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処刑台から始まる、狂人令嬢の記録  作者: 脇汗ベリッシマ
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狂人令嬢は、ここから本気

ガルドは目の前の巨躯を見上げ、

思わず肺の奥から重い息を吐いた。


(……絶対強いやつじゃん。

 しかもタイプ的に俺が一番苦手なやつ。

 いいか、ガルド――勝つしかねぇぞ)


次の瞬間、男は地面を抉りながら一気に踏み込んできた。


「死ねやァ!!」


唸るような剣撃。

大剣ではない。だが重さが異常だ――まるで鉄の塊。


ガルドは身をひねり、剣で軌道を受け止めた。


ガンッ!!


手首が痺れる。

衝撃だけで骨が折れそうになる。


「……おもっ……!」


「ほぉ?」


男はニヤつきながら、

押し込まれるガルドの剣をまるで玩具のように楽しんでいた。


「俺の一撃を防ぐとはな。

 さては、お前……なにものだ?」


挑発めいた声。


ガルドは歯を食いしばり、鼻で笑った。


「雑魚に名乗る名前なんてねぇよ」


力いっぱい剣を弾き返す。

だが体格差があまりに大きい。

あっという間に距離は詰められた。


(力、負けてる……クソッ)


剣と剣が噛み合うたびに、

ガルドの足が地面にめり込んだ。


男の刃が肩をかすめ、鮮血が飛ぶ。


「ほらほらぁ? どうした?

 “雑魚”が雑魚らしい顔になってきたぞ、クソガキ」


嘲る声が耳に刺さる。


(このまま押され続けたら……終わる。

 こいつを仕留めきれなかったら……イリスが……子どもたちが……)


胸の奥が焼ける。


ガルドは剣を構え直し、

血を拭うヒマもなく前に歩み出た。


「……てめぇは強ぇよ。認めてやる」


「んぁ?」


「でもな――」


ザッと大地を蹴る。

今度は自分から攻めた。


「俺は倒れねぇ!!

 倒れるわけにはいかねぇんだよ!!

 俺はな――諦めが悪ぃんだよッ!!」


渾身の力で剣を振りかぶる。

腹部はガラ空き――誘っていると気づかせないほど自然な動作。


男の目が笑った。


「死ねやぁ!!」


刃がガルドの腹へ一直線に伸びた、その瞬間――


ズドンッ!!!!


凄まじい破裂音。


それより早く、

“別の衝撃”が男の腹を貫いた。


「……が……ッ!?」


男の体が硬直する。

口から血がどろりと流れ、

視線は飛んできた“何か”の方向へと吸い寄せられた。


月光の中。

木々の上に――


金糸の髪を風に遊ばせる少女が立っていた。


イリスだ。


片手には、鋭く尖った金属片。

手錠を加工した即席のスパイクナイフ。


「…やっぱり来てよかったわ…まったく。

 ガルドをいじめるなんて、いい度胸ね」


その声はひどく静かで、

それでいて鳥肌が立つほどに美しかった。


男が崩れ落ちる。

ガルドは荒い息のまま、彼女を見上げた。


イリスの金の瞳が、ふわりと細くなった。


「お疲れさま。

 さ、ここからは――私の番でしょ?」


夜風が震えた。


イリスが、

ゆっくりと木の枝から飛び降りてきた。


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