表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。  作者: エース皇命
第3章 魔術師がアホすぎて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/34

0015 魔王との因縁

 2回戦が始まる直前。


 ジャックは自分の控え室で1人、機械の腕のメンテナンスをしていた。

 メカノイドという種族は体の一部が機械で構成されている。


 普通のヒューマンとは違い、肉体的なトレーニングなど必要はない代わりに、体のメンテナンスが必須になってくるのだ。


「忙しいか?」


「お前は……オルドか」


「久しぶりだ、ジャック」


 鍵をかけていたはずの扉が開き、今大会の主催者が入ってきた。


 こうして魔界から出て活動する時には一般的なヒューマンの容姿をしている。

 今の魔王はジャックと同じくらいの背丈で、瘦せ型の男だった。


 メンテナンスをちょうど終えたジャックは、ツヤツヤと輝く機械の右腕で魔王と握手を交わす。


 それは敵対しているようなバチバチしたものではなく、久しぶりに友人と会った時の親しげなものだった。


(なんじ)が今大会に出場してくれて嬉しいよ。てっきり吾輩(わがはい)のことが(イヤ)で参加を見送るものだと思っていたからね」


「元々は出るつもりなんてなかった」


「しかしながら、こうして出場している」


「ヴァネッサがしつこかったからだ」


「ヴァネッサか。1回戦での戦いは見事なものだった」


 魔王とジャックはかつての知り合い、いや、友人だ。


 魔術都市(アルカルメナ)の魔術大学を首席で卒業したジャックは、王都に来る前、しばらく魔術の修業のために魔界に滞在していた。


 飛び級合格して飛び級卒業したジャックはその時まだ15歳。

 それから4年ほど魔界にて魔術修業をしていたことになる。


 魔王オルドはそんなジャックの魔術への探求心を評価し、魔術の先輩として、同じ魔術研究の仲間としてジャックと行動を共にしていた。


 しかし――。


「ジャック、あの考え(・・・・)はまだ変わっていないのかな?」


「変わるはずがない」


 魔王の口から出たあの考え(・・・・)こそ、この2人を引き裂いた価値観の違い。


 それは――。


「俺は永遠の犬派だ。猫より犬の方が利口で愛嬌がある」


「それは大きな間違いだ、ジャック。猫ちゃんこそ、この世界を支配するにふさわしい存在。可愛く、そして愛くるしい。魔王の心も溶かしてくれる」


 犬派か猫派か。


 これは究極の二択。


 この派閥争いこそが、ジャックが魔界を離れて王都に旅立った原因である。


「ランランのことも猫人族(ネコール)だから許可したんだろう。大魔術師でもあるお前が、そんな魔術への冒涜――」


「吾輩は魔術という概念の広がりを信じている。あの可愛い可愛いランランちゅぁんも、きっと魔術的なものを――」


「正直に言え」


「それはもちろん、ランランちゅぁんの猫耳が尊すぎるからだ。何か言いたいことでも?」


「……」


 ジャックは呆れ担当だ。

 イレギュラーズの仲間(メンバー)に対しても呆れ、魔王ともあろう存在にも呆れ……。


「もしよければ、ランランちゅぁんをしばらく貸してほしい」


「その『ちゅぁん』はやめろ。吐き気がする」


「推しが尊すぎるからしかたないだろう」


「どうして俺のまわりにはこんな奴らしかいないんだ……」


 こんな奴らとは、イレギュラーズ+ロジャー+ヴァネッサ+ケヴィン+国王のことである。


「実は今日、汝とは和解しにきた。当然ながら猫派は譲らないが、価値観の違いを尊重し合うことこそ、大人同士の関係なのではないかと思ったのだよ」


 急にまともなことを言い始めた魔王。


「それもそうか」


 溜め息をつきながらも、そのことに関しては認めるジャックであった。


「わだかまりが溶けたということで、本題に入ろう」


「本題があったのか」


「実は次の2回戦、吾輩の妹であるニューが汝と対戦する」


「ニュー・ネメシスか。何度か会ったことがある」


「そう。しかし、少し前まであんなに幼かった妹が、今では吾輩を脅かすほどにまで成長したのだ。本気で戦い、ジャックの成長も見せてくれ。手加減をしたらランランちゅぁんをいただく」


「いいだろう」


 ジャックはこの時、手加減するかどうか本気で迷っていた。




 そして2回戦が始まる。

 イレギュラーズのクリスを除く3人は確実に勝利し、準々決勝へと駒を進めた。


 2回戦最後はジャックVSニュー。


 魔王オルドの妹と、魔王オルドの旧友の熱い戦い。


 多くの観客はニューがオルドの妹であることを知っているため、ニューへの歓声の方がジャックへのものよりも大きかった。


「まさか、ジャックが魔王の妹と当たるなんてね」


「これ、倒しちゃったらヤバいんじゃないか?」


 クリスとアキラは観客席で心配している。


 クリスは魔王の妹という肩書きから、ニューがとんでもなく強いのではないかと思っているため、ジャックが敗退してしまうかもしれないという心配。


 アキラはジャックの強さを誰よりも信頼しているため、逆に魔王の妹を簡単に倒してしまわないだろうな、という心配。


 戦闘開始のコールが響き、強者同士の戦いが始まる。


「指パッチン・ダイナマイト」


 開始1秒後。

 ジャックが必殺技を繰り出した。


 控え室ですでに魔力を集めていたジャック。この時には必殺技が放てるだけの魔力を溜め込んでいたのだ。


 渾身の必殺技により、大爆発が巻き起こる。

 ニューはそれに巻き込まれ、一瞬で場外に出た。


「やっぱりな。なんとなくこういう展開になりそうだと思ってたんだ」


「アキラ君、この展開を読んでたの?」


「ジャックは空気を読まないからな」




 ***




 なんと準々決勝も圧勝してしまった。


 オレたちが強すぎるのか、王都の魔術師たちがさほど強くないのか。

 全員それなりに実績のある魔術師だと聞いてたけど、どうやらイレギュラーズとしての戦力の方が遥かに上だったらしい。


 シエナとランランも苦戦することなく準決勝に勝ち上がった。


 魔術を必死に極めてきた本物の(・・・)魔術師たちに申し訳ないな。


 今観戦しているのは、準々決勝最後の戦い。

 ジャックとヴァネッサの真剣勝負だ。今回もどうせ一撃で終わるんだろうな。


 そう思っていたけど、どうやらヴァネッサは思っていた以上に強い魔術師だった。


 ――ジャックに一撃でやられていない!


 ジャックの必殺技を障壁魔術で上手く回避して、自分の火炎魔術に繋げている。

 1分以上、お互いがお互いに傷をつけられない戦いを続けていた。


「ヴァネッサさん、あのジャックさんとあそこまで戦えるなんてすごいですね」


 ランランが観客席からヴァネッサを褒める。

 もちろん本人に聞こえてはいない。


 でも、オレたちに戦場(フィールド)の会話は丸聞こえだ。張り巡らされた音声拡張魔術により、観客も魔術師同士の白熱した会話を聞くことができる。


『アタシはアンタを倒すため、毎日毎日魔術を極めてきた!』


『そうか』


『1秒たりとも、アンタのことを忘れた日はないんだ! ジャック、もしこの戦いでアタシが勝ったら……』


『なんだ?』


『アタシが勝ったら……』


 もしやこの流れは……。

 会場中の注目が、2人の会話に集まる。


 ロジャーはここで初めて気づいたらしく、目を丸くして驚いていた。


「ま、まさか……ヴァネッサ殿がジャック殿に好意を抱いていたとは……つまり、イレギュラーズとデストロイヤーズの男女間での交際が成立するということ……シエナ殿、ボクは――」


「ごめんなさい」


 どんまい、ロジャー。


『アタシが勝ったら、その……アタシの頼みを聞いてもらうから覚悟しろ!』


『どんな頼みが言ってもらわなければ、同意はできない』


『それは……ほら、わかるだろ?』


『まったくわからん』


 そう言って、ジャックが最後の一撃を繰り出す。今までの試合の中で最も大きな爆発が起こり、ヴァネッサは黒焦げになった(ちゃんと治癒師が治療して元通りになったのでご安心を)。


 相変わらず、空気を読まないし、鈍感だし……オレは絶対に、女性の気持ちを理解してやれないような男にはならないぞ!


 もちろん会場からはジャックへの大ブーイング。


「これに関しては擁護できないね」


 さすがのクリスも、鈍感野郎(ジャック)に呆れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ