表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。  作者: エース皇命
第4章 絶世の美女がアホすぎて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/34

0023 真夜中の告白とキス

「水の女神が可哀想(かわいそう)


 馬車で帰る途中、シエナに今回の事件の大まかな内容を説明した。


 すると被害者のシエナは、水の女神に同情し始めた。


 今回の馬車は1両しかない。

 イレギュラーズ全員が同じ車両に乗っている。


 ランランは行きと同じようにオレの膝の上で丸くなっていた。このまま10時間くらい眠っているつもりなんだろう。温かさと柔らかさがちょうどいいので、長距離移動の癒しになっている。


「自分の体を勝手に使ったヤツだぞ。同情しなくてもいいだろ」


「でも、その女神はアキラのことが好きなのに、もう会えないんだよね?」


 シエナの席は向かい側だ。

 真正面から真剣にオレの交渉の理不尽さを訴えてくる。


「確かにアキラの交渉は理不尽極まりなかったが、そうでもしなければお前は1年もあの女神に使われていた(・・・・・・)。あの危険な存在は封印しておくべきだ」


「……にゃー、むにゃむにゃ……」


 ランランの寝言か鳴き声かよくわからないものを聞かされると、なぜか全員それ以上の言及をしなくなった。




 王都に着くと、全員疲れ果てていたのか(ジャック以外)、レジェンド・オブ・イレギュラーズに帰ってすぐに寝てしまった。


 ランランに限っては究極の二度寝だ。


 寝ぼけてオレの部屋に入ってきたけど、子猫を抱えるようにして彼女自身の部屋に運んでやった。


 この日の夢は悪夢だった。


 現実世界に影響を及ぼすことができないという神。

 最初オレの前に姿を見せたように、夢の中だけは例外らしい。もしかしたら、夢っていうのは現実と非現実の狭間(はざま)なのかもしれないな、という哲学的なことを考えている余裕もない。


(わたくし)を騙しましたね」


「えーっと、ごめんなさい」


「素直ですね。許します」


 なんかすんなり許してくれる水の女神。


 惚れられた男ってのはやっぱり強い。


 これで一件落着かと思われたその時、水の女神が夜も眠れないようなことを口にする。


「ですが、アキラ様はもう(わたくし)のものです。夢の世界というのは、神が唯一直接的に下界の住人と接触できる空間なのですよ。毎晩毎晩、(わたくし)がアキラ様の夢を支配します」


「オレのことが好きなら、それだけはやめろ」


「無理です。あなたが眠る限り、(わたくし)のものなのは永久的な契約です。そして近いうちに、現実世界にいるアキラ様を迎えにいきます」


「現実世界には手を出せないんじゃなかったのか?」


 まどろみの世界で、オレを抱き締める水の女神は悪魔のように微笑んだ。


「約束をする時には、条件に穴がないかよく考えてからすることです」


「もうあんたは人間に憑依することができないはず……」


「ええ、それも、人間だけではなく、あらゆる生命体(・・・)に……」


「その意味深な言い方やめてもらっても――」


「ごきげんよう」




 全身に粘りつくような汗と一緒に目が覚める。


 これから、こんな夢が一生続くというわけだ。

 笑えてくる。


 それでも、女神をこけにした代償と考えれば安いものだ。殺されることはないし、王都が破壊されるわけでもない。


 毎日の悪夢?

 どうせ3日で慣れる。


 もしかしたら、そのうち水の女神が好きになったりするかもしれない。


 だが、そう単純なものじゃなかった。

 代償はそう安いものじゃなかったというわけだ。


 毎晩、同じ夢を見る。


 ヤンデレな水色髪の女に縛られ、(もてあそば)れる夢だ。水の女神は想像以上にSっ気が強いヤンデレだったらしい。


 初耳かもしれないけど、オレはMじゃない。

 基本的に虐められるのは嫌いだ。




「大丈夫?」


 悪夢が続いて1週間がたった頃。


 この1週間の間、モンスター討伐には参加していたし、王国政府からの依頼もしっかりこなしていた。

 だから心配される要素なんてなかったはずなのに……シエナはオレの精神的な負荷(ストレス)に誰よりも早く気づいた。


 風呂から上がったオレは、睡眠なんてろくに取れないとわかっているのにも関わらず、自分の寝室に足を運ぶ。


 そんなオレに後ろから声をかけてきたのがシエナだった。

 彼女はオレの寝室に入るや否や、大丈夫?と母親のような表情で聞いてきた。


「眠れないんだ」


 こぼれるように口から出た本音。


 言うつもりはなかった。

 それなのに、シエナなら自分を救えるかもしれないと願う自分がいた。


 オレがベッドに腰掛けると、シエナは肩が触れ合うような位置まで顔を近づけて、座っていいか聞いてきた。


 オレが返事をするよりも先に、隣に座るシエナ。


「あれからずっと、例の女神が夢に出てくる。そんなにいい気分じゃない。大量の汗をかいて、夢から現実に逃げるようにして目が覚める。現実逃避じゃなくて、夢逃避だよな」


「無理してジョークを言わなくてもいいんだよ」


 その一言に、ふっと。

 肩の力が抜け落ちるのを感じた。


 シエナの声は優しくて、穏やかだ。聞いているだけで落ち着く効果がある。


「すぐ慣れるだろうと思っていたけど、そうでもなかった。そのせいで毎日眠れないし、これが永遠に続くと考えたら……怖くてしかたないんだ」


「ポジティブなアキラ君が……珍しいね」


「だろ? オレは自分が思ってたより弱いらしい」


「アキラ君は、弱くなんかないよ」


 シエナの両手がオレの両手を包み込む。

 その手は細くてすべすべで、冷たかった。でも、それと反対に心が温まっていくのを感じた。


「アキラ君、今日は一緒に寝る?」


「……え?」


 まさかのお誘いに、顔が熱くなるオレ。多分今、真っ赤だろうな。


「普通に横になるだけ。その気になったら、わたしを抱き枕として使ってくれても……いいよ」


「……」


 変な意味はない。

 そう聞いて、なんか恥ずかしくなる。


 でも断るつもりはなかった。


 ベッドに横になると、シエナも体を倒して隣に寝そべる。


 顔と顔が近い。


 お互いの呼吸が少しずつ速くなっているのがわかる。

 これがドキドキだ。人間が恋をした時に起こる症状だ。初めての経験だけど、きっとこれがその恋なんだろう。


 これだと余計に眠れないような気がする。

 さっきまでオレを落ち着かせていたシエナの声が、今ではオレの心臓の鼓動を速めている。


「好き」


 シエナがギュッとオレを抱き締めながら、か細い声で言った。


 聞き間違いかと思ったら、もう一度。


「好きだよ、アキラ君」


「……」


 ここまではっきり言われると、聞き間違いだと思い込むこともできない。


「オレも好きだ……シエナのことが」


「……本当?」


「疑うなよ」


 気づけば、唇に柔らかいものが当たっていた。


 それがシエナの唇であるとわかるのに、そこまで時間はかからなかった。


「好き」


「セリフの使い回しか?」


「好き」


「やっぱりな」


 そういうアホなやりとりをしながら、オレは深い眠りについた。

 幸運なことに、その夜は例の夢を見なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ