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オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。  作者: エース皇命
第3章 魔術師がアホすぎて

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0013 王都魔術師トーナメント

 この日もイレギュラーズ全員で食卓を囲っていた。

 夕食のメニューはクリスの作ったシチュー。


 エルフの街を離れてからしばらく自炊していたとのことで、クリスは料理が得意だ。200年ほど自炊生活を続けていただけあって、得意という領域を超えている気がするくらいの腕前。


「あの、ジャックさん、それ何ですか?」


 シチューとオレンジジュースを交互に楽しんでいるランランが、ジャックの目の前に置いてあるチラシを指さす。


 そういえば食堂に読みながら入ってきてたな。

 王都に新しくできたジムの勧誘チラシかもしれない(ジムなんてできてない)。


「魔術師トーナメントの告知だ。王都の凄腕魔術師を集めて戦わせるらしい」


「へぇー、なんだか盛り上がりそうですねぃ」


 ジャックがチラシを雑に放り、それをランランが手に取る。


「主催者はオルド・ネメシスさん……聞いたことないんですけど、魔術界では有名な(かた)なんですか?」


 ランランの名誉のために言っておくけど、アホでも文字くらい読めるからね。


「伝説的な存在だ。魔術師で彼の名を知らない者はいない」


「なんか聞いたことある気がするぞ」


 ランランにチラシをこっちに渡すよう目で指示する。

 魔術師トーナメントって、なかなか面白そうな企画だ。オレは闘技場観戦が趣味だから、魔術師同士の戦いを観るのは新鮮で楽しいかもしれないな。


「このトーナメントはいつあるんだい?」


 クリスも興味があるらしい。


 ジャックは当然参加するだろうから、他のメンバーみんなで観戦に行くっていうこともできそうだ。


「1週間後って書いてある。活動履歴と申請書を主催者に送って、許可が出ればオッケーらしい」


 凄腕魔術師の戦いということで、エントリーの審査は厳しいみたいだ。


 チラシを読む限りだと、それなりに功績を上げている経験がないとエントリーできないらしい。ちなみに学歴は不問。

 それともちろん、魔術が使える人しか参加できない。


 ジャックは王都で誰もが認める偉大な魔術師だ。

 出場は確定だな。


 クリスにもチラシを見せて、じっくり読んでもらう。


「出場者と血縁関係のある者と、魔術系の学校に在籍したことのある者しか観戦できないって書いてあるけど、僕たちは――」


「家族とはいっても、さすがに血縁関係はないですよね。あたし、ジャックさんが優勝するところ見たかったです」


 嘘だろ……。

 観戦ってチケット買えば全員オッケーじゃないの?


 闘技場の観戦ではそれが当たり前すぎて、観戦に関する詳細を読んでなかった。せっかくエンターテインメントを楽しめると思ったのに……。


「どうしても観戦したいなら、わたしたちも出場すればいいと思う」


 ここで、シエナがとんでもないことを言い出した。


「オレたちは魔術師じゃないぞ! ……え、シエナ実は魔法使えるとか?」


「使えないけど、強かったらどうにか――」


「話が勝手に進んでるが、そもそも俺は出場するつもりなどない」


 ここで、ジャックもまた、とんでもないことを言い出した。


 出場資格があるなら普通出るだろ、こんな面白そうな大会。


 みんながジャックに視線を送る。

 きっとクリスもランランも興味津々なのだ。とんでもない案を出したシエナも、戦うことは好きみたいだから出てみたいのかもしれないな。


 オレたちはさすがに出れないけど。


「おいジャック、まさか負けるのが怖いのか?」


 自尊心を(あお)れば、大抵のことは上手くいく。ジャックってチョロいから。


主催者(オルド)とは因縁がある。友人として共に魔術を極めていたが、あることをきっかけに対立関係になった」


「なるほど。じゃあ今回の参戦を仲直りのきっかけにすればいいだろ」


「そうですよ~。改めて話してみたら、相手は案外気にしてないかもしれませんし」


「魔術界で知らない人はいないほどの魔術師と対立したままなのは、今後よくない影響に繋がってしまうかもしれない」


「どんなことで対立したの?」


 オレを含め、全員ジャックに参戦してほしい模様。


 シエナの質問にジャックは答えなかった。

 相当深刻な対立なのかもしれない。


 触れない方がいいのかもしれないと思ったものの、ジャックの家族として、対立した理由くらい聞きたい。


「ジャック、教え――」


 ドンドンドン!


 バンバンバン!


 規則的に鳴らされる爆音。


 これは――。


「ノックだね。僕が出るよ」


 来客だ。


 それにしても、ドアを叩く力が強すぎだ。もしかしたら敵かもしれない。

 こういう仕事をやっていると、いきなり敵の対処をしないといけなくなるから大変だ。


 月1で面倒を起こしていたケヴィンが友達になったことで、少しはマシになったけど。


「ジャック、君に用事が――」


「食堂でみんなとシチューかぁ、おい」


「……」


 めんどくさい奴がやってきた。


「無視とはいい度胸だ、ジャック。怖くてアタシが見れないか?」


 デストロイヤーズの副首領(サブリーダー)ヴァネッサ。


 真っ赤なロングヘアに眼帯の美女。

 美女なんだけど、うるさいし品性はないし好戦的。だからこの人苦手だ。


「あのー、ジャックに喧嘩売りにきたなら別の機会に――」


「カゲブンシンは黙ってろ! 影分身できないくせに」


「おい、それ結構気にしてるんだからな!」


 やっぱり苦手だ!


 早くジャックに爆破して吹っ飛ばしてほしいけど、食堂(ダイニング)でされるのは困るな。

 まだシチュー食べてる途中だし。


「何の用だ?」


「次の勝負の話だ。魔術師トーナメントではアタシが――」


「出場するつもりはない」


「ふざけんな! アンタが出ないと参加する意味がないんだ。別にアンタのことが気になってるからとか言ってるわけじゃないからな!」


 誰も疑ってないよ。

 というか、そのセリフのせいで、もしかしたら、という可能性が浮上した。


 シエナとクリスもその可能性に気づいたらしい。ヴァネッサはジャックのことが好きだから、こうしてダル絡みの中のダル絡みをしてくるんじゃないのかと。

 しかもその好き(・・)は、恋愛的な意味での好き(・・)だ。


 ランランは急に現れたヴァネッサに圧倒されて、猫みたいに縮こまっている。


「俺は出ない」


「出ろ」


「出ない」


「出ろ」


「出ない」


 この意地の張り合いが、約1時間ほど続いた。


 その間にオレたちはシチューを食べ終わり、グランドホールでくつろぎ始めた。今はちょうどランランと猫じゃらしで遊んでいる。


 ジャックは「出ない」というセリフを繰り返しながらシチューを完食し、そのままの流れでグランドホールまで来ていた。ヴァネッサもしつこいまでについてくる。

 もう出ていってくれないかな。


「強情なヤツだな。アタシに負けるのが怖いんだろ?」


「お前に負けることはない」


「いいか、もしアンタが参戦しなかったら、これから毎日ここに来て、勝負しろ勝負しろと叫び続けてやる。爆破できないようにイレギュラーズ全員がいるこのホールでな!」


 もし本当にそんなことするんだったら、オレがぶっ飛ばしてやる。

 それかクリスに頼んで別大陸の砂漠地帯に落としてやる。


「ジャック、頼む。魔術師トーナメントに参加してくれないか?」


 クリスは優しい。

 ヴァネッサを殴らず、冷静にジャックに頼み込んでいる。


「……わかった」


 ついにジャックが折れた。


 頑固と頑固の争いが、1時間(・・・)で幕を閉じる。

 これでヴァネッサも命拾いしたな。




 ようやくヴァネッサが帰り、ゆったりとした夜が過ごせると安心した頃。


 思い出したようにジャックが言った。


「この際だから言っておくが、主催者のオルド・ネメシスは魔王だ」

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