今までとこれから
私が目覚めてから1か月が経過した。
漸く身体の痛みも無くなりベッドから起き上がる事が出来て、現在はリハビリ真っ最中である。
リハビリと言っても館内や庭園を散策するぐらいだが。
1か月とちょっとの寝たきり生活で体力は減少してしまったのと、……太った。
お父様曰く、見た目は変わらないと言っていたけど身体が重いし明らかに動きが鈍くなっている。
年頃の乙女としてはこれは重大な問題であり即解決しなきゃいけない問題である。
「お嬢様、そろそろお茶の時間にしませんか?」
「あら、そう」
中庭は何週か歩いているとメイドが声をかけた。
「すっかり元気になりましたね」
「まだよ、本調子には戻って来てないわ」
「そういうところですよ」
え?
「お嬢様は真面目すぎるんです、もう王太子の婚約者では無いんですから少しは気を抜いてもよろしいんでは無いでしょうか?」
「そうかしら……」
「それに今のお嬢様は本来の良さが戻って来て私は嬉しいですよ」
「本来の私?」
「えぇ、無理に着飾って無い、と言いましょうか……、婚約者の時はキツめのメイクで髪も盛っていて……、本音を言いますと似合っておりませんでしたよ」
「えっ!? 講師の婦人方が舐められない様に、て教えてもらっていたんだけどっ!?」
「人によっては合っている方もいらっしゃる、と思いますが……、お嬢様の良さを明らかに消していました」
そ、そうだったんだ……。
メイドからの指摘で私は改めて自分を顧みた。
……うん、確かに背伸びをしていた感はある。
王太子様の横に相応しくなる為にしていたけど、心の何処かで虚しい部分はあった。
「そうね……、これからは私らしく生きる事にするわ」
「えぇ、それでよろしいと思います」
メイドはニッコリと笑った。