1 3歳
リィリィシュカは、3歳になりました。
3歳と言っても、生まれてから新の月を越した数が年齢になるので、実際のところは2歳みたいなものなんだけど。
朝、メイドのルルに優しく起こされる。
ルルは20代後半の、美人なおねーさんで、優しいから、好き。
リィリィシュカ付きのメイドさん。
黒地のワンピースに白いレース。ミニスカートじゃないから絶対領域がなくて残念です、ハイ。
身支度を済ませ、朝食は乳母と摂る。
まだ柔らかい食事ばかり。
お姉様たちはバケットにサラダ、スープとフルーツの朝食のようで、羨ましい。
そのうちにお姉様の家庭教師がやって来る。
私には礼儀作法や言葉を教えてくれる。
お姉様はその横で歴史や地理、算術を習っている様子。
私はいつもそれを横目で見て覚えるのだ。
昼食を摂って昼寝をして、午後のお勉強。
お姉様は魔法のお勉強で、私は絵本を読んだりお散歩したりする。
お屋敷の外には出れないので、専らお庭で過ごす。
いつもルルが付き添ってくれる。
そして夕食を摂り湯浴みをして就寝。
湯浴みはお湯で体を拭くだけ。
週に1度だけお湯に浸かれるけど、少ない!少なすぎる!
私は毎日湯船に浸かる派なのに。
真夏でも浸かる派なのに!
それに入浴剤も入れたい。
どうやらこの世界にはないようだけど。残念すぎる。
*
「さてお嬢様、今日はどのドレスに致しましょう」
ルルがクローゼットを広げ、聞いてくる。
元々ルルが選んでくれていたけど、ある日私がこれがいい、といったことでこうして聞いてくるようになったのだ。
「きょうは、れーすをあしらったぴんくのどれすがいいわ。りぼんもぴんくで、かみのけといっしょにあみこんでほしいの」
「髪の毛と一緒に、ですか?」
「うん。るる、おねがい」
私の髪の毛もルルがセットしてくれる。
鏡を見るとかわいらしいリィリィシュカ。
無駄に前世の記憶があるせいでナルシストに育ってしまっている。
しょうがない、だってかわいいんだもん。
こんな娘欲しかった!
だってあの子、私に似ちゃって可愛げなかったんだもん。
今日もかわいいな、と鏡に見入る。
困ったナルシストっぷり。
私はこうやってこちらで流行していない髪型を強請る。
なのできっと可笑しな髪型とか可笑しな子って思われてるかも。
でも良い!
だってかわいいから!!
ドレスは自動的に届く。
たぶん誰かが手配してるんだろうけど、私は知らない。
私はドレスの気に入らない部分をルルに頼んで手直ししてもらう。
世界が違うからなのかな、イマイチなんだもん。
折角なんだし好きなドレス来たい!
大きくなったら自分で好きなドレス選べるかな。
楽しみ。
**
日除けに帽子をかぶり、庭に出る。
ルルが付き添ってくれて、お散歩。
私はこの庭が好きだ。
昔はガーデニング好きで、お庭すっごくいじってた。
こっちでは庭師がいるし、一応お嬢様だから出来ないのが残念。
煉瓦の小道があって、その横には小さな白い柵。
その柵には緑のはっぱが巻きついていてかわいらしい。
色取り取りの花が咲き、藤棚のようなものもある。
白いベンチとブランコ、ティーテーブルなんかもあって素敵。
ティーテーブル、私も置きたかったけど、広さが足りなくて断念したっけ。
中でも一番のお気に入りは、噴水。
この噴水、下の方がキラキラしてる。
どうなってるのかわからないけどとても綺麗。
お散歩のときはいつもこれを眺めてる。
「お嬢様は、噴水がお好きですね」
「うん。きれいだもの、だいすきよ」
女は光モノが好きな生き物だ。
過去、現在、未来のダイヤのネックレス、ダンナに強請って買ってもらったし。
ああ、気に入ってたのにな。
「ねぇるる、このおはな、かんそうしたらゆあみにつかえるかしら?」
噴水脇に生えていたラベンダー。
群生が少し離れたところにあるから飛んで来たのかな。
「乾燥、ですか・・・聞いたことありませんけど、庭師に聞いておきますね」
「おねがい」
ラベンダーの香りは癒されるから好きなのだ。
アロマオイルとか抽出出来たら湯浴みに使うんだけどな。
「いいにおいのするおいるって、きいたことある?」
「良い匂い・・・香油ですか?」
「こうゆというよりはせいゆなんだけど」
「精油、ですか・・・?」
イマイチ伝わってない。
あんまり有名じゃないのかも。
水蒸気蒸留で抽出出来るはずだから、そのうち試してみようかな。
まだ器用に手が動かないから成長しないと無理なのよね。
***
夕食を摂り、湯浴みをして、ふわっふわのベッドに入って、おやすみなさい。
いい夢が見れますように。