12. 闇に沈む丘
放課後、ユウキは学校を出ると、真っ直ぐ北東の丘へ向かった。
丘のふもとは草木が生い茂り、夕暮れの影が長く伸びている。普段は滅多に人が来ない場所だが、今日は妙に静かすぎる気がした。
(本当にここに何かがあるのか……?)
スマホの星図アプリと手帳の星図を交互に見比べながら、丘を登る。座標が示す場所は、丘のほぼ中央――少し開けた場所だった。
やがて、目的の地点にたどり着いた。
「……ここか」
足元の土をじっと見つめる。ぱっと見、ただの地面にしか見えない。だが、ユウキは父の手帳にあった言葉を思い出した。
『この場所に、何かがある』
――確かめなきゃ。
ユウキは手を伸ばし、地面を探る。すると、少し土が盛り上がった部分があった。
「……ん?」
試しに指で土をかき分けると、硬いものに触れた。さらに掘り進めると、やがて木箱のようなものが姿を現した。
「……埋められてた?」
箱はしっかりとした作りで、鍵のようなものはついていない。ユウキは慎重に蓋を開けた。
中には、一冊の古びたノートと、小さな金属の円盤が入っていた。
「これは……?」
ノートを開くと、そこには見慣れない文字と、無数の星の座標が書かれていた。
(父さんの……記録?)
その瞬間、背後の草むらで何かが動いた音がした。
ユウキは息を呑み、振り返る。
誰かがいる。
「……誰だ?」
だが、返事はない。風に揺れる草のざわめきが響くだけだった。
(……気のせい?)
だが、胸騒ぎがする。ユウキはノートと円盤を箱ごと鞄に押し込み、足早にその場を後にした。
遠ざかる丘の上で、星が瞬いている。
まるで、何かが見ているかのように――。




