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3話 バルトスへ 後編

 

バルトス周辺


私が意識を取り戻した時には翌日になっていたようだった。目が覚めるとレインが使っていた小さな毛布が私にかけられていた。私はどうやらレインに介抱されていたようで、私が保護者のつもりだったのだが・・・恥ずかしさと共に嬉しさを感じる。


しかしそんなことも言ってられず、バルトスの住民、それもお偉いさんを襲撃しようとしたのだ。これではバルトスに入れないだろうし物資の補充もままならない。どうしたものかと頭を悩ませているとレインが落ち葉を集めて戻ってくる。彼は私が起き上がったことを知ると安心した表情を見せた。

『心配をかけたな』レインに心の中で感謝を告げる。


「どこかから声が・・・何か言ったかい?馬さん?」


この馬さん呼びにもなれたものであるが、やはりペルプフェと呼ばれたいものである


「え?・・・馬さん?馬さんの声なの?・・・ペルプフェさん?」


私の意志は彼に伝わっているようであった。驚きもあるが魔法を撃とうとして意識を失った際に見ていた夢?でシルヴィアの言っていた呪い、「人の感情を理解」には言葉がもっとも手っ取り早いものだろう。そう考えればかの状況も察しがつく、きっと|聖女の素敵な呪い(おくりもの)だろう。


「馬さ・・ペルプフェさんが貴方なんだよね?」


私は肯定の意思を思い浮かべるとその意思が伝わったのだろうレインと目が合い互いに笑ってしまう。


『そうだ。私の名前はペルプフェ。ペルと呼んでくれ』


「あらためまして・・・レインです!」


今更ながらの自己紹介に二人とも気恥ずかしくなってしまったのか自然と笑みがこぼれる。しかし、問題は山積みなのだ。


バルトスへ入ろうにも騒ぎを起こした直後であるうえにこちらにはクレント族だ。本来であればバルトスを避けるべきであるが水が残り3日分もなく、この町を超えると次に出会う町は少なくても1週間近く離れているのだ。


しかたなく、バルトスに夜侵入し、水を購入して即座に町から逃亡する計画を立て、夜になるまで町の周囲の森で野営を行うことする、最初はどこからともなく吹く風に乗せて届く声に戸惑っていたレインも随分と慣れてきたようだ。

片方ずつ休息をとって夜まで警戒をするが、私は魔王城を後にして以来眠れない体質になっていたのだ。というかほとんど疲れることもない。先刻意識を失っていたのは奇跡のようなものだろう。レインに交代する時間が来たが、彼の規則正しい寝息を聞いて起こさずに見守ることにする。


そんな和やかな時間を引き裂くような野太い叫びが私の耳を震わせる。日も落ち始めた森の中では彼達の接近に気づくことが出来なかった。昼に私が魔法を使えることがバレて居るのか彼らの中にも魔法を使える人間がいることが気配で分かる。


「いたぞ!あの馬と魔族のガキ(クレント族)だ」


「クレイの奴の恨みだ!ぶっ殺してやれ!」


昼間追っ払った奴らが仲間を連れて復習にやってきたのだろう。やはり私の蹴りを食らった人間は生きれなかったようだ。合計で30人はいるだろう野盗達は昼間のように無秩序に攻撃してくるのではく距離をとりながらも魔法を警戒していた。避難前の村では衛兵でもやっていたのだろうか統率力が高く、レインを守りながら戦闘して勝つことは難しいだろう。


『レイン乗れ!この場を離れるよ』


戦闘が難しい以上取るべき選択肢は逃走の一択であり、私はわき目もふらずに森の中を駆け抜ける。後ろからは魔法に弓矢が飛んでくるが馬の視覚の広さをもってなんとか回避していく。順調に見えた矢先、人を乗せて全力で駆ける経験は久しくなく、それに乗っていたのは聖女(シルヴィア)の経験しかなかった私は・・・やせ細った子供の力を見誤った。矢を認識した私は本能で急旋回すると背中から重みが消える。


「あっ」


矢を避けようと急旋回したとたん背中にしがみ付いていたレインと彼がとっさに掴んだのであろう魔法使い(レミー)の杖が振り落とされてしまった。野盗からしてみれば仲間を殺した魔族だ、容赦なくレインを狙った攻撃が始まる。


「ガキが落ちたぞ!狙え!」


大岩を落とす魔法(ロック・バレット)


やはり魔法が使えるものがいたのだろう、そして敵が放った魔法がレインの足元の地面を削る。レインが落ちたのは崖の傍で魔法の衝撃に耐えきれなかった地面が滑落する。夕闇も相まって底の見えなくなっている暗闇にレインが落ちていく。


『レイン!!』


「ペルさぁぁぁぁぁぁぁん!!」


助けに行こうにも野盗はしっかりと道を守っているし何より、馬とはいえこのようさ先の見えない暗闇の崖を飛び降りることは困難を極めるのだ。この崖は高さ100m近くあり、10歳前後の少年が生きているとは思えない。私は()()()の旅に、シルヴィアの夢に何一つ寄与出来ていない。

無力感を感じながらもレインが生きていることを祈って崖が低くなる地点まで全速力で駆け抜けるのだった。

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