第七寮、人生初デートにつき騒然
その日の第七寮は、朝から妙にそわそわしていた。
理由は一つ。
――イリスとガレスの、人生初デート。
イリスはいつもの貴族然とした姿とは違い、
淡い色のスカートに白いブラウスという“町娘の装い”で現れた。
その姿に、第七寮の入口にいた騎士たちは
「……誰だ?」「いやイリス様じゃね?」
とザワつき、最終的に通路の奥から聞こえたのは
「似合いすぎでは?」という呻き声だった。
イリスは軽くスカートを揺らして言った。
「さぁ!今日はデート日和だもの。ガレス、楽しみましょうね」
横に立つガレスは、慣れない私服にやけに落ち着かない。
黒のシャツに生成りのコート、普段の鎧姿とは別人のようだった。
その様子を、ガルドが鬼の形相で睨んでいる。
「……おいイリス。変なことされたら、すぐ逃げろよ」
「されないよ〜」
イリスはくすくす笑いながらガルドを指先で押す。
その余裕っぷりが、ガルドの焦りに拍車をかけていた。
「いやマジで! なんかされたら俺にすぐ言えよ!?
あいつ、見た目は紳士だけど中身は――」
「ガルド」
ガレスは静かに視線を向けた。
声は穏やかだが、何故かガルドは一歩下がる。
「……へ、変なことすんなよ。マジで」
まるで妹を送り出す兄のような必死さに、
イリスは笑いをこらえきれず口元を押さえる。
「じゃあ行きましょうか、ガレス」
ふわりとスカートを翻したイリスが歩き出すと、
ガレスもその後に続いた。
その背中を、全力で追いかけようとした者が一名。
「ま、待て! 俺も――」
だが、その襟首をしっかりつかんで止める男がいた。
リオンである。
彼はガルドをひょいっと持ち上げながら、
いつものニコニコ顔で言った。
「はいはい、いってら〜。
お邪魔虫はお留守番な?」
「離せ副隊長!マジで行く!!行かせろって!!」
「ダメ〜〜〜」
リオンは子どもを扱うようにガルドを抱え、
イリスとガレスの姿が角を曲がるまで
ずっと手を振っていた。
「いやぁ……青春っていいねぇ〜」
そう呟く副隊長の背中に、
ガルドの叫びが響き渡る。
「俺の青春返せぇぇぇぇぇ!!」
――第七寮の朝は、今日も賑やかだった。




