4話 レインの過去
学園都市近郊 崖下 レイン視点
逃走の途中でペルさんに振り落とされた僕は足場を魔法で破壊され、浮遊感と共に崖下へ転落していた。
「うッ!」
地面にペルさんが運んでいた杖と激突し、脇腹に激痛が走る。滑落する途中で擦ったのだろう、腕からは血がしたたり落ち視界も歪む。上を見るともともといた場所が見えない。そんな高さから落ちたのに命があった、その事実をまずは喜ぼう。しかし、安心したのも束の間のこと地鳴りのような音が僕に近付いてくる。
「キエェェッェェエエッ」
岩の陰から三メートルはあろうデカ芋虫がはい出てきた。奴は白色の体全身を紫色のオーラ、魔力で覆われており、それは強力な魔物であることの証左であった。奴から見れば今の僕なんて血で味付けされたおやつだろう。やっぱり僕は不運なのだろう。・・・思えば生まれた時から僕は不幸だった。
僕の祖父、お爺ちゃんがクレント族の女・・・僕の祖母を奴隷として攫ってきて手をだして生まれた子供、それが僕の父だった。祖父は最果ての村を治める騎士だったのでクレント族の子供を設けたなんてバレたらその立場も危うくなる。だから僕たちは毎日日の当たらない地下で人間のみんなが食べるものを作っているだけの生活だった。
貧しくても、太陽の光がなくても、家族と共に暮らせていた。そんな日々が壊れたのは魔王討伐にペルさんの主、聖女様たちが失敗した日だった。祖父は普通の人間だけを避難させようとしており、父は体の悪い祖母と幼い僕だけでも助けてくれるよう懇願したが聞き届けて貰えず口封じに殺され、祖母や母、僕の他の兄弟は魔物の目を少しでもそらすために町の外に枷を付けて放された。
一番幼かった僕だけは唯一母に隠され、小麦の袋に隠れて皆が攫われていくことをただ見つめていた。
怖くて何もできなかったのだ。それを、不運だと思っていたことに気付き笑みが零れる。
芋虫が近づいてくる。きっとみんなを見捨てた報いなのだろう。初めのうちは痛んでいた腹部もだんだん感覚がなくなった。僕は目を瞑って岩場にもたれる。
「ここまで・・・かな?」
思えばよく生き延びれたものである。ぺルさんが町に現れた時には僕は食事も水も取れずにボロボロになっていた時だった。あのままでは遠からず餓死していただろう。目の前にしゃがんでまるで乗れと言わんばかりの馬に初めて家族以外の優しさを感じた。
そこからの旅は楽しかった。ぺルさんは魔法が使えるから動物や魔物を狩って僕に食事を与えてくれた。僕が皆への罪悪感で泣いている時は静かにそばにいてくれた。
せっかく話せるようになったからもっと話したかった。
家族を見捨てたこと伝えて叱ってほしかった。
そしてもし、そんな僕を受け入れてくれるならもっと一緒にいたかった。
いつの間にか馬を親のように思っていたのだろう。死にたくないという思いで目の前に落ちていた杖を手に握る。クレント族はその見た目だけでなく魔力の高さと歴史も相まって魔族と差別された民族だ。ペルさんがやっていた魔力をただ前に放出する魔法、僕にも出来るかもしれない。体の中のすべての魔力を集めて杖に集中させる。
・・・きっとこれは僕なんかが使っていいものじゃないのだろう。でも、今だけは僕を助けてほしい。
「はぁぁぁぁぁ!!!!!衝撃魔法」
「キェッ」
あたりいったいが吹き飛び芋虫どころか岩場まで消し飛んだが・・・もはや意識を保てない。僕は消えゆく意識の中で人生で初めて満足感を感じていた。
私が追手を撒いている時後ろで大きな爆発がし、大型の魔獣や魔王軍の残党が現れたのかと追手は逃げていった。そもそも彼等の目的はレインを殺すことだったのだろう、私への攻撃はさほど激しいものではなかったのだ。
爆発があった位置は私がレインを落としてしまった場所の近くのように思えた。大急ぎでレインのもとに戻ると爆心地から少し離れた場所で倒れているレインを見つけた
『レイン!』
腕から血が滴り落ちているが、大丈夫だ息はある。そしてレインが魔法使いの杖を握っていることからこの爆発はレインが起こしたものなのだろう・・・
だが魔法使いの杖は選ばれた血族でなければ使うことのできないものであったはず・・・一体どうゆうことなのだ
だが今はレインの無事をとりあえず喜ぶべきだろう。レインを背中に乗せて町からさらに離れた森の中へと歩みを進める。周辺に危険がないことを確認しレインを横にし回復させる。彼が目を覚ましたら今後の事を話し合わないとならないだろう。
心配が解けたのかぐっと疲れを感じ魔王城を出て初めて、眠れないながら横になるのだった。




