表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

特別な人 先輩

作者: リィズ・ブランディシュカ



 学校の帰り道、私は先輩と一緒に歩く。

 校門を出てから分かれ道までの10分。

 この短い時間に、精一杯できることをしないと


「せんぱいっ! 今日はうちでお茶しませんか?」


 元気よく、笑顔も忘れずに、だけどしっかりと声をかける。


 そうやって私がアピールすると、隣を歩いている先輩は顔を赤くして、「いや、それはちょっと」と困った顔をする。


 いつもこうだな、ってちょっとがっかり。


 アピールしてもなかなか手ごたえがない。


 すぐ赤くなっちゃって、しどろもどろ。


 そういうところ、すっごく可愛いけど、今はもうちょっと大胆になってほしい。


「遠慮なんてしないでいいですからっ。ジュースでもお菓子でもなんでも出しますよ! 先輩今月お小遣いないって言ってたじゃないですか!?」


 先輩は困ったように頬を掻きながら「それはそうだけど」と視線を左右に泳がせる。


 先輩は人間としてとてもよくできた人で、親切で面倒見がいい。


 他の後輩たちに奢ったりして、いつも財布がすっからかんなのだ。


 だからその事情につけこんで、私はぐいぐいアピールする。


「ジュース一つも碌に買えないんじゃ、次のお小遣い日まで大変ですよ?」

「うーん。でも女の子の家にいきなり転がり込むのはよくないよ」


 けれども先輩は堅物で真面目だ。


 乙女心というものをある程度分かってくれてはいるけど、性格が邪魔している。


 私がとびきり可愛く微笑めば、狼狽えてくれたり、顔を赤くしてくれたりするけど、それだけ。


 なんてやってるうちに、もう分かれ道がきちゃった。


 私は右に、先輩は左に。


 反対方向に家があるから、ここでお別れ。


 あーあ、今回も駄目だったか。





 数か月前。


 学校のイベントで、体育祭実行委員という特別メンバーに選ばれた。


 私は2年生の代表のうちの一人で、他にもたくさん人がいた。


 でも、このメンバーなかなかうまくいかない人たちばかり。


 さぼるし、面倒ごとはやりたがらないし、やっても文句ばっか。


 私はある程度真面目にやってたけど、「どうして私だけ」って、すぐに馬鹿らしくなっちゃった。


 そんな時に、手を貸してくれた男子生徒が三人いたの。


 一人目は同級生。


 トラブルには私と同じ目線で悩んでいるけど、どんな難題にも付き合ってくれるし、積極的に色々アイデアを出してくれる良い人だ。


 二人目は後輩。


 手間がかかるけど、あの子がいるとその場が明るくなるし、格好悪い所見せられないなって気合が入る。


 三人目が私が狙っている先輩。


 私の心を掴んだ人。


 困った時に気づいてくれて、さっそうと助けてくれる頼もしい先輩。


 一年年上なだけなのに、色々な目線でアドバイスをくれる。


 色々なトラブルにつかれていたその時の私には、先輩の頼もしさがぐっときたみたい。


 それ以降先輩は私の特別な人になった。


 それまでは、もっと一緒にいて楽しくて明るくなれるような人がタイプだったのにな。


 分からないもんだよね。恋に落ちる相手ってのは。





 学年が違うと、同級生より会う事は少なくなるし、例のイベントが終わった後も縁を繋ぐのには苦労した。


 先輩が帰る時間を特定してからは楽になったけど。


 大人になれば年の違いなんてさほど関係なくなるのかもしれないけれど、一年の時間の違いは、子供である私達にとってはかなり大変な事。


 でも、だからってあきらめたりはできない。


 先輩以外の人を特別に思うなんて無理。


 私の心をときめかせる相手は、もう彼だけなんだから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ