32. 闇に沈む光
ユウキとアリスが歩みを進めると、道は次第に暗くなり始め、星々の光が薄れていくのが感じられた。まるで、彼らが進んでいく先に、何かが待ち構えているようだった。アリスは少し歩調を緩め、ユウキの方を振り返った。
「これが、君の次の試練だ。」
ユウキはその言葉を聞いて、思わず立ち止まった。前を見ても、後ろを振り返っても、ただ暗闇しか広がっていない。その不安な空気に、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
「試練…?」
ユウキが不安げに尋ねると、アリスはうなずき、少し足を止めて目を閉じた。しばらく静かな時間が流れ、彼女はようやく口を開いた。
「この場所は、君が自分の心の中にある闇と向き合う場所。どんな光も、ここでは消えてしまう。自分の弱さ、不安、恐れを乗り越えない限り、次には進めない。」
その言葉に、ユウキはますます心の中で不安が膨れ上がっていくのを感じた。目を閉じて、深く息を吸い込む。ナナとの約束、仲間との絆、それらを守るために歩き続けてきたはずなのに、今、心の中でその約束が揺らいでいるような気がした。
「僕は、そんなに弱いのか…?」
彼は自分に問いかける。だが、その答えをすぐには出せなかった。心の中には、まだ確かにナナとの約束がある。けれど、その約束を守るために必要な力が足りていないように感じていた。
「アリス、僕はどうすれば…?」
ユウキの声は震えていた。彼は自分の不安を隠すことができず、アリスに向かって声をあげた。アリスはしばらく黙っていたが、やがて静かに歩き出すと、ユウキに向かってこう言った。
「君が守りたいと思うもの、その気持ちを信じなさい。恐れずに、前に進んでみるんだ。どんな暗闇でも、星の光は消えない。君の心の中にある光を信じることが、この試練を乗り越える鍵になる。」
アリスの言葉は、ユウキの心に少しずつ響いてきた。彼は胸の奥で、何かが解けていく感覚を覚えた。自分が守りたいもの、それがどれほど大切で、どれほど強い気持ちかを再確認することが、今の自分には必要だった。
ユウキは深く息を吸い込み、暗闇の中で一歩踏み出す。その足音が、静寂を破るように響いた。
「僕は負けない。ナナとの約束、絶対に守る。」
その言葉が、彼に新たな力を与えてくれるようだった。闇の中で光る星々のように、彼の中にも確かな光が宿ったことを、ユウキは感じていた。