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プロローグ・死
「おかーさん!今日ごはんいらないからー」
玄関で靴を履いていた娘が大声で叫ぶ。
「何かあるの?」
「新歓コンパ」
「はいはい、じゃあ今日は魚にしよっと」
「そうして」
魚嫌いの娘がいない日は、大抵魚にする。
嫌いなものを出すと食べないのだ、この娘は。
甘やかせすぎたな。
私もダンナも魚好きなのに誰に似たんだか。
ダンナと私と、大学生の娘、高校生の息子。
ごく普通の4人家族。
今日はパートも休みだし、大掃除でもするか。
天気も良いので布団を干して、それから―――――。
突然、心臓が痛みを訴えた。
痛い、苦しい。
そう思った瞬間、私の記憶は途切れた。