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オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。  作者: エース皇命
第1章 リーダーがアホすぎて

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0006 エルフの街

「それで……どうなんだ?」


「間違いなく魔術の類だ。それもたちが悪い」


 レジェンド・オブ・イレギュラーズ本部に戻ったオレたち。

 今回はオークキングも関係者ということで、客人として招いている。


 帰ってきた時、ジャックは夜の読書中だったようで、中断されたことに苛立っているようだった。


 でもこれは緊急事態だ。


 クリスとイレギュラーズの今後に関わる。


 ローレライのことを伝えると、ジャックはすぐに周囲に漂う魔力の余波を確認し、深刻な表情で拳を握り締めた。相当ヤバい状況らしい。


「たちが悪いって、どれくらいだ? あのクソエルフはクリスに何をした?」


「禁忌の魔術だ。キスした対象を自分の奴隷にする。どこでその魔術を習得したのかは謎だが、クソッ、エルフは魔術への適正が高い。面倒なことしやがって」


 あのジャックが悪態を()くなんて。

 その矛先はローレライなので、もう最高だな。もっと言ってやれ!


「あのー……クリスさん、パーティ辞めちゃうんですか?」


 ランランが聞く。

 そんなにショックでもないらしい。


「辞めさせるつもりはない」


 ここでジャックが一言。


 ズバリと言い放ったその一言に、オレは感動した。


 内心は不安だったんだ。

 クリスにとっては、あのエルフの恋人と共に、エルフの社会で生きていくことが幸せなんじゃないかって。


 でも、それは違う気がする。

 クリスはエルフの慣習やしきたりを軽蔑していた。他の種族を見下すところや、自分たちを神格化しているところ……クリスはそれが嫌で、王都に出てきたんだ。


「よし、やってやるぞ。今からクリスのところへ――」


「それはやめておいた方がいい。魔力をたどった結果、ローレライはエルフの街までクリスを連れ帰った可能性が高い」


「エルフの街だと!?」


 エルフの街に過剰反応するオークキング。

 何か嫌な思い出でもあるんだろうか。


「悪い、続けてくれ。ただ会話に入りたいと思って」


 ただの構ってちゃんか。


 ジャックはジト目でオークキングを見つめつつも、何事もなかったかのように話を続ける。


「エルフの街エルファリアは異種族の侵入を許さない。エルファリアに入ってゆっくりクリスを探す時間もなければ、観光する時間もない」


「あたし、観光したいです! エルファリアって、何が有名なんですか?」


「各自準備をして、明日の朝に出発するのがいいだろう。王国としても、イレギュラーズがエルファリアに喧嘩を売るのは避けたいはずだ。夜中に行けば夜襲だと勘違いされる可能性がある」


 ジャックはランランなんて完全に無視だ。


「昼に行っても、結局街を爆破するんだろ? なら別にどっちでも――」


「爆破はしない。イレギュラーズとして正式に門を開けてもらい、誰かがこっそりクリスを救い出し、連れて帰る。以上だ」


「上手くいく気がしないな。門前払いを食らって、ムカついたジャックが街を爆破し、エルフを滅ぼす。この方がいい」


「それはエルフが可哀想(かわいそう)だよ」


「確かに。オレたちが殴りたいのはローレライだけだしな」


 シエナのセリフは正直だ。

 関係のないエルフの諸君、すまない。


「作戦Bは俺が考えておく。明日の準備をしておけ」


 ジャックは淡々と話し合いをまとめると、オークキングに向き直った。


「お前も来るか?」


「クリス氏には恩がある。無論、ワシも行く」


「気に入った。客人(ゲスト)用の部屋を使え」




 ***




「愛しのクリス、あなたの故郷に戻ったわよ」


「ローレライ……僕は……」


「今夜は一緒に寝ましょう。体がすっかり火照(ほて)ってるの」


 エルフの街エルファリアに馬車で戻ってきたローレライ。


 クリスはボーっとした状態で、まともに会話ができなかった。

 それを確認して、悪女のような不敵な笑みを浮かべるエルフの麗人。


「クリス、あなたはわたくしの旦那になるの。あなたは一族で最強の存在。そして、アトラス王の息子でもある」


「……」


「あなたの妻になれば、わたくしにも地位と権力が――」


「ローレライ……やめてくれ……」


 またローレライがクリスにキスをする。


 一度のキスで完全に言いなりになる奴隷化魔術だが、やはりクリスは規格外(イレギュラー)だ。


 彼女の家には、何人もの奴隷エルフが監禁されていた。

 全員男で、全員ローレライの虜になっている。しかし、彼女の本命はクリスだった。


 彼のルックスも当然好みではあったが、彼が王の息子(・・・・)であるということが大きい。


 エルフの中でも優れた美貌を持つローレライだが、家系はさほど力のない、弱小貴族。ずっと憧れていた、高貴な生活――それがもう少しで実現するのだ。

 彼女がキスをするだけで、王国は思い通りになる。




 ローレライが本性を露にしたちょうどその頃、エルファリアの王アトラスは殺伐とした雰囲気の中、自らの剣を()いでいた。


「アーク・トロールの軍勢が攻めてきました。騎士団で対応しておりますが、今回は一筋縄ではいかないようです」


「そうか」


 家臣であるシェリスの言葉を受け、静かに口を開くアトラス。

 そこにはエルフの王としての威厳があった。


「アトラス様ご自身が戦場に出向かれるおつもりですか?」


「そのつもりだが」


「しかし……御身に万が一のことがあれば――」


「私の実力を疑っているのか?」


 王国騎士団に囲まれた王の間が水を打ったように静まり返る。


「いえ、アトラス様がお強いことは――」


「私が出なければ街が滅びる。エルファリアを守れぬ王になるつもりなどない」


 エルファリアもまた、危機に直面していた。




 ***




 ジャックの魔術によって高速で走る馬車で、だいたい3時間。


 主導者(リーダー)不在のイレギュラーズ&オークキングは、エルフの街エルファリアに到着した。


 ローレライをぶっ飛ばすイメトレをしていて、なかなか眠れなかった。

 今日のオレはやる気がみなぎっている。本調子が出せる夜じゃないけど、なんとか頑張れそうだ。


「エルファリアってこんなところだったんですね。なんかこう、もっと発展したところだと思ってました」


「歴史と伝統を守ってきた古代都市だ。言ったはずだが、観光はできない」


「でも、面白いお土産とかは買えるかもしれないですね」


 ランランは完全に観光の気分。

 彼女が1番のアホだから許されていることだな。


「ジャック、とりあえず作戦Aってことでいいんだよな?」


「……」


 急に無視された。

 オレはランランと違って真剣なんですけど!


「ジャック? おーい」


「……おかしい」


「え?」


「普通なら街の周囲には警備隊がいてもいいはずだ。何かが……街の中で起こっている」


 その言葉を証明するかのように、街中の方で大きな爆発音がした。

 黒い煙が立ち昇っている。


 エルフの悲鳴。


 混乱の気配を感じる。


「ジャック氏、作戦Cで行こう!」


 オークキングが得物の大剣を構える。


 ジャックは軽く頷くと、めったに見せない笑みを作った。


「イレギュラーズ、突撃だ」




 エルフの宿敵、アーク・トロール。

 オークよりも巨大な体を持つ種族による軍は、エルファリアのあらゆる建造物を壊し、火を放ち、もう好き放題していた。


 オレたちイレギュラーズは、エルフの軍に加勢する。


「貴様らは……イレギュラーズか?」


 よかった。

 エルフの街にまでイレギュラーズの名は轟いていたらしい。まあ、ハイエルフのクリスが所属するパーティだもんな。


「加勢しにきた! こいつはオークキング! 仲間だから安心してくれ!」


「下等種族の手を借りるのは癪だが……背に腹は代えられない」


「てことは、オレたちも正式に暴れていいってことだな!」


 待ちに待った戦闘シーンの始まりだ。


 イレギュラーズの参戦により、エルフ軍の勝利が確実になったと言っていい。


 ランランは盗賊(シーフ)特有の気配を完全に消す走りで、トロールたちを背後から着々と潰している。

 自然な動きでナイフを取り出し、確実に狩る。それが彼女の戦い方だ。


 シエナはトロールの腹をシエナガンで撃ちまくっていた。


 紫のストレートヘアをなびかせながら、淡々と敵を排除していく。

 体を動かすたびに、いい香りが漂う。


 頼もしい強さを見せてくれたのはオークキング。


 オレたちと戦う時は強い風格なんてなかったのに、こんなに強かったんだってくらいの威力(パワー)でトロールたちを斬り倒していく。


 そしてオレは。


 とりあえず手裏剣を投げまくっていた。もちろん、ちゃんと狙いは定めているので、間違って仲間に当てちゃった、とかいう失態はない。


 この調子で戦えばすぐに勝ちそうだが、問題はアーク・トロールの数が多いことだ。


 余裕で1000体くらいはいる。

 ジャックはクリス救出に向かったし、広範囲攻撃が得意なあの2人がいればなぁ……。




 ***




 ローレライとクリスは熱いキスを交わしていた。


 外でアーク・トロールの侵攻が起きていることには薄々気づいていたローレライだったが、彼女には関係のないこと。

 戦争はエルフの優秀な(・・・)兵士たちに任せていればいい。


「ローレライ、愛してるよ」


「あら、嬉しい。もうあなたは完全にわたくしのものね」


 エルフの魔女が勝利を確信した瞬間、全ては終わった。


()ぜろ」


 大爆炎。


 家を構成している石も木材も、金属も、全てが砕け散り、粉々になる。

 その中の石の破片が、魔術に支配されているクリスの頭に命中した。通常であれば頭に穴があいていてもおかしくはない。


 だが、さすがはエルフの超人。

 体は頑丈だ。


「――ッ。ここは……」


「起きろ」


 ジャックの声は何重にも重なっていた。

 複雑に絡み合った奴隷化の呪文を、強い衝撃とその一言で解除したのだ。


 クリスの意識がはっきりし、視線がジャックを捉える。


「ジャック!」


 ローレライの奴隷となっていた時の記憶はしっかりと残っている。


 ジャックの起こした爆発により、ローレライの奴隷となっていた他の男エルフたちも次々と解放された。

 彼らは地面に倒れているローレライに悪態を()くと、自分を待っている家族のところへと去っていった。


「すまない、僕のせいでみんなに迷惑を――」


「まったくだ。責めてやりたいところだが、今はエルフ軍の加勢に行け。俺がこのクソ女を拘束しておく。好きに暴れてくるといい」


「恩に着るよ」


 クリスはジャックの肩を軽く叩くと、その後すぐに戦場に飛んだ。


 ローレライの家の跡地には、ジャックと気絶したローレライだけが残された。


「お前は魔術を冒涜(ぼうとく)した。魔術師ギルドはお前を許さない」


 意識を失ったローレライに対し、ジャックが淡々と告げる。

 口調はクールだったが、そこには確かな怒りが込められていた。


「俺の仲間を侮辱したそうだな……それでこの有様(ありさま)だ。ざまぁみやがれ、このクソビッチが」


 この光景をアキラが見ていれば、大喜びしていたことだろう。




 ***




「アキラ! すまない、また遅れた!」


 戦ってもなかなか減らないトロールのせいで、疲れていたちょうどその時。


 お騒がせエルフがカムバックした。


 低空飛行で剣を振り回し、破竹の勢いで敵を斬っていくクリス。

 エルフの軍勢から大歓声が上がった。


 オレたちの時は不服そうだったのに……。


「遅れすぎだ! あとでいっぱい文句を言わせてもらうぞ!」


「ああ、しっかり受け止めるよ」


 クリスが笑う。

 まったく嫌味のない、オールバック・エルフの笑みだ。


「オールバックが乱れてるけど、直さなくてもいいのか?」


「自分の髪型より大事なものがある。やっと気づいたよ」


「気づくのが遅すぎだ」


 激しい戦闘の最中であるのにも関わらず、オレたちは笑い合った。


 これでクリスの髪のセット時間が短くなればいいんだけど。

 

「クリス氏! よくぞ戻ってきた!」


「オークキング! ありがとう! 借りができたね」


「いいや、ローレライとかいうエルフがワシを侮辱した時、クリス氏がワシを友達だと(かば)い、謝罪を要求してくれた。実は結構感動しておったわ」


 確かに、泣きそうになってたな。


 オークキングは意外と情に厚い性格(タイプ)なのかもしれない。また好感度上昇だ。


 クリスの加勢により、さらに勢いを増したエルフ軍。

 さすがにこれ以上はヤバいと察したのか、アーク・トロールの軍も撤退していった。


「いやー、最初はどうなるかと思いましたよ。でも一件落着ですね。これでお土産を持って帰れます~」


「もう好きにしてくれ」


 ランランに呆れるのはいつものことだ。


「久しぶりだ、クリス。戻ったか」


 一件落着ムードを壊したのは、馬に乗ってパカパカやってきたエルフだった。


 彼がやってくると、周囲のエルフ軍が一気に(ひざまず)く。

 わかったぞ。あのエルフはお偉いさんだ。


 背中にかかるほどの長い金髪に、碧眼。凛々しくも、端正な顔立ち。よーく見てみると、クリスに似ている。


「クリスのお父さん?」


「誰だ貴様は? 私はクリスに話しかけているのだ。それに、どうして醜いオークキングがここにいる?」


 やっぱりエルフってムカつくな。

 滅ぼしてやろうか。


「僕の友達です。好きでここに戻ってきたわけではないので、失礼します」


「待て。まだ話は終わっていない」


「みんな、家に帰ろうか。ジャックも合流して――」


「話を聞け」


「――ジャックはローレライの後始末をしてくれているから、そのうち合流できる。オークキング、君の婚活については――」


「無視をするな」


「――今度また合コンの機会を用意してみるから、少し待っていてほしい」


 あーあ、とことん無視されてるじゃん、クリスパパ。


 絶対に父親とは話したくなかったようで、クリスは飛び上がってどこかに行ってしまった。多分ジャックのところだろう。


「それじゃあ、オレたちはエルファリアの危機を救った英雄ってことで、よろしくな!」


 唖然とするクリスパパを放置して、オレたちもエルファリアを後にする。


 こんな街、二度と来ないけどな。


「お土産は買わないんですか?」


「ランランちゃん、また今度にしよっか」


 シエナが余計なことを言ったけど、絶対に来ないからな!

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