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オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。  作者: エース皇命
第2章 迷子の子猫がアホすぎて

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0008 古代の猫型ゴーレム

 地下迷宮(ダンジョン)の5階層。

 王都セントリアの地下に広がる大迷宮の、最下層だ。


 数多くのモンスターから逃げ、数多くの(トラップ)をくぐり抜けてきたランランは、広大で陰気な迷宮をきょろきょろしていた。


「また迷子になりました……」


 そう、これは迷子だった。


 幼い頃からランランは方向音痴で、迷子になりやすい体質だった。

 なにかと問題を起こす性質(タイプ)でもある。


 しかし、ここまで危険で、文明の未知に接近するような迷子(・・)は初めてだった。


「アキラさん、どこにいるんですか……?」


 注意力散漫なことで知られる猫人族(ネコール)のランランにとって、30分という長い時間の瞑想は過酷だった。


 すぐに集中力が分散し、気づけば迷宮に入っていた。

 ランランの感覚では、ほんの一瞬の出来事である。


「怖すぎますぅ……あたし、ここで死んじゃうんでしょうか……?」


 彼女がここまで来れたのは、本来の盗賊(シーフ)としての役職のおかげだった。


 ストレイキャットという二つ名で有名なランランは、イレギュラーズの盗賊(シーフ)を担当している。

 罠を見分け、正確にくぐり抜け、仲間の進む道を明確にする。孤児として貧民街で生まれ、生き残るためにスリや関節の操作を独学で身につけたランランは、まさに罠のプロフェッショナルだった。


 さらには運もいい。

 モンスターとの戦闘が苦手で、だいたいは怯えながら戦っているが、攻撃をかわすタイミングや流れは毎回意図せずとも完璧である。


 その高い幸運値こそ、ランランが今日まで生き残ることができた最大の秘訣かもしれない。


 地下迷宮(ダンジョン)の5階層は王都の北部から南部に至るまでの距離分広がっている。そのため、移動手段が徒歩のランランにとってはあまりに広いものとなっていた。


 5階層を彷徨(さまよ)っていると、ついにラスボスのような存在に遭遇することになる。


「ゴーレム!? ゴーレムと戦ったことなんてないんですけど……」


 身の丈5メートルはありそうな、黄金の金属で構成された猫型ゴーレム。


 大きな目の部分は紅に光っており、夜の猫を彷彿とされる。

 頭部には猫耳が付属。

 明らかに猫がモチーフとなっているゴーレムだ。


 殺戮兵器というイメージが強いゴーレムの前で、ガクガク震えるランラン。こういったパワーで圧倒してくるような相手は苦手だ。勝ち目がない。


 ――みなさん、あたし、死んじゃいますぅぅぅううう!


『お待ちしておりました、女王様(クイーン)


 死を覚悟し、目を固く閉じたランランだったが、敵が一向に襲ってこないことに気づいた。


 恐ろしい巨大なゴーレムは、殺意を消し、まるで目上の存在にするかのように(ひざまず)いていたのだ。


「……ど、どういうことですか?」




 ***




 髪のセットが終わったクリスと、さっきの地下迷宮(ダンジョン)の入り口に戻ってきた。


 ランランの行方がわからなくなったことを伝えると、クリスカリバーの光沢でなんとなく予感していた、という意味不明なことをぼやいていた。


「結局あれ、どういう意味だったんだ?」


「僕は毎朝起きると必ずクリスカリバーを鞘から解き放ち、その光沢を確認するんだ。その光沢の微妙な違いで、運勢を占ってる」


「それ多分、光の当たり具合とか、角度とかの問題だと思うけど」


「アキラ、これは高次元なクリスカリバーの話だ。僕たちの理解の及ばない世界を、()は予見している」


「クリスカリバーって男なんだ。てっきりクリスの今カノ的な扱いかと思ってた」


「彼はそんな存在じゃなく、神にも等しい、崇高なる存在だ。性別は知らないけど、とにかく僕と対等なんかじゃないんだよ」


「そうすか」


 もしかしたらこれは、本当にオレには理解できない高次元な話なのかもしれない。


 それか、クリスの妄想がかなり中二病っぽくなっているか。


 どっちもあり得る。

 クリスの強さは本物だし、ここは前者の方だと解釈してあげよう。


 迷宮の入り口は狭かったけど、1人ずつ入れば問題はなかった。

 頼りになるリーダーのクリスが、真っ先に迷宮に飛び込んでいく。さすがは勇者。勇気の塊みたいなエルフだな。


 オレは恐る恐る、迷宮に身を沈めていく。


「アキラ、この迷宮はすごい! かなり広いし、イレギュラーズが暴れられるだけの余裕がある」


「それはよかった」


 内装はいかにもって感じだった。

 某RPGゲームに出てくるダンジョンに似ている。


 異世界に来てからの3年間で、地下迷宮(ダンジョン)に潜ったのは初めてだ。テーマパークに来てるみたいでわくわくする。


 テンションも上がってきた。


「よし! モンスター倒しままくって、ランランを見つけるぞ!」


 戦う準備は万端だっ!




 ***




 ジャックは魔術師ギルドの魔術図書館で、ゆったりと紅茶を楽しみながら読書していた。


 レジェンド・オブ・イレギュラーズ本部にある自分の部屋も落ち着くが、やはり図書館が静かで心地よい。

 図書館で作り出される静寂を求め、わざわざ王都南部まで足を運ぶのだった。


「そんなところで優雅にティータイムかぁ、おい」


「……」


 せっかく集中できると思っていたところに、邪魔者が現れた。


 燃えるような真紅のロングヘアが特徴的な美女である。

 髪はポニーテールで、左目は眼帯。歴戦の猛者のような姿の女だが、黒と赤がベースとなったローブを着こなす、魔術師であった。


「無視とはいい度胸だ。ジャック、アタシを見ろ」


「ここは図書館だ。静かにしろ」


「うるせぇ。アタシはアタシのやりたいようにやるんだ」


「そうか。なら俺には構わないでくれ」


「アンタに話があるから構ってんだろうが」


 言葉遣いの悪い美女の名はヴァネッサといった。


 勇者パーティ、デストロイヤーズの副首領(サブリーダー)を務めている凄腕の魔術師だ。


 ジャックは本気で軽蔑するような表情を作った後、用があるなら外で聞く、と言って赤髪美女(ヴァネッサ)をギルドの外へ連れ出した。

 さすがに図書館内で騒ぐわけにはいかない。


「話はなんだ?」


「おいふざけんな。戦いに決まってんだろ。この間のリベンジだ」


「どうせまた俺が勝つ。王都を守る勇者パーティ同士、仲よくやろうとは思わないのか?」


「アタシらがイレギュラーズと? いいか、アンタらはデストロイヤーズの好敵手(ライバル)だ。仲よくなんてしない」


「そうか。()ぜろ」


 魔術師ギルドの建物に影響が及ばない程度の、小規模の爆発が起こった。


 ダメージを食らったのはヴァネッサのみ。

 激しく吐血し、ジャックを勢いよく睨む。


「いきなり爆発とかやめろ! 心の準備ができてないだろ!」


「常に攻撃に備えておくのが戦いの基本だ」


「言われてみればそうだけど!」


 ヴァネッサが叫ぶ。

 イライラしている様子だった。


「今回も俺の勝ちだ。先手を譲った時点で、お前は負けていた」


「アタシの方が学歴は上だ!」


「悪いが、王都の魔術学院よりも魔術都市(アルカメナ)の魔術大学の方がランクが高い」


 ヴァネッサの学歴マウントも、ジャックには通用しない。




 シエナは冒険者ギルドの受付前の飲食スペースで、アキラとランランについて考えていた。


 ジャックも外出し、残ったのは3人。

 クリスは髪のセットで忙しいだろうから、ランランはずっとアキラと遊んでいるはずだ。


 アキラにとってのランランは飼い猫のようなものなのかもしれないが、あそこまで親しくできるのは正直羨ましい。


 イレギュラーズとして共に活動を初めて1年。


 同じパーティの仲間(メンバー)として親睦を深めることはできたものの、友人として、恋愛対象として仲を深めるまでには至っていなかった。


 ――アキラと、まずは親友になりたい。そこから親友以上の存在になって、恋人に……。


「これはこれは、汗臭い冒険者の中に神聖な薔薇(バラ)が隠れているではないか。シエナ殿、よければボクと――」


「ごめんなさい」


「まだ何も提案してないんだが」


 テーブルで1人、ボーっと考え込む美女に絡んできたのは、デストロイヤーズの首領(リーダー)ロジャー・グレイフォードだった。


 すらっと細身な長身。

 栗色の短髪に同色の瞳。


 顔立ちの整ったイケメンなので、王都中の女性から人気がある。しかし、クリスほどではない。


「シエナ殿、ボクはこう言いたかった。よければボクと、デートしてくれないか、と」


「お断りします」


「おやおや、照れているのだね。こんなイケメンとデートするとなれば、美しいキミでも緊張はするだろう。よくわかる」


「……」


 2人の周囲には、デストロイヤーズのリーダーとイレギュラーズのメンバーの絡みに興味を持った野次馬が集まっている。


『おい、ルミナルシストがまた女をナンパしてるぞ』


『あいつ、ナルシストで結構イタいよな。顔はせっかくかっこいいのに、それじゃあ台無しだ』


『すげぇ。イレギュラーズのシエナだ……やっぱ美人だな……』


『あんな美女、初めて見たぞ』


 ロジャーは野次馬の言葉が自分を褒め称える言葉であると勘違いし、胸を張って誇らしげな表情を作っていた。


 シエナはそれを見て、今すぐこの場から去ることを決意する。


「ようやくボクとデートに行く気になってくれたか。エスコートは任せ――」


「用事があるので、失礼します」


 絶世の美女は冷たい目でロジャーを突き放すと、早歩きでギルドを出ていった。

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