8.星の兆し
夜の静けさの中、ユウキはベッドに横たわりながら天井を見つめていた。父の手帳を読んで以来、心のざわめきが収まらない。母の態度も気になるが、それ以上に、昨夜の停電と赤みがかった空の異常が忘れられなかった。
(本当にただの偶然なのか?)
窓の外には、変わらぬ夜空が広がっている。だが、どこか違和感があった。星の輝きが、ほんのわずかに強いような気がする。特に、リュウゼン星系の方向に位置する星々が、妙に瞬いていた。
「気のせい……じゃないよな」
ユウキは思わず呟いた。まるで、星が何かを伝えようとしているかのような感覚に襲われる。
何かがおかしい。
彼は立ち上がり、窓を開けた。冷たい夜風が部屋の中に流れ込む。じっと星を見つめていると、不意に胸の奥でざわめくような感覚が広がった。
(これって……昨日の時と同じ……?)
次の瞬間、耳鳴りのような音が頭の中で響いた。
「――こちらを見ているのか?」
誰かの声がした気がした。
ユウキは驚いて振り返った。だが、部屋には誰もいない。
「気のせい……?」
だが、心臓の鼓動は早まり、背筋が冷たくなっていた。
外を見ると、再びリュウゼン星系の星々が異様に輝いている。その瞬きは、まるで何かのサインのようにも見えた。
(父さんは、これに気づいていたのか……?)
ユウキは窓を閉め、ベッドに座り込んだ。
胸の奥で確信に近い感覚が芽生えていく。
これは、ただの偶然ではない。何かが起こり始めている――。




