番外6
【その7・ギャップで攻めましょう】
「というわけで、お召替えを」
「うん!」
今日の午後はキムが来る。
なので魔法学校入学用に、男の恰好をするのだ。
とはいってもちょっとかわいい感じの仕上がり。
長い髪は少しだけ切って、後ろで束ねた。
貴族や魔法使いの男の人は髪が長くても普通なのだ。
袖がちょっときゅっとなった白いシャツに赤いリボンタイ、チェックのパンツ、ローファー。
ローブは合わせやすいように黒。
「あーイギリスの寄宿生って感じだわ」
「え?」
「何でもないですわ」
シュカはたまに聞いたこともないような言葉を使う。
博識だなぁ。
少しして、キムがやって来た。
「どうかなっ?」
新調したばかりの服をくるりと回って披露した。
「よくお似合いです。男の子みたいですね」
「いや男の子だよ、僕」
いつもドレスだけどね。
「それはそうなんですが・・・」
「えへへ。そっかぁ、似合うかぁ。ね、少しはカッコイイかな?」
「はい。カッコイイです」
うん、それって社交辞令ってやつだよね。
いつか本心から言ってもらいたいな。
*
「タイムオーバーですね」
「そうだよね」
この週末が明ければ魔法学校の入学式。
自由な時間が減るってことは、キムに会う時間が減るということ。
シュカとも過ごす時間が減ってしまう。
王宮で過ごす時間が減ったことで、シュカは変わらず僕の侍女だけど、4人いた侍女は2人に減る。
「まだ10歳なので範囲外でしょうから、これからが勝負ですよ」
「うーん・・・」
「魔法学校で思う存分成長してきてください。親密さは増してますからね、あとは好感を持ってもらわないと」
「成長すれば好きになってもらえる?」
「その可能性に賭けるんです。だからティーナ様、頑張りましょうね?」
「うん!」
4年間で大人になって、キムに告白するんだ!
それまでにキムに好きな人が出来たらどうしよう・・・。
うんうん唸っているとシュカが頭を撫でてくれた。
「大丈夫ですよ」
「うん・・・」
シュカ優しい。
僕が女の子だったら、お母様ももっと優しくしてくれたのかな。
**
結局のところ、僕は男の子で、女の子にはなれない。
今まではドレスを着て髪を整えれば女の子に見えていた。
だけどこれからはそうもいかない。
身長が少し伸びた。
今はまだ少しだけど、そのうちもっと伸びる。
声変わりだってするし、髭だって生える。
いつまでも女の子の振りはできないことぐらいわかってるんだ。
お母様に愛されることがないことくらい、わかってるんだ。
矛盾してるけど、愛されてないわけではないことくらい、わかってる。
ただ、女の子だったら良かったのにって、残念がられているだけで。
元々淡白な人で、ベタベタに甘やかせるような人じゃないっていうことがわかったのは、割と最近。
小さい頃は本当に愛されていない、必要ない子なんだって思っていた。
自分が女の子じゃないから。
男の子はお兄様がいるから必要ないんだって。
でも今は、お母様が元々そういう人なのであって、愛されてないってほどではないことがわかってるから。
女の子の振りをしなくなっても、お母様はあまり変わらないと思う。
だからもう、女の子は卒業。
キムの理想の男になりたいし!
とりあえず。
筋肉はあまりつけないように気をつけよう、うん。
リボンタイは蝶ネクタイではない、念のため
王妃は淡白っていうか子育てに興味がないひと
母性本能がないというか