18. 星に導かれる場所
「天文台……?」
ナナがユウキの手帳を覗き込み、書かれた文字をじっと見つめる。
「この町にそんなのあったっけ?」
「昔はあった。でも、今はもう使われてないらしい」
ユウキはスマホで天文台について調べながら答えた。検索結果には、町外れの丘にある旧天文台についての記述が出てくる。
『○○天文台――数十年前まで観測施設として使われていたが、現在は閉鎖されている』
「……あれ? ここってさ、昨日お前が星を見てた丘の近くじゃね?」
ナナが指をさしながら言う。
「そうだな……偶然とは思えない」
父の遺した手帳に書かれていた「天文台」。そして、円盤に刻まれた星の模様。
「……試しに、この星座の方角を調べてみるか」
「え? どうやって?」
ナナの質問に、ユウキはスマホの天体アプリを起動し、昨夜の星の位置を確認する。
「この円盤の模様、正確な星座じゃないけど、似た配置の星がないか探してみる」
アプリを操作しながら、ユウキは昨夜見た星の輝きと円盤の模様を照らし合わせた。
そして、ある一点で手が止まる。
「……この方角だ」
ユウキが示した先は、まさに旧天文台がある丘の方向だった。
「うわ……ほんとだ。円盤の星の並びとほぼ一致してる」
ナナもスマホの画面を覗き込み、目を見開く。
「やっぱり、この円盤はただの装飾品じゃない。父さんは、この天文台に何かを残したのかもしれない」
「……行くつもり?」
ナナが真剣な表情で問いかける。
ユウキは迷いなく頷いた。
「もちろん。何があるのか確かめないと」
「ふーん……じゃあ、あたしも行く」
「え?」
「ここまで来たら気になるでしょ? それに、あんた一人じゃ危なっかしいし」
ナナは腕を組んで自信たっぷりに言う。
ユウキは一瞬ためらったが、すぐに苦笑した。
「……まあ、心強いよ」
「でしょ?」
こうして、二人は放課後、旧天文台へ向かうことを決めた。
父の秘密を解くために。
そして、星々が指し示す運命の先を確かめるために――。




