表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/7

0話プロローグ 平穏が終わった日

読んでいただきありがとうございます!葵蒼碧と申します。できれば毎日・・・おそくても一週間に一回は更新できればなって思ってます。

とりあえず第一部完結まで頑張ってまいりますので応援、ブックマーク是非!お願い致します!


人間と魔王が争う世界、人間が劣勢になれば勇者が現れて魔王を葬りハッピーエンド。勇者とその仲間たちは幸せに暮らしましたとさ。


誰もが一度は聞いたことのある幾度と繰り返されたテンプレート通りの物語。この世界も例外なくシナリオ通りに進んでいた。それぞれがその分野の最強で構成された勇者一行の旅は順調に進み、魔王の配下は魔王城に残すやつを除いてほぼ壊滅。その旅路の終わりは確実に近づいていた。


「もう魔王なんて脅威じゃない。」町の人々はそう言っては酒を呷り、町は魔王との闘い前の活気を取り戻していた。町の人だけでなく王も貴族も商人も勇者たちが魔王を倒し凱旋してくるのを今か今かと待っていた。誰も勇者が負けるなんて想像もしていなかった。


魔王城近辺 最果ての町


「ここから先は馬では厳しい山上りをしなくちゃならないの・・・ここで待っていてくれる?ペルプフェ」


「ブルルゥ」


私は勇者パーティーの聖女であるシルヴィアの馬である。名前は大陸の言葉で馬と賢さを合わせてペルプフェ、聖女(シルヴィア)と勇者が二人で王国を旅立ったその日から一行に付き従っている最古参の勇者パーティーメンバーだ。そんな私を置いて最終決戦だなんてと思う気持ちもあるが、勇者たちならばきっと大丈夫だろう。私は少しづつ小さくなっていく四人の影を不安を抱えながら見送ったのだった。




魔王城 勇者


「魔王!ついに追い詰めたぞ!シルヴィア、聖魔法でやつを弱体化させろ!そのまま消し飛ばす」


ここまでたどり着くまでに魔法使いと戦士は倒れてしまったうえに、俺自身も重症を負っているがまだ戦える。シルヴィアが聖魔法を撃とうとした時すでに魔王がまとっていたオーラが消えその姿が露わになっていく。やつももはや余力はないのだろう。


しかし、突如として放とうとしていたシルヴィアの聖魔法が霧散する。チャンスとばかりに魔王が全魔力を使ったのであろう特大魔法を放ってくるが、俺もとどめの魔法を構えていたため避けきれない。




魔王の一撃を全身に浴びる、とっさに魔法で防御壁を張って幸いして致命になりえる部分への攻撃は避けたものの足までは守り切れず鋭い痛みが走る。我に返ったシルヴィアが青い顔をして駆け寄ってくる。


「どうして・・・魔法を撃たなかった・・?」


彼女はただ黙って泣きながら治療をしてくれたが、俺の体の事だ、俺が一番よくわかる、傷口からは魔王城の毒も入ってくる。いくら耐性があるといっても限度がある。助からないだろう・・・魔王はボロボロになった壁からなんとか逃走を計っているようだが・・・ほとんど魔力を感じない。あの様子なら、もはや脅威にもならないだろう。逃げていく魔王の顔が少しだけ見える。


「あぁ・・・そうゆう・・」


きっと彼女はこのまま俺の後を追ってしまうのだろう、責任感のつよい娘だ、だが生きてほしい。そう思っても言葉が出ない。俺の意識は暗闇に落ちていくのだった。







一日がたった。


労うための料理が片付けられていく。一日じゃ決着はつかなかったようだ、さすがに魔王今までの敵とは違うらしい。



三日が過ぎた。



一週間が経過した。



町の人たちも勇者たちになにかあったのではないかという空気になっていた。魔王城の周辺は高濃度の毒で覆われていて普通の人達では近付くことも出来ないため、近隣の王国からの捜索隊も到着したが近づくことが出来ずに帰っていった。さらにそれから三週間が経ち


勇者たちは死亡したと発表された。


私は賢い馬だ。毎日シルヴィアが語り掛けてくれたおかげで少しは人の言葉も分かる。勇者たちが死亡したという話を聞いていてもたっても居られなかった。

魔王城から一番近くのこの町は勇者が死んでしまった以上真っ先に報復を受ける可能性があるらしく、町の人々は我先にと逃げ出していってしまった。勇者たちが死んだはずがない。ここで待っていてと言われた以上今まで通り待っているのが正解だろう。私と他の馬もここで待ちたい気持ちでいっぱいだった。

しかし、人が居なくなり餌ももらえなくなったからにはこのままここにいても餓死である。どうせ死ぬならご主人さま(シルヴィア)と。その一心で私と他の勇者一行の馬三頭は魔王城へと歩き出した。


切り立った崖を超え何度も植物に足を取られながらも進んだ。崖の険しさといえば凄まじいもので途中で戦士の馬は滑落してしまうほどであった。助けに行きたいが、助けにいけば私たちも巻き沿いだろう。悔しい気持ちを押し殺して先に進む。


そうして見えてきた魔王城はかなりボロボロになっていた。きっと魔法使いがやったのだろう、魔王城の周りの毒素は(わたし)にも有毒であり、残された時間は多くない。体から聞こえてくる悲鳴を無視して魔王城の中さらに奥へと足を運んだ。


時々魔物に遭遇し、戦闘するたびに体からは鮮血が舞い、魔法使いの馬は途中でその凶刃に倒れた。それでもここで止まったらもう二度と彼女には会えないだろう。尚も進み、魔王城の最奥魔王の部屋の一つ前の部屋に差し掛かったところで見覚えのあるものがあった。


魔法使いだった。


ここで大きな戦闘があったのだろう。荒れ散らかった室内の中で瓦礫の上にマントを被り横たわっていた。一番体格が小さく、毒耐性の無い彼女には毒が早くに体に回ったようでここで終わりにしてもらったのだろう、顔には苦しみの表情は浮かんでいなかった。

勇者の馬と協力して魔法使いの馬の亡骸を運び横で寝かせてやれた。


魔王城の最後の部屋その扉の前で無数の魔物の死体の上に彼は立っていた。


戦士だった。


魔王との決戦に横やりが入らないように扉を守っていたのだろう。傷だらけになって最後の時を迎えてもなお立ち続け自慢の大斧を離してはいなかった。勇者の馬はここで毒が回り切ったらしい、彼はもはや動けなくなっており戦士の傍に這いつくばったが、かくいう私も前足の感覚はほとんど残っていなかった。それでも彼女に会いたい一心で重い足を上げなおも進む。


彼達の遺体の横を通り抜け部屋に入ると吹き曝しになった魔王城の一室で二人は座っていた。いや足を失い動けずにいた。


圧倒的な勇者を前に魔王が取った最後の手は逃走であった。シルヴィアは必死に勇者の治療をしたが無駄であったのだろう血を流しすぎたせいで勇者はすでに息絶えていた。


私が近づくとシルヴィアはゆっくりとこちらを振り返ったように見えた。その喉にはいつも私にリンゴを剥いてくれた短刀が刺さっていた。自分が足を引っ張ってしまった。その思いに耐え切れなかったのだろう。最後は自害してしまったのだった。途端私の小さな脳みそに記憶された思い出が走馬灯のように走り抜けた。ともに旅をして辛かった思い出も楽しかった思い出もすべてを鮮明に思い出した。


主人(シルヴィア)のところへ行こう。私も毒が回り始めていて助からない。私はシルヴィアの亡骸の横に静かに横たわった。毎日撫でてもらっていた体に彼女と勇者の遺体を乗せ大きく息を吐く、そして目をつぶり最後に思い出したのはいつかの日、彼女たちと焚火を囲って夢を話した夜だった。




皆が酒を煽り飲めや歌えやの大騒ぎであった。確かこの日は初めて魔王の幹部の一人を撃破した日であった。


「俺はなぁ帰ったら、幼馴染に告白して田舎で仲良く暮らすぜ」


そう言って大樽ごと酒を呷る戦士の顔はいつになく嬉しそうであった。


「私は、生まれの国マグナの魔法学校で教師をしたいわ・・・生まれや身分に関係ない最強の魔法使いを育ててあげるの」


「俺は・・・みんなが幸せに生きてくれればそれでいいよ。・・・聖女(シルヴィア)は?」


「私?私は・・・人助けの旅でもしたいですね。この子ならどこまでも連れて行ってくれますよ」


そういってシルヴィアは私を撫でてくれた。魔法使いに勇者、聖女が続く。皆が本当に楽しそうにしていた。





私はまだ歩ける。息がある。シルヴィアの夢を代わりに叶えてあげられる。なによりこんな毒素に塗れた暗がりで彼女たちの遺体をそのままにしておけなかった。


とじた目を開き、勇者と聖女の遺体を背中に乗せる。魔王部屋の前で勇者の馬と目が合う私が何をしたいか通じたのであろう。血が口からしたたりおちるのも厭わず戦士の遺体を次いで魔法使いの遺体を乗せて魔王城を後にする。


魔王城からしばらくした森の中でついに勇者の馬が力尽きた。もともと動けなかったのにここまで運んだのだ。私はその場に5人の遺体を埋葬し、勇者の剣、戦士の手斧、魔法使いの杖、聖女の杖を形見として背に乗せる。長年使い古した武器には魂が宿ると言われており、遺体を運ぶのは無理でも代わりに故郷に持って帰って家族に会わせてあげようと思ったのだ。


私はいつの間にか軽くなった体で、魔王城近くの町へと歩みを進めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ