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オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。  作者: エース皇命
第3章 魔術師がアホすぎて

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0016 身内同士の準決勝

 昼休憩を挟んで準決勝が始まった。


 ここまで勝ち進んだのは、空気を読まずに圧勝してきたジャック、なんか気づけば準決勝のランラン、着実に進んできたシエナ、そしてオレだ。


 なんと、全員イレギュラーズ。

 忘れた人のためにも言っておくけど、主導者(リーダー)のクリスは早々に失格になった。


 王都でイレギュラーズを知らない人はいない。

 事実上の王都最強決定戦だと騒ぐ観客もいたくらいには、会場の期待値が上がり続けている。


 準決勝1回戦はジャックVSランラン。


 王都最強魔術師であるジャックが明らかに優勢だと思うけど、ランランも実力者だ。普段ふわふわしているように見えても、盗賊(シーフ)としての腕は一流。


 それに幸運値があり得ないほどの高いので、不規則な攻撃もなぜか回避することができる。

 もしかしたらジャックにとっての1番の強敵は、運を味方につけるランランかもしれない。


「まだ控え室に行かなくてもいいのかい?」


 準決勝をこの後に控えているのに、まだ観客席で観戦を続けようとしているオレ。


 隣のクリスが心配して声をかけてきた。


「オレは観戦するのが趣味だからな。ギリギリまで観ておきたい」


 オレの趣味は闘技場観戦。

 この魔術師トーナメントもまた、白熱のバトルが繰り広げられている。


 それに、今回の出場者の中にはイレギュラーズの仲間がいるし、オレ自身も出場している。オレは決勝に進むつもり万端だから、対戦相手になり得る2人の戦いぶりをチェックしておくこともまた重要だ。


「シエナとの戦いには勝つつもりでいるんだね」


「弱点はなんとなくわかってる」


「シエナ殿の弱点……それさえわかれば、ボクも彼女を手に――」


「ややこしくなるから入ってくるな会話に!」


 ロジャーがいたのを忘れてた。

 近くでナルシストなセリフをぶつぶつ吐き続ける背景(モブ)だとしか思ってなかった。


 一応自分の右隣を確認する。


 そこには不機嫌そうな表情のヴァネッサが。

 そっとしておいてやろう。


「それで、シエナの弱点は何だと思ってるんだい?」


「……それは準決勝2回戦のお楽しみってことで。ていうか、もしオレが優勝したら、王都最強魔術師の称号を得られるってことか?」


「それは違うだろう、アキラ。まだ戦っていない魔術師がいる」


「ああ、そっか」


 この大会の主催者にして偉大な魔術師、それでいて魔王のオルドを倒さなければ、その称号はもらえない。




 結論から言うと、ジャックとランランの試合はジャックが勝利した。


 ネコパンチを5発もくらい、なかなか痛そうな顔だったけど、とりあえずジャックが勝った。


 序盤、ジャックの攻撃系爆破魔術が炸裂。

 回避できなさそうな攻撃だったが、なんとランランは全部の攻撃をすり抜けた。


 目視できないほどの速さ(スピード)でジャックの背後に回ったかと思うと、にゃーという掛け声でネコパンチ。

 彼女のネコパンチの威力はクリス並みだから、まず常人は即死だ。


 とはいえ、さすがはジャック。

 軽い治癒魔術を上手く利用しながら、ネコパンチのダメージを緩和し、そこから攻撃に移る。


 その攻防戦が5回ほど繰り広げられ、ネコパンチも5発もらったその時。


 ――ランランが消えた。


「まさかこれは……」


「ランランらしい終わり方だね」


 ストレイキャット、空中闘技場の戦場(フィールド)にて、迷子になる。


 観客が気づいた時にはもう全てが終わっていた。


 ランランは場外。

 きょとんと立つその姿はまるで迷子の子猫ちゃんのようだった。




 いよいよオレの戦いがやってくる。


 対戦相手はシエナ。


 同じイレギュラーズの仲間(メンバー)だから戦い方の癖や弱点はなんとなく把握しているつもりだけど、それは相手(シエナ)にとっても同じこと。


 オレが気づいていない、自分の戦い方の弱点を知っているのかもしれない。


「気づけば準決勝だね」


「楽勝だったな」


「でも、ここからは楽勝じゃないよ」


 シエナの美しい瞳の中には闘志が燃えている。


 こうして向かい合い、手合わせするなんて始めてだ。仲間同士で訓練する時にはいつもクリスと戦っていたからな。


「こう見えても、シエナのことはよく知ってる。だからオレが勝つ」


「わたしのこと……よく知ってる……」


 シエナが顔を赤くする。

 ちょっと照れ臭いな。


「まあ、その、戦術とか、戦い方とかって意味で……詳しいことはまだ――」


「もっと知りたい?」


「え? あ……うん」


「この戦いが終わったら、わたしのこと、いっぱい教えてあげるから」


 なにこの色っぽいお姉さん。

 オレの方が1歳年上だからお姉さんではないのかもしれないけど、どこか色っぽく、ミステリアスな雰囲気を出せる絶世の美女にはお手上げだ。


 ご褒美が用意された状況で、戦いが始まる。


 シエナは速攻で銃撃してきた。


 彼女の遠距離攻撃はスマートで確実。

 でも遠距離ならではの死角も存在する。


 それは――。


「接近戦だ!」


 場外近くに誘導して足を止めたら、すかさず接近。シエナが一定の距離を取れないよう、不規則に動いて距離を詰めていく。


 接近戦からオレのアクロバティックな体術で仕留めれば、静かにシエナを倒すことができる。


 腕を引き、シエナの腹を狙う。


 彼女のシエナガンはまだオレに標的を定めきれていない。この一瞬の隙で、気絶させられるだけの強烈な一撃を――。


「――ッ」


 なんてこった。


 超至近距離でシエナの美しすぎるお顔を見つめてしまった。


 風圧で香る上品な匂い。

 使ってるシャンプーは同じもののはずだけど、どうしてこんなに香りが違うのか。人間そのものから出る香りとでもいうのか。


 ここでシエナにチャンスが到来する。

 オレが怯んだ隙に、シエナガンの銃口をこっちに向ければ――。


「……降参」


「え?」


 シエナは顔を真っ赤にして、地面に座り込んでいた。


 そのままさっと抱き留める。

 女性の体って柔らかい。


「なんで降参?」


「だって……」


「あ」


 場外ギリギリまで追いやられていたシエナは、何か(・・)に動揺して後ろに足を一歩引いていた。


 降参というより、場外という正式なルールによる負けだ。




 ***




 アキラとシエナの戦いが始まった頃。


 観客席には、1人の新顔が到着していた。


「ケヴィン! よく来てくれたね」


「遅れてすまんな、クリス氏。午前中はボランティア活動で忙しくしておったわい」


「これから盛り上がるところだよ。ジャックは決勝進出を決めたし、アキラとシエナは今からだ」


 オークキングのケヴィンである。


 実はケヴィンには魔術の学歴があった。

 王都の外にある魔術学校では、オークの入学者も受け付けている魔術学校があり、そこを首席で卒業している彼にも今大会の観戦資格が与えられていたのだ。


 合コンの際、ローレライの魔術を感じ取ることができたのもこうして魔術を学んでいたからである。


「ところで、クリス氏は準決勝でジャックに負けた、ということになるのか?」


「違うよ。ジャックの相手はランランだった。僕は失格になったんだ」


「ほう、失格」


「魔術の時代の先取りをしすぎたんだ、きっと」


「なるほど……」


 クリスの意味深なセリフを聞いて、ケヴィンは深く言及しようとはしなかった。

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