エピローグ 16歳
・・・リィリィシュカは16歳になりました。
えぇ、そうなんです、16歳なんです。
折角リオン様がその気になったのだからと、16歳になった途端、婚約。
そして春を待ち、結婚式を挙げました。
ティーナ様がイスフェリアの魔法学校に通う王族の方(ティーナ様の従弟らしい)に、ウェディングケーキを注文したらしく、元の世界と変わらない感じの結婚式。
結婚するに辺り、色々と条件を付けた。
のまないなら逃亡します、と。
まず、仕事を続けたいということ。
この場合の仕事というのは、侍女ではない。
嵌められてから5年、ハーブ用品の開発、化粧品の開発以外に、衣服や下着のデザインも手掛けている。
とはいっても、自分で商店を経営しているわけではない。
自分で考えたものを売り込んでいるというだけ。
採用されなくても自分が使う分だけ作るけど。
そしてこれが大事。
リオン様の王妃は、私だけ、ということ。
だって当たり前でしょ!?
何で他の女抱いてる男に抱かれなくちゃならないのよ!冗談じゃない!!
・・・コホン。
うん、浮気は良くないと思うのよね。
女性が苦手なんだし、それはないと思うけど、何事も例外ってのがあるし。
「はぁ~・・・」
「シュカ様?どうかされました?」
「モリー!様付けはやめてったら!」
「そうしたいのは山々ですが・・・一応建前っていうか」
「・・・それを言っちゃう時点で駄目だと思うの」
後宮に引っ越すことになり、サリーとモリーが私の侍女になった。
気心しれてるし、ありがたいんだけど、様付けは頂けないわ。
「そうそう。今お客様が来ているらしいですよ」
「お客様?」
「スーフェスフィア様の御学友で・・・ケーキを作ってくださった商会の代表の方です」
「へぇ・・・会ってみたいわ」
「・・・そうですね、来年にでも」
「今すぐ」
「・・・無理ですよ、臨月なんですよ?っていうか予定日過ぎてるんですよ?」
元の世界なら別に歩き回れたのに。
こっちの世界が過保護すぎるのよね。
っていうか妊娠早すぎなのよ。
計算合わないってどういうことよ。
(心当たりはあるけどね!)
「はぁ・・・はやく出てこないかな、ポーンと」
生まれない限り軟禁状態が続く。
「シュカ」
ノックもなく、どかんと扉が開かれたかと思うと、勢いよくリオン様がやって来た。
「リオン様、ノックくらいしてください」
「どうだ、調子は」
「聞けよ」
あぁ、何だかどんどん口が悪くなっていくわ、私。
リィリィシュカの容姿で口が悪いなんて!
「まだ生まれる気配はないですね」
「そうか・・・」
しょんぼりとしてしまったリオン様の頭を撫でる。
「まぁまぁ、初産なので少しくらい遅れるなんてザラですから」
元の世界でも長女は10日ほど遅れて生まれてきた。
予定日は予定であって決定ではないのだ。あまり気にすることではない。
しかし30過ぎた男が16歳にもっと撫でてと上目遣いで見てくるのってどうなんだろう。
正直かわいいと思ってしまう私、末期。
・・・恋ではないかもしれないけど。
まぁ、良いよね。
愛しいと思う心はあるのだし。
リオン様の頭を撫でながら、無理やり納得させる。
恋愛面が前世と似たり寄ったりな気がしないでもないけど、まぁそれもありなのかな。