懐かしい思い出
浴室から出て室内着に着替えて久しぶりに自室に入った。
「変わってないわね、この部屋も」
幼い頃の思い出が蘇ってきて懐かしさが胸を包む。
「お嬢様、アップルパイを用意しておきました、お茶の準備もしております」
「ありがとう、ちょうど小腹が空いていたのよ」
椅子に座りテーブルに置いてあるアップルパイをナイフで切りフォークで刺して口の中に入れる。
「うん、この味よ。 王都にも美味しいお店はあるけどやっぱり故郷のこの味が私に合っているわ」
「料理長が聞いたら泣いて喜びますよ」
そう言ってメイドが笑うと私もつられて笑った。
「そういえば、お嬢様が小さい頃にリンゴの木に登って自らリンゴを採っていましたね。 『採れたてが1番美味いのよっ!』て」
「ふぐっ!? ……よく覚えているわね」
「お嬢様の専任になって間もない頃ですからね、毎日がヒヤヒヤしたりドキドキしてましたよ」
メイドとは年も近いので友人感覚で接してしまう。
私の良い所も悪い所もよく知っているので彼女だったら腹を割って話す事が出来るし彼女も本音で接してくれるので心を許せる。
心許せるのはこの家で働いているみんなもそうだけど。
やっぱり帰れる場所があるのは良いなぁ、と思う。