5. 家族の絆と断絶
ユウキは翌日も、心の中で母との会話を反芻していた。母が父の失踪について触れようとしない姿に、何か不自然なものを感じていた。その不安を感じるたびに、家族の絆がかすかな糸で繋がれているような、でもその糸がどこかで切れてしまいそうな気がしてならなかった。
その日、ユウキは母と顔を合わせる機会があった。食事の支度をしている母の横顔を見ながら、ユウキは言葉を選んだ。
「母さん、父さんのこと…」
母が包丁を手にしていた手を止めるのがわかった。ユウキの声に反応した瞬間、その表情が一瞬だけ曇るのが見えた。ユウキは息を呑み、続けた。
「父さんがいなくなった理由って、本当にわからないの?」
「ユウキ…」
母は静かに振り向き、彼の目をじっと見た。その目には、どこか遠くを見つめるような深い悲しみが漂っていた。しばらく沈黙が続いた後、母がゆっくりと口を開いた。
「父さんがいなくなった理由…それはね、あなただけにはわからないことよ。」
その言葉がユウキの胸を刺した。母の目は、何かを背負い込んだように険しく、そして冷たく見えた。ユウキはその瞬間、母が何か大きな秘密を抱えていることに気づいた。
「でも、父さんが何をしていたのか、どこに行ったのか…」
ユウキは食い下がろうとしたが、母は急に立ち上がり、厳しい口調で言った。
「もうその話はやめなさい。」
その一言が、ユウキの心に強く響いた。母の目の奥に見えたものが、どこか不安で、そして怖かった。ユウキはその空気を感じ取った瞬間、もうこれ以上母を追及しても意味がないことを悟った。
「わかった…」
ユウキは低く答え、黙って台所から離れた。だが、その瞬間、母の背中に隠された何かを見たような気がした。それは、家族の絆が徐々に崩れていく音のようにも聞こえた。
ユウキが部屋に戻ると、無意識のうちにペンダントを手に取っていた。星型のシンボルが微かに光を反射し、その光がユウキの目に直撃した。父の言葉、母の反応、そしてペンダントの謎。すべてが一つに繋がっていくような気がした。
家族として過ごしてきた日々は、確かに大切な思い出だ。しかし、その思い出がどこかに歪んだ影を落とし、ユウキの心を締め付けていた。母が抱えている秘密、そして父の失踪に隠された真実が、今やユウキにとっての最大の課題となった。
ユウキは心の中で誓った。どんなに時間がかかっても、家族を守り、父を見つけ出す。彼には、それを成し遂げる力があると信じていた。星々が示す秘密に、必ずたどり着けると確信していた。