幕間 公爵と国王
「……という訳でシルビアは領地に行きました」
「そうか、賢明な判断だな」
シルビアが領地に向かった翌日、公爵は国王と面談していた。
「しかし、今回の騒動帝国側が周知していたとはな」
はぁ〜、とため息を吐く国王。
「帝国には優秀な諜報員がいる、と聞きます。 近隣国の情報は筒抜けでしょう」
「まさかとは思うが狙いはシルビア嬢では無いだろうか?」
「帝国側から釣書が来てますからね、それもあるかもしれません。 念の為に護衛をつけておきました」
「今、我が国でまともに機能している貴族はお主のみだ。 何かあった時はよろしく頼むぞ」
「勿論です、この身は国に捧げております」
クラッセ公爵の忠義は貴族1と言われている。
だからこそ、婚約を結んだのだが残念ながら息子はその意味を深くは考えていなかった。
「ところで元殿下のご様子は?」
「うむ、漸く大人しくしとるよ。 幽閉した当初は泣き喚いていたが徐々にだが薬の効果が切れてまともな思考になって己の罪と向き合っておる、全く……」
再び国王は溜息を吐いた。
「子育て、というのは難しいものですな」
「シルビア嬢は良き子に育っておるではないか」
「そう言っていただけるだけでありがたいと思っております。 ただ……」
「何か心配事でもあるのか?」
「元々シルビアはお転婆な所がありまして、王妃教育で収まっていましたがそこが解放されるんではないか、と」
「良いではないか、多少元気があった方が良い」
元気という域を超えているんだよなぁ、と内心公爵は思っていた。
幼い頃のシルビアは言ってしまえば、口より先に手を出すタイプだった。
幼い頃に同年代の令嬢がいじめに合っていた時、木刀片手に乗り込んでいじめっ子をボコボコにした事があった。
後々その事を知りその家に謝罪に行ったが逆に謝られた。
シルビアにとっては黒歴史の1つであるが周囲の人間から見たら武勇伝の1つである。
そんなシルビアを領地にいかせたらどうなるか。
公爵は心配でもあるしちょっと楽しみでもあった。