番外5
【その4・名前を呼びましょう】
昼食はキム様がよく行くという、女性に人気の食堂に行った。
周りは確かに女性が多い。
「そういえば・・・あの、ティーナ様は何故私を”キム様”と呼ぶのでしょう?」
「え!?」
そうだった。
名前を知ってからずっと”キム様”って呼んでたから、さっきもそう呼びかけちゃったんだった。
「私のことはキムと呼んでください。確かに年齢は相当上ですが・・・」
僕は王族なんで、彼女は貴族。
”様”をつけて呼ぶ、なんて普通はない。
っていうか年齢相当上って・・・そんなに上じゃないもん。
10しか変わらないもん。
子供扱いされてるよね、どう考えても。
「・・・キムはそんなに年上じゃないよ」
「え?」
「10しか変わらない」
「10も、ですよ。ティーナ様」
「・・・・・・・・・」
「ティーナ様、キム様、デザート頼みませんか?」
「・・・頼む」
「そうですね」
10の年の差って難しいのかな。
でもシュカとお兄様は15歳違うのに。
*
【その5・好みについて聞きましょう】
以前、婚約者や恋人の類がいないことは聞いた。
今回は、もっと掘り下げて聞きましょう、とシュカに言われたのだ。
好みのタイプとか、そういうこと。
「そうですね・・・細身で、誠実なひと、でしょうか」
細身は今のところクリア。
魔法学校入学しても剣術よりも魔法重視でいこう。
誠実って・・・誠実・・・うーん、お兄様みたいにシュカ一筋だったら良いのかな?
あれ?それって誠実じゃなくて一途っていうんだっけ?
「誠実ってなぁに?」
「えーっと・・・誠実、というか、その・・・どうしましょう、シュカ様」
「え?私?」
何かぼそぼそ話している二人。
僕だけ仲間外れ!ずるい!
「私は結婚するなら、自身だけを愛して欲しいなと思います」
なるほど、大丈夫!
僕が好きなのはキムだけだもん。
「貴族の男性は浮気をする方が多いイメージがありまして・・・偏見かもしれませんが」
そうなのかな?
男の人で貴族の知り合いってあんまりいないからわからない。
「あ、シュカと一緒?」
「そうですね。私とリオン様が仮に結婚することになったら、リオン様の妻は私一人です。他は認めないというのが条件ですし」
「そんなことが出来るのですか?」
「個人同士の約束ですが・・・もし破るのなら離婚するだけです」
「はぁ・・・なるほど」
シュカ強い。
キムもシュカになんていうか・・・尊敬の眼差しっていうか・・・うん。
「後は?どんな人が好き?」
「ティーナ様もお年頃なんですね。そういう話に興味が湧くお年頃というか・・・」
「なんか子供扱いされてる・・・?」
「ふふふ、そんなことありませんよ。大人になってるってことですよ」
絶対嘘だ。
そんな微笑ましそうに成長振りに感心されてもうれしくない!
「言うほど恋愛経験がありませんので・・・そうですね、一緒にいて過ごし易い人が良いかもしれません」
ん・・・?一緒にいて過ごし易い人って・・・どうやって目指せば良いの?
*
【その6・プレゼントをしましょう】
デザートを食べた後は、買い物に戻った。
服とか小物とか見るのって楽しい。
僕とシュカでキムに似合うものを選ぶ。
かっこいい系も似合うけど、きれいなものも似合うと思うんだよね。
キムはどちらかというと困ってたけど、そこは気にしない。
女の子らしいものが苦手らしく、私には似合いませんを連発していた。
最近人気のアクセサリーショップに入った。
色んな色やデザインのネックレスやブレスレット、ピアスなどが並ぶ。
女性はもちろん、男性でも魔道具にしやすいことで人気があるのだ。
あ、綺麗なピアス!
ムーンストーンの、小さな造りのものだ。
これなら邪魔にならないよね?
「ね、ね、これどうかな?」
「良いですね。キム様によく似合います」
「え、あ、あの・・・」
「これにしよう!これなら魔法も込められるでしょう?」
魔法石や宝石・天然石などには、魔法を込めることが出来る。
所謂魔道具というものだ。
攻撃補助だったり防御だったり、何らかの魔法を込めれば戦闘にも役に立つ。
「えへへ、プレゼント!僕のキモチだから!」
「あ・・・ありがとうございます、大事に、します・・・」
僕が王族だから、貰ったものは大事にしないと罪になる。
それがわかってるからこの言葉に深い意味などないことぐらいわかっている。
だけど今はそれでも良い。
きっとキムに心から、こういう言葉を言って貰えるように、これから頑張るんだから!
*