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オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。  作者: エース皇命
第1章 リーダーがアホすぎて

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0004 恋の悩みと解決策

 気づけばオークキングから恋愛相談を受けていた。


 市民は普通にオペラ座で劇を楽しんでいるとのことで、それが終わればすぐに開放することを約束してくれた。

 まずは冷静に話してみることが何よりも大事だ。


 オレとクリスは普通に自分で縄を破った。

 オークキングの正面にある椅子に腰掛け、新しい友達の恋愛相談に乗っているという状況。


「ワシも今年で34になる。そろそろ結婚について考えていかないと、いつまでも孤独なまま毎日を送ることになるのではないかと心配でな」


「34歳か。僕に比べれば、まだまだ若い」


 クリスは今年で238歳。

 エルフは長寿なので、その年齢ですら若造だ。外見的にはちょうど20歳くらいだろうか。


「いやぁ、ワシとしては30になる前に結婚したかった。だが出会いがない! それに、同族(オーク)の女は好みでなくてな。ヒューマンの美人こそワシと結婚するにふさわしい」


「ヒューマンの美人か……」


 思い当たる人はもちろんいる。

 でもオークキングと付き合う(・・・・)とは思えない。


「ヒューマンの美人なら、シエナはどうだろう。僕が紹介しようか」


「おー、いいのか!? やはりお前はいい奴だな!」


「ありがとう。シエナもきっと喜ぶと思うよ」


 どうだろう。

 オークだからなぁ……別に偏見とかじゃないけど、ねぇ。


 クリスもさすがにわかっていると思っていたが、エルフの価値観が違うのか、クリスがいい奴なだけなのか。


「なあクリス、本当にいいのか?」


 小声で確認してみる。


主導者(リーダー)として、シエナの恋愛パートナーについても考えた方がいいと思うんだ」


「余計なお世話だろ」


「それに、シエナの好みはわからない。もしかしたらシエナのタイプはオークキングのような男かもしれない」


 可能性は限りなくゼロに近いがゼロではない。

 うん、ここはクリスに任せておこう。俺は責任取らないからな!




 ***




「ロマンチックな劇でいいですねぃ。そうだ! シエナさん、恋バナしましょう」


「恋バナ……?」


 ランランとシエナは劇場の客席に座り、ステージで繰り広げられるオークの演劇を鑑賞していた。


 ランランはその大きな猫目を輝かせ、シエナに体を寄せる。

 柔らかい感触がシエナの体にも伝わった。ランランが普段から着用している肉球付きの手袋(グローブ)だろう。


「そうですよ~。あたし、シエナさんの好きな人、知りたいです」


「いないよ、好きな人とか」


「ほんとーですか~?」


 子供のように無邪気な笑みを浮かべるランランに対し、嘘はつけないと思ったシエナ。

 顔をほんのりと赤くし、正直に告げる。


「実は、アキラのことが気になってる……かも」


「えー! そうだったんですか! まったく気づきませんでした~。アキラさんはいい人ですよね。あたしにとっては飼い主みたいな人です」


「そうなの?」


「迷子になってたあたしを拾ってくれたのが、アキラさんなんです!」


 ない胸を張り、ドヤ顔で言うランラン。


 知らなかったエピソードにシエナも興味が湧く。しかし彼女が口を開く前に、ランランがさらに踏み込んだことを聞いてきた。


「シエナさんは、アキラさんのどんなところが好きなんですか?」


「面白いところ、かな」


「確かに面白いですよね。あたしは、猫じゃらしで遊んでくれるところですかね」


「もしかして、ランランもアキラのことが――」


「いやいや、あたしは恋愛とかしないですよ~。難しいですもん。それに、アキラさんは飼い主ですし、イレギュラーズは家族みたいなものだと思ってるので」


「そうなんだ……」


「あ! あたしが協力しますよ! シエナさんならちょっと頑張れば、アキラさんをメロメロにできますよ~」


 友達として、恋愛の成就に協力するというありがたい言葉だったが、じーっとランランの顔を見ながら考えるシエナ。


「嬉しいけど……やっぱり自分で頑張るよ。ありがと」


「えー、面白そうだったのにー」


 ランランは常に何かをやらかす。

 それを恐れての、シエナなりにオブラートに包んだ言葉だった。




 ***




「指パッチン・ダイナマイト」


 オークキングと談笑していたら、聞き覚えのある低い声と技名が耳に入ってきた。


 振り返る暇もなく、大爆発。

 攻撃対象(ターゲット)にだけ作用するという特殊な爆破魔術は、見事にオークキングに命中し、吹っ飛ばした。


「ジャック!」


 オレとクリスに責任を押し付けるとか言ってたのに、なんで来たの?


 相変わらず無表情なジャックは、唖然とするオレとクリスの横を通過すると、そのままオークキングに近づいていった。


「待つんだジャック! もう話は終わった! オークキングとは和解したんだ!」


「……」


 クリスの叫びが、なんとか爆破男(ジャック)の耳に届く。


「市民も解放してもらう。戦う必要はない」


「本当か?」


 まだ疑っているジャックが、オレに確認してきた。

 耳を疑うような状況だけど、相手はあのオークキング。月1の仲だし、納得できなくもないだろう。


「アキラが頷くならそういうことか」


 ジャックの勢いが収まる。


 ひとまず安心した。


「市民は俺が安全に王都に帰らせる。後片づけは2人に任せた」


「自分勝手なやつだな」


 長身のジャックは、オレとクリスを見下ろしながら言うと、何事もなかったかのようにバックステージを去っていった。


 嵐のように来て、とりあえず荒らして、嵐のように去っていく。

 これがジャックという男だ。


「おーい、オークキング、大丈夫?」


「なかなか派手にやられたわ。あいつにちゃんと説明してくれたか?」


「無事っぽいな。いつも吹っ飛ばされてるだけはある」


「ワシはタフなんだ。お前たちのおかげでな!」


 皮肉なんだろうけど、めっちゃ笑顔じゃん。


「アキラ、ジャックが来たということは、もしかしたらシエナもここに来ているのかもしれない」


「そういえば作戦会議の時、行きたそうにしてたな」


「オークキングを紹介してみようか」


「え……」


 正直オレは乗り気じゃない。

 だが、主導者(リーダー)は止まらない。止めることなんてできない。


 ジャックの爆発でほとんどのオークが逃げ出し、市民が解放されたので、劇場にはほとんど人が残っていなかった。

 そんな中、ランランとシエナはまだ客席に座っている。


「アキラさん、作戦上手くいったんですね! どんな作戦だったかなんて覚えてないんですけど」


「劇はどうだった?」


「最高でしたよ~。ラブコメディで、しかもシエナさんがアキラさんを――」


 ランランが何か言いかけ、シエナが彼女の口を強引に塞ぐ。


 かなり動揺している様子だ。

 こんなシエナを見るのは初めてだな。


「シエナ、今よければ、君に紹介したい男性(・・)がいるんだけど――」


「わたしとランランはもう帰るね。それじゃあ」


「えーっと……」


 驚くほどのスピードで劇場から逃げるシエナ。そして抱えられたまま連れ去られるランラン。


 もしかして、バックステージでの例の会話が聞こえてたとか?

 だからオークキングから逃げようとしているのかも。


「とりあえず、後片づけするか」


 クリスの肩をポンと叩き、現実に戻してやる。


 あの豪華な劇場はぶっ壊れ、いろいろ粉々だ。これは明らかに爆破男(ジャック)のせいだな。あとで損害賠償を請求しよう。


「オークキング、ちょっとこれから忙しくなるぞ」




 オレとクリス、オークキングは、ボケリア王国とオーク族の不戦条約を正式に結ぶために、王都のマグノ・ボケリア城に来ていた。


 粉々になったオーク・オペラ座については、ジャックに責任を押しつけ、前よりもいいものに修復してもらうと約束。

 オークキングが親指を立ててグッドサインを出したので、問題はなさそうだ。


「国王様、ここにオーク族との友好的な関係の構築、不戦条約を認めていただけませんでしょうか?」


 こういう正式な場所にハイエルフ出身のクリスは相性がいい。


 おかげでなんでもすんなり決まる。


 さらに、オレたちは王都のヒーローでもあるイレギュラーズ。

 ちょっと話をすれば簡単に国王のところまで案内してもらうことができる。たとえオークキング同伴だったとしても。


 いかにも王様って感じの白髭おじさんは、オレたちを見てにっこりと微笑むと、こう返事をした。


「いいよー」


 なんて軽い。


 これがこのマグノ・ボケリア三世のいいところだ。

 ちなみに、彼は三代目だから三世と名乗っているわけではなく、なんとなくかっこいいから名乗ることにしたとのこと。


「ここにオークとの不戦条約及び、和親条約を認めよう! オークも自由に王都を歩いてオッケーじゃ」


「ありがとうございます、国王様」


 クリスが深々と頭を下げる。

 オレも、オークキングもそれに続いた。




「いやまさか、あんなりあっさり承諾してもらえるとは。ワシ、一応これまで王都を荒らしまくってきたんだが」


「許すことから全てが始まるんだ。国王のことは本当に尊敬しているよ」


 城を出て、王都の街を歩くオレたち。


 最初こそオークキングを見て逃げ出していた市民だったが、すぐに国王宣言の張り出しが広まり、そのうちみんな慣れてきた。


 王都を歩く市民は、ヒューマン、獣人、ほんの少しの割合でエルフ。そして今日からオークも加わったというわけだ。


「それで、オールバック・エルフ……」


「僕のことはクリスでいい。これからは名前で呼んでくれ」


「やはりいい奴だな、クリス()。それで……ワシの恋愛相談の件はどうなった?」


「そのことだけど、僕にいい案がある」


 クリスはドヤ顔だ。

 こういう時は、基本的に名案なんかじゃない。


「合コンをしよう!」


 ほらね。

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