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3 10歳

リィリィシュカは10歳になりました。


「王宮、ですか」


10歳になったら侍女見習に出たいので、ルーファス少年の家はどうでしょう、と。

確かに3年前にその話はしたけども。

その話がどうやら大きくなっちゃったみたい。

・・・軽いキモチだったのに。


「折角侍女見習に出るのなら、国王様もぜひにとおっしゃってくれてね」


リリスフィアの国王様たちは割とフレンドリー。

たち、というのはリリスフィアには国王様がたくさんいるから。


「具体的には、第十三王子というか、姫というか・・・」


「え?」


「王子なんだけどドレスがお好きで、それでリィリィと話が合うんじゃないかと」


何それ流行りの男のってヤツ?


「はぁ、まぁ、良いですけど」


「そうか、良かった!」


大喜びのお父様。

面倒だけど親孝行になるのなら、それはそれで。








新の月下旬。

現在地点はリリスフィアの王宮。

明日から第十三王子付きの侍女である。

今日は到着日なので仕事はナシ。

案内された部屋は実家の半分くらい。

それでも十分広い。

洋服ダンスと飾り棚、ベッド、机、イス、姿見。

お茶をするための小さなテーブルまである。

持ってきた荷物を片付ける。

鉢植えや裁縫道具、花器や茶器。

自分で作った作品たち。

色々並べてかわいい部屋の出来上がり。

大・満・足!


洋服ダンスに持ってきたドレスやナイトウェアを入れる。

紺色の侍女服が数枚掛けられていた。

ふわりとした紺色の膝下ワンピース仕立て。

エプロンには白いレースが少々。襟元のリボンは白。留め具は金。

ヘッドドレスがレース仕様なのが私的高ポイント。気に入った。


「明日からこれを着るのね。きっと似合うわ」


でも何か物足りない。

制服の改造ってありかしら。

聞いてみよっと。


時間もまだ早いし、お庭へ行ってみたい。

でもその前に挨拶から。

近所付き合いは大事です。


勇んで隣室を訊ねたけど、留守。

侍女だろうし、お仕事かな。

案内された部屋は、リィリィシュカと同じ貴族の令嬢ばかり。

行儀見習いの一環として王宮の侍女をしている子たちが大勢いるらしい。

小学校や中学校といった教育機関もないこの世界、市井に交ることも禁じられていたリィリィシュカには友達がいない。

ここでなら友達が出来そうだと、少々浮かれ気味。

問題は精神年齢が大幅に違うことくらいである。




**





侍女の朝は早い。

自分たちの主より早く起きて身支度をしなくてはならないからだ。

とはいえ前世で早朝から弁当作りに勤しんでいたため、早起きは苦にならない。


「おはようございます」


侍女専用の食堂で昨日部屋まで案内してくれた侍女に声を掛ける。


「おはようございます、シュカ。良く眠れましたか?」


「はい、おかげさまで」


第十三王子の侍女頭であるメリーさん。

リィリィシュカより8つくらい年上の美人さん。

侍女は呼びやすいように愛称を使うそうなので、ここではシュカと呼んでもらうことにした。


「今日からティーナ様付きの侍女の仲間となります、シュカです。色々教えてあげるようにね」


「シュカと申します、ご指導の程、宜しくお願い致します」


侍女仲間はメリーさんの他は2人。

サリーとモリー。

覚えやすいのか覚えにくいのか微妙なところだわ。

シュリーじゃなくてゴメンナサイって感じ?

愛称リーリーにすべきだった?


「私もまだ侍女になって一月なの。よろしくね」


ストレートの髪を綺麗にまとめあげているモリー。

垂目なところが優しそう。


「私もまだ二月かな。よろしくね!」


くせ毛で活発そうなサリー。

2人がフレンドリーな感じで良かった。

友達になれそうだわ。





***






「新しくティーナ様のお世話をさせていただきます、シュカと申します」


「ふぅん」


噂の男のはドレス姿。想定内。

上から下まで視線を巡らされ、値踏みされるリィリィシュカ。

良い出来でしょ。

素材は極上、手入れも極上!

私の最高傑作よ!


「まぁまぁかな」


なんですって!?

私の最高傑作を馬鹿にしたわねこの小娘!!いや男の!!

そういうアナタもまぁまぁよ!

ドレス好きならもっと極めなさいよねそもそもアナタその色似合わないっていうか太って見えるっていうかその色はやめた方が無難ねというかそのドレスのリボンの位置おかしいわよあと一センチ上にしなさいよハイウエストなのかウエストなのかハッキリしなさいよねっていうかそのドレスの色にその髪飾りってどうなの靴の色もどうにかしてそのドレスにその靴っておかしいでしょどう考えてもっていうかこの世界のひとって化粧下手よねっていうか化粧品が発達してないのよね、



内心なんてどうでもいいのよ、とりあえずにっこり微笑んでおけば良いのよ。

だってリィリィシュカの顔で微笑まれたらたとえ同性でもどきっとするわ。



「うっ・・・シュカ、とりあえずお茶!」


「畏まりました」


一礼して、給湯室へ向かう。

基本的に侍女は2人1組で行動する。

私は新人なのでメリーさんとペア。

給湯室でメリーさんにお茶の淹れ方を習う。

うん、現代と変わりない。

違うのは葉っぱの種類と蒸らし時間くらいかな。


「ティーナ様は言葉遣いはよろしくないですが、お優しい方です。大目に見てあげてください」


「はい、大丈夫です」


そもそもあんな小さい子に本気で食って掛かれるわけがない。

精神年齢的には孫くらい差があるっていうのに。


お茶とチョコレートをワゴンに乗せてティーナ様の部屋に運ぶ。


「まぁまぁかな」


メリーさんに視線をやるとにっこりと微笑まれた。

もしかしてまぁまぁって褒め言葉かしら?


「ありがとうございます」


微笑む。


「ほ、褒めてない!」


素直じゃない子供だこと。

でもまぁ娘たちに比べれば全然かわいいものだわ。


こうして一日目は主の性格とお茶の淹れ方を学習しました。



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