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処刑台から始まる、狂人令嬢の記録  作者: 脇汗ベリッシマ
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触れた者の末路

盗賊たちはイリスの背後に迫っていた手を引っ込め、

恐怖で後ずさった。


理由は一つ。


ガレスの殺気が、空気を凍らせたのだ。

地面が軋む。

ただ歩く、それだけで盗賊たちの膝が揺れる。


「……総隊長……!」


リオンでさえ珍しく真剣な顔で構えた。


ガレスはゆっくり剣を抜く。


金属音ひとつ。


それだけで――盗賊の一人が腰を抜かした。


「こ、こんな化け物たちに勝てるわけ――」


「黙れ。」


ガレスの一閃。


まるで風が通り抜けたような音。


だが次の瞬間には、

盗賊の首が地面に落ちた。


残りの盗賊たちが震え上がる。

ガレスの一撃に息を呑む仲間を横目に、

リオンは槍を軽く回した。


「ほら、動けよ。

 逃げてもいいけど、その背中……的だぞ?」


挑発するような声。

次の瞬間、槍先が影のように走った。


シュッ――!


盗賊の胸を貫いた槍が、背中から飛び出す。


リオンは抜き取る時にわざと体をひねり、

血飛沫が円を描いた。


「どんどんいくぞー?」


軽く言っているが、顔は冷たい。




ガルドの剣先が震えていた。


震えは恐怖ではない。

“怒り”だった。


彼の視線はひとつだけ。


――地面に転がされ、ボロ雑巾のようになったラガ。


だが、その目は同情ではなく、

氷のように冷えきっていた。


(あいつか……クソが。)


“イリスを危険に晒した”

――それだけが、ガルドの逆鱗だった。


ゆっくりと、彼は盗賊たちを睨み上げた。


「……てめぇら……」


その声に、人の気配が消えた。


次の瞬間。


「イリスに指一本触れようとしたやつは――全員、殺す。」


地面が割れんばかりに踏み込んだ。


ドンッ!!!!

アスファルトが抉れ、砕けた破片が跳ねる。


剣が火花を散らし、盗賊の武器ごと腕が飛んだ。


バキィィィッ!!


「ぎゃああああああ!!!!」


その悲鳴に、ガルドはさらに拳を重ねた。


ドゴォッ!!


盗賊が地面に沈む。

沈んだ後も、拳は止まらない。


「イリスに!!

 “力で勝てる”と思ったんじゃねぇだろうなッッ!!」


血が跳ね、拳にべったりと付く。


「触れただけで!!

 殺す価値しかねぇんだよッ!!」


怒号が村に響いた。


騎士団員すら、一歩引いた。


(……あいつ、いつもは明るいのに……

 好きな女のことになると、ここまで……)


リオンでさえ軽く口笛を吹いた。


「新人が一番えげつねぇじゃん。」


最後にガルドは剣を振り抜き、

盗賊を5メートル吹き飛ばした。


ドンッ!!


盗賊は家の壁に突っ込み、動かなくなる。


ガルドはゆっくり息を吐き、

血まみれの剣先をイリスの方へ向け、静かに言った。


「……イリスに触れた奴は、もう全員殺す。」


ただただ、イリスを守る為だけに剣を振るっていた。



三方向から盗賊を潰されたことで、

残った盗賊たちは逃げ出し始めた。


だがイリスは、

首をかしげて笑った。


「逃がすと思ってるの?」


返り血で頬を赤く染めたまま、

その動きはまるで舞うようだった。


盗賊の背中へ――剣が一直線に走る。


ドシュッッ!!


そのまま前へ倒れた盗賊の身体が揺れた。


「ねぇ、まだよ?」


斬る。

斬る。

斬る。


イリスの細腕が振るたびに、

血が弧を描いた。


盗賊たちの悲鳴が村に満ちた。



戦闘は、もはや“戦い”ではなかった。

“処刑”だった。


若い騎士団員たちは誰も動けない。


「……総隊長と副隊長だけでも地獄なのに……」


「新人のガルドも強すぎだろ……」


「ていうかあの女……何者だ……?」


「敵より怖ぇ……」


誰もが青ざめていた。



戦場の中央に、

盗賊頭だけが震えながら座り込んでいた。


全てを理解した目だった。


「こ、殺さないで……助け……!」


ガレスが前に立つ。


だがイリスが手を上げた。


「待って。

 この人だけは……情報がいるわ」


盗賊が少し希望を持ちかけた、その瞬間。


イリスは彼の顎を乱暴に掴んだ。


金の瞳が間近で光る。


「さぁ。

 喋りなさい?」


声は甘いのに――

瞳は冷たい。


盗賊は震えながら口を開く。


「な、なにもかも話す!

 あんたらの村を狙ってた理由も……全部……!」


イリスは微笑んだ。


返り血のついた頬で。


「いい子ね。」


ガレスでさえ、背筋に冷たい汗が流れた。


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