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百合小説【第76話】終幕④

最優秀賞を受賞した嘉陽田さんは舞台正面に案内され、微笑ましそうに笑みを浮かべた。


「白石さん、先程の発言を見事に有言実行なさいましたね。」


「ありがとうございます」


司会者がそう問うと、嘉陽田さんはただ一言お礼を言った。


「この気持ちを今誰に伝えたいですか?」


そう聞かれて一瞬、大群衆の中に紛れる私を見つけ合わせた。おどおどと手を動かしていると、舞台上で嘉陽田が手を口に添えてクスリと笑い、舞台正面に顔を向けた。


「2日間一緒に行動してくれた親友を始め、この曲を指導してくださったボイストレーナーさんや曲を作ってくださったSe-waさん。そして、今回私のために投票してくださった皆さんにこの気持ちを伝えたいです。」


「次に、本大会各優勝者への授与式を行います。白石さん、蔵前さん、西条さんの3名はこちらへお越しください。」


その3人のみを残し、スポットライトから舞台裏の常闇へと消えていった。ネット配信では、祝うコメントよりも運営に対するアンチが多く、唐突に部門が追加されたことに疑念を抱いているらしい。そのコメントは的を射た発言と、それに便乗した内容のないアンチコメントと、運営や受賞者を擁護する2者対立になっていた。西条さんがもし嘉陽田さんサイドだったならば、私は崩れたち、もしかしたら運営ではなく西条さんに八つ当たりをしていたかもしれない。気になるもやもやを抱えたままスマホを閉じて、表彰の準備が出た壇上を見上げた。


「表彰状 第31回 渋谷学園新宿中学高等学校灯篭祭カラオケ大会 得点部門 第1位 蔵前千代」


高等部の校長からトントン拍子に表彰が行われ、首には1人1人メダルがかけられていった。西条さんはそんなことを気にもせず舞台上でにまにまと笑っているが、本心からか作っているのか、現状を知ってからはどちらとも言えない。


「表彰状 第31回 渋谷学園新宿中学高等学校灯篭祭カラオケ大会 総合部門 最優秀賞 白石杏奈 」


最優秀賞の発表になり、脚1本ほど長さをしたトロフィーが表彰机に置かれている。


「よってその栄誉をたたえ、これを表します。」


先生が読み上げ、表彰状が渡されようとしているその時、嘉陽田さんはそれを受け取らず、辺りがざわつき始めた。その後、校長先生に対しハンドサインを送り、マイク読み上げていたマイクを取った。


「私は偶然にも優勝しましたが、本来提示されていたプログラムであれば、西条さんに優勝を譲っていました。そしてカラオケ大会という本来の趣旨に乗っ取れば、蔵前さんが優勝です。それを考えれば、最優秀賞は合ってないようなものだと思います。」


「3人でこのトロフィーを受け取りたいです。校長先生よろしいでしょうか。」


その言葉が体育館に響くと、会場全体が静まり返った。

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