14. 夜空の警告
息を切らしながら家へと駆け込んだユウキは、玄関のドアを勢いよく閉めた。
(何だったんだ、今の……)
背中にじっとりと汗が滲んでいる。
父の声。だが、そこには誰もいなかった。
(気のせい……なのか? それとも……)
不安を振り払うようにリビングへ向かうと、母がダイニングテーブルに座っていた。
「……遅かったわね」
何気ない口調だったが、その目はどこか険しい。
「ちょっと、寄り道してた」
ユウキはなるべく平静を装いながら、鞄を抱え直した。母が箱に気づいていないか気になったが、特に目を向ける様子はない。
「そう……ご飯、温める?」
「いや、大丈夫。部屋で少し休むよ」
そう言って、ユウキはそそくさと自分の部屋へ向かった。
部屋のドアを閉めると、すぐに鞄を開ける。
箱の中には、やはりあのノートと円盤が収まっていた。
「……やっぱり、夢じゃない」
ユウキはノートを開いた。
父の書いた文字が、まるで何かを訴えかけるように並んでいる。
『接触に注意せよ。星が警告を発する』
(星が……警告?)
その瞬間、ふと窓の外に目をやった。
「……っ!」
息を呑んだ。
夜空の星々が、不自然なほど強く輝いていた。
いつも見慣れたはずの星々が、まるで何かを伝えようとするかのように、明滅を繰り返している。
その光はまるで――合図 のようだった。
(何かが……始まる。)
直感的に、ユウキはそう感じた。
手のひらに残る、冷たい金属の感触。
この円盤は何なのか。父は何を知っていたのか。
ユウキは決意した。
もう、後戻りはできない。
知るしかない――この星々の真実を。