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星空の約束、君と僕の未来  作者: 風月 凜音
第六章:新たな未来への誓い
38/41

38. 決断の時

夜空には、無数の星々が瞬いていた。

その光を見上げながら、ユウキは静かに息を吐く。


ローブの人物は何も言わずに立っていた。

アリスは不安げにユウキの横顔を見つめながらも、彼の決断を待っている。


「ユウキ……」


彼女の小さな声が、静寂を破った。


「まだ、答えは出ないの?」


ユウキは目を閉じる。


「……正直、わからない。」


彼は自嘲気味に笑った。


「この世界を救う力が必要なのは理解してる。でも、その力を受け入れたら俺はどうなるのか、本当にわからないんだ。」


記憶を取り戻せば、この世界の崩壊を止めることができる。

だが、それと引き換えに、今の自分がどう変わるのかは誰にも予測できない。


「……俺は、本当に“ユウキ”のままでいられるのか?」


不安を口にした瞬間、アリスがきつく拳を握りしめた。


「ユウキがユウキじゃなくなるなんて、そんなの嫌!」


彼女の声が震える。


「たとえ記憶を取り戻したとしても、今ここにいるユウキがいなくなるわけじゃないって、私は信じてる。でも……もし、ユウキが“ユウキ”でいられなくなるなら……!」


言葉を詰まらせたアリスの手が、ユウキの袖をぎゅっと掴んだ。


「そんなの、耐えられない……」


ユウキは驚いたようにアリスを見る。


彼女の瞳には涙が溜まっていた。


「……アリス。」


ユウキの心の中で、何かが少しずつ形を成していく。


——俺は、この世界を救いたい。

——でも、それ以上に、アリスを悲しませたくない。


それは矛盾した願いだった。


けれど——


「……俺は、俺でいたい。」


ユウキは静かに呟いた。


「この世界を救うために必要なことがあるなら、俺はそれを受け入れる。でも、もしその結果、俺が俺じゃなくなるなら……それは、違うと思う。」


ローブの人物が、ゆっくりと頷いた。


「ならば、決断するがいい。お前自身が進むべき道を。」


ユウキは目を閉じ、深く息を吸う。


そして、再び目を開いた時——その瞳には、迷いが消えていた。


「……俺は、この世界を救う。でも、俺自身を捨てることはしない。」


アリスが驚いたように彼を見上げる。


「ユウキ……?」


「記憶を取り戻す方法は、これだけじゃないはずだ。完全に元の自分を取り戻すのではなく、今の俺のままで、この世界を救う方法を探す。それが、俺の選択だ。」


ローブの人物は一瞬黙った後、やがて口元に微かな笑みを浮かべた。


「……面白い。お前がどんな選択をするのか、見届けさせてもらおう。」


そう言うと、彼はゆっくりと後ろへ下がり、闇の中へと姿を消した。


静寂が戻る。


ユウキはアリスの方を向き、真っ直ぐに彼女の瞳を見つめた。


「……待たせて、ごめん。」


アリスは涙を拭い、ふっと微笑んだ。


「ううん、ユウキが決めたなら、それでいい。私は……どんなユウキでも、ユウキだから。」


その言葉が、ユウキの心に温かく染み渡る。


夜空の星々は、まるで彼らを祝福するかのように、静かに輝いていた——。

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