルもバラだし、湯浴みの時も使っている。
因みに石鹸や化粧水もバラである。
「バラでございますか?」
「バラ?」
「えぇ、コレです」
制服のポケットにも潜ませてあるサシェを取り出した。
「コレ!コレ何?」
「バラのサシェですわ。王宮のお庭にもバラがありますでしょう?」
「アレがコレになるの!?」
「えぇまぁ・・・」
ドレスが好きならばこういうものも好きなのだろうか。
この国の石鹸は良い匂いはしないし、香り系が弱い。
今まで香り系が発達しなかったのが不思議だ。
だって中世ヨーロッパな感じなのに。香水はその時代に生まれたものだというのは有名な話だし。
「お気に召したなら、新しいものをお作りしましょうか?」
「本当!?」
「はい。材料はありますのでそう時間は掛かりません」
ティーナ様はすごく嬉しそうだ。
メリーさんも驚きつつも微笑ましそう。
**
ティーナ様が授業を受けている間、じっと片隅で待機。
暇なので授業内容に耳を傾ける。
文字だったり算術だったり歴史だったり地理だったり。
概ね私が習ったものと同じような感じね。
違うことだったらおもしろかったのに・・・。
昼食はティーナ様のご希望で一緒に摂った。
どうやら懐かれたらしい。
午後の授業は礼儀作法や芸術や武術といったものの時間。
本来王子ならば剣術を学ぶ。
しかしティーナ様は特殊なので礼儀作法と芸術。
何て言うか、リリスフィアって寛容だよね。
普通王子が女装ってNGだと思う。
まだ幼いから許されているとかそういうこと?
いや王位継承の破棄が自由ってところでリリスフィアの自由度が窺える。
王妃様が正室側室別れていないところ、身分が関係ないところもすごいと思う。
今いる王妃様の4分の1が平民だし。
その分御姫様が外の国に嫁ぐというケースがあまりない模様。
確かに他の国では身分、気にするもんね。
こうして二日目はティーナ様の着せ替え基ドレス選びを学習(?)しました。
さて気合を入れてサシェを作りますか!