閑話 エルフ美女の後始末
「クリス、冗談よね? わたくしは本気であなたのことを愛しているのよ」
「僕たちはとっくの昔に終わったんだ」
魔術師ギルドの監獄、セント・アズラム。
王都にある、魔術系犯罪者のための地下監獄。
無様なローレライは表情を強張らせながら、魔力遮断フィールドの中に放り込まれた。
その見送りに来たのは元カレのクリスと魔術師のジャック、そしてオレ。
殴ってやりたかったけど、レディに手を上げるのはオレのポリシーに反する――ということはなく、マジで一発殴りました。
批判しないでね。
「高潔なエルフ様が、こんな空間に耐えられるのかな~?」
ギリギリまで顔を近づけ、挑発する。
普通に嫌な奴になっているのは間違いないけど、まあいいでしょ。これくらい言わせてくれ。
「お前は禁忌の奴隷魔術を行使した。どこでその魔術を習得したか言え」
「絶対にあなたには教えないわ」
「そうか。それならもうお前に用はない」
ジャックがローレライを睨み、身を翻して監獄を出る。このまま階段を上がれば地上だ。
「オレもこれくらいにしとくか。じゃあな」
笑顔で手を振り、ジャックに続くオレ。
最後に残ったのはクリスだ。
元カノに言い残したことでもあるんだろう。勝手にやってくれ。
――と思っていたら、フィールドに反射する自分の髪型を見て、丁寧に整えているだけだった。やっぱりクリスはクリスだ。
「クリス、まだ間に合うわ。あなたの力でこの監獄を――」
「もう僕と君が出会うことはない。また会おう」
「……え? どっちなの?」
「いや……『また会おう』っていうのは、別れのセリフとして定番だから使っただけで……とにかく、さよなら!」
うん、クリスはアホだ。安心した。
「いろいろと世話になった。近いうちにオークの民を連れて王都に移住することにするから、よろしく頼むわい!」
「おう、それじゃあまた」
オークキングとグータッチを交わし、玄関から見送る。
魔術師ギルドに行った後、軽く本拠地で祝勝会をして、オークキングとはお別れだ。
またすぐ会うことになるだろうけど。
「待ってくれ、オークキング」
ドシドシと去っていくオークキングの背中に、クリスが呼びかけた。
「いつもオークキングって呼ばせてもらっているけど、本名はないのかい?」
「本名……ワシは生まれてからずっとオークキングだからな。親からもオークキングと呼ばれていた」
まさかのオークキングが本名かよ。
息子にそんな名前をつける親がいるとは……。
「そうか。それなら、君は今日からケヴィンだ」
「ケヴィン?」
「えーっと、なんでそんな名前になった? どういう流れだ?」
本当に謎だ。
オークキングも混乱しているし、あのランランが首を傾げている。
だから一応クリスに確認しておいた。
「今適当に思い浮かんだからね。もうケヴィンとしか考えられない」
適当どころの話じゃないぞ。
名前の由来もないし、本人と何の関係もないし。
全員がきょとんとしていると、クリスが急に剣を抜いた。いきなり斬りかかるとかいうのはやめてくれよ。
「クリスカリバー、どう思う? オークキングはどう見てもケヴィンなんだ」
「「「「「……」」」」」
剣聖クリスの愛用する剣、クリスカリバー。
その剣には持ち主と会話する能力が……あるわけもなく、ただの剣だ。
「そうか。どうやらクリスカリバーも同意してくれるらしい。ケヴィン、これからも僕たちと仲よくしてくれ。また会おう」
というわけで、オークキングにケヴィンという名前が付与されました。
《キャラクター紹介》
・名前:クリス
・年齢:238歳
・種族:エルフ
・身長:172cm
・容姿:金髪オールバック、切れ長の碧眼
髪型と剣への愛が誰よりも強い男。
少しでもオールバックに乱れがあれば、戦線を離脱する。愛用の得物クリスカリバーは、何も考えずに使うことで真の威力を引き出すことができる。




