10. 不可解な音
その夜、ユウキはベッドに横になりながら、父の手帳をめくっていた。
――リュウゼン星系、星の異常、未知の存在。
(父さんは、これをどこまで解明してたんだ?)
母の警告が頭をよぎるが、それでもユウキの好奇心は止められなかった。何かが起こり始めている。昨夜の星の輝きも、母の言葉も、すべてが繋がっている気がする。
静寂が部屋を包む。
……カタン。
「?」
ユウキはハッと顔を上げた。
どこかで、何かが動いた音がした。
風かもしれない。そう思いながらも、鼓動が少し速くなる。
……ギィ……ギィ……
今度は、床を軋ませるような音。
(誰かいる……?)
ユウキは布団を抜け出し、ゆっくりと部屋のドアに近づいた。ドアノブに手をかけるが、なぜか一瞬ためらう。心臓が鼓動とともに高鳴る。
意を決して、そっとドアを開けた。
廊下は暗い。月明かりが窓から差し込み、ぼんやりと光が広がる。
「……母さん?」
小さく呼びかけたが、返事はない。
音の出どころを探し、慎重に歩を進める。すると――
……コン……コン……
今度は、玄関の方から何かを叩くような音がした。
(誰かが……いる?)
ユウキは足音を殺しながら、玄関の前まで近づく。
そして、静かにドアスコープを覗き込んだ。
そこには――誰もいなかった。
「……?」
ドアを開けるべきか、一瞬迷う。だが、夜中のこんな時間に、誰かが訪ねてくるはずがない。
(やめておこう……)
ユウキはそう判断し、そっと後ずさる。
……だが、その瞬間。
背後の窓に、ぼんやりとした影が映った。
「っ!!」
ユウキは勢いよく振り向いた。だが、そこには何もいない。
ただ、窓の外の星々が異様に輝いていた。
まるで、自分を見つめているかのように――。




