28. 目の前の選択
新たな場所に足を踏み入れたユウキとナナの目の前に広がっていたのは、まるで異世界のような風景だった。彼らが立っている場所は、夜空が深く広がり、無数の星が輝いている。しかし、その星々は、どこか不安定で、まるで瞬きが狂ったようにちらついている。
「これが、星の島の一部なのか…?」ユウキは周囲を見渡しながら呟いた。
「ここは星の島へ繋がる道、でも同時に『試練の場所』でもあるわ。」ナナがその場を警戒しながら、ユウキに言った。「ここに来た者は、星々の力に触れることになる。どんな選択をしても、必ず何かが変わる。」
ユウキはしばらく黙っていた。目の前に広がる光景は、幻想的でありながらも不安を掻き立てるものだった。彼の心に浮かぶのは、さっき影の声が告げた言葉。「代償が必要だ」という警告だった。
「代償…か。」ユウキはつぶやき、星々を見上げた。「でも、俺は進む。この先に待っている真実を知りたい。」
その時、突然、彼らの周りに一筋の光が現れた。光の筋が空間を切り裂くように現れ、次第に形を成していく。その光の中から、かつて見たことのある人物の姿が現れた。
「ユウキ…ナナ。」その声は、ユウキには聞き覚えがあった。アリスだ。
「アリス…!」ユウキは驚きの声をあげた。だが、彼女の姿が見えていることが、同時に不安を呼び起こした。なぜアリスがここに?それとも、このアリスが本物ではないのか?
アリスはユウキの目をじっと見つめ、静かに口を開いた。「ユウキ、あなたはこの先の選択に困るでしょう。でも、覚えておいて。裏切りの星には、二つの真実が隠されている。ひとつは、あなたが探し求める未来。もうひとつは…」
アリスの言葉が途中で止まり、空気が重くなる。ユウキはその言葉に引き込まれるように、彼女の目を見つめた。
「もうひとつは?」ユウキが息を呑んで尋ねた。
アリスはゆっくりと頷いた。「もうひとつは、あなたが失うべきもの。選択の先に、何が待っているかはわからない。でも、その代償を払う覚悟を持って進みなさい。」
その瞬間、アリスの姿がぼんやりと霞んでいく。ユウキは焦って手を伸ばすが、彼女の姿はすぐに消えた。残されたのは、深い闇と星の光だけだった。
「アリス…一体、何が…?」ユウキはその場で立ち尽くし、心の中に渦巻く疑問と不安に苛まれた。
ナナはユウキに近づき、しっかりと肩を掴んだ。「アリスが伝えたかったことは、きっと選択を迫られるということよ。そして、その選択があなたの未来に大きな影響を与える。行くべき道は、あなたが決めること。」
ユウキはナナの言葉を受け止め、もう一度周囲を見渡した。目の前に立ちふさがる無数の星々、そしてその向こうに広がる暗闇が、彼を試すように待っている。
「俺が選ぶ道…それが、どんな未来に繋がるとしても、進むしかないんだ。」
その言葉を口にした瞬間、ユウキは覚悟を決めて歩みを進めた。暗闇が迫り、空間が歪むように感じたが、それでも足を止めることはできなかった。アリスの言葉、そして自分の決意が、彼を支えていた。
そして、彼が進んでいく先には、次第に見えてくるのは、未知の世界。そして、その世界には、彼を待ち受ける試練が、どんな形で現れるのか、誰にも予測できなかった。
――ユウキの選択が、次の物語の扉を開く。




