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2 7歳

リィリィシュカは7歳になりました。


「婚約者候補?」


「はい。お嬢様ももう7歳ですから、そろそろ候補の方に会われた方がよろしいのではないかと」


婚約者候補とか、もう7歳とか、何だか以前では考えられないことなんだけど。

この世界の貴族ってものはえらく早熟なのねぇ。


「私の婚約者候補の方は、どのような方なの?」


「うふふ、お嬢様のために、このルル!完璧な調査書を用意致しました!!」


「・・・ありがとう」


何だかルル、とっても楽しそう。


「お嬢様は評判の御令嬢ですもの、引く手数多ですわ!」


評判というのは母親譲りの容姿もだけど、水蒸気蒸留を利用した精油の精製で貴族たちの間で少々有名になったこと。

精油はマッサージや入浴剤、香水の代わりとして使っている。


お父様はお姉様と私を伯爵以上のお屋敷に嫁がせたいようだ。

お兄様は騎士学校を卒業し、今は宮仕え。お姉様は今春から魔法学校へ通う。

3つ下の弟もいずれは騎士学校に通うため、まだ4歳だというのに剣術を習っている。

まさしく親の敷いたレールの上というやつだ。

私はそれに不満はない。

親の決めたことには従うつもり。

政略結婚だろうが何だろうが、よっぽど生理的に受け付けない限りは大丈夫。

精神的には40代。結婚する時は50代に近いのだ、今更恋も何もないだろう。

元々ダンナに恋をしていたわけでもなく、私は恋愛に置いて非常に淡泊なのだ。

恋なんてしなくても生きていける。恋心がなくても愛情さえあれば良いのだ。



ルルから分厚い調査書を受け取り、一枚目に目を通す。

3つ上の伯爵子息。お姉様と同じ年ね。

名前、年齢、肩書き、家族構成、将来の方向性、身長、周りの評判など事細やかに書かれてある。

ぺらりと捲り、2枚目。

今度は5つ上の侯爵子息。


「ルル・・・もしかして、これ一枚ずつ違う人なの?」


「ええ、もちろん」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・またにするわ」


多すぎる。

会うことになったら見ることにしよう。

私が結婚相手に求める条件は、美容関係にお金を使わせてくれて味覚が合う、である。

調査書を見てもそれは書かれてないし。


おそらく16で正式に婚約し、結婚となるだろうから、まだまだ時間はある。

良いひとから売れて行くとお母様が言うので、もっと早いかもしれないけど、それでも10にもならない今はありえない。

面倒だし、一番お金持ちのひと、とか駄目かしら?









婚約者候補の一人に会うことになった。

3つ上の伯爵子息。

伯爵と連れ立って我が家を訪れるらしい。

お父様はこの伯爵さまと懇意にされているらしく、よくお屋敷をお訪ねしていると聞いた。


「はじめまして。リィリィシュカ・リシェル・ブランシール・ルーフェンと申します」


ドレスの裾を摘まみ、優雅に礼をする。

今日のドレスは薄紅色。大輪の花をモチーフにしたデザインでお気に入り。


「なんとかわいらしいお嬢さんだ。こっちが息子のルーファス、それから従者見習のハイルだよ」


ルーファス少年は頬を赤く染めて私を見てる。

罪作りだなぁ、リィリィシュカ(私)。

とりあえずにっこりと微笑んでおく。

ますます真っ赤になるルーファス。


「おやおや、息子はお嬢さんを気に入ったようだね。子供たち、庭で遊んでおいで。私は子爵とお話があるからね」




**




「ではルーファス様は、お姉様と御学友になるのですね」


ルーファス少年は、今春よりお姉様と同じ魔法学校へ通うらしい。


「将来は魔法騎士ですか?」


将来爵位を継ぐだろうが、それまでに何をするか。

魔法学校へ行く貴族は、魔法騎士か研究者かというのが大半で、伯爵さまは武官よりなひとなので、きっと魔法騎士だろうと踏んで。


「はい。魔法騎士になりたいと思ってます」


「ルーファス様はすでに剣術も魔法もかなりの腕前です。必ず魔法騎士団に入団出来ます!」


従者のハイルくんは大分ルーファス少年に傾倒しているようだ。

お目目キラキラ。


「そうなのですか、すごいですね!ハイルさまも魔法学校に?」


「えぇ、僕はルーファス様の従者ですから」


誇らしげに微笑むハイルくん。

従者の鏡って感じ。

ルルにも似たような空気を感じるけど。


「リィリィも魔法学校へ通うのですか?」


ルーファス少年の方が身分が高いし年も上なので、愛称で敬称なし。

気にはならないけど、リィリィって愛称はあまり好きではない。


「魔法に興味はありますが、攻撃魔法はちょっと・・・」


学校へ通うとなると、攻撃魔法は必須。

元々競争とか、好きじゃないのよね。面倒だし。

お風呂を入れるための水や熱、光源のための熱や光、植物の成長促進の緑、洗濯のための水と風。

その辺りの魔法は一通り、家庭教師に習って習得済み。

才能があると褒められてるから、もしかしたら強制で入学させられちゃうかなぁ。


「出来れば行儀作法の一環として侍女見習いに出るとかの方が・・・」


「!ぜひ、うちに来て下さい!」


「え?えっと・・・まだ3年はあるし、どうなるか分かりませんが・・・お父様とお母様に伝えておきますね」


ルーファス少年の剣幕に怯んでしまった。

そんなに好きか、リィリィシュカ(私)。

まだ会ったばかりだというのに。

随分面食いだなぁ(自分で言う辺りもうナルシストを超えた)。




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