百合小説【第7話】いつもより、軽やかな足で
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「また明日ね」
「うん」
今日、初めてあった人と友達になった。理由は一方的なようで、どこかで私が望んでいたことなのかもしれない。9時を過ぎても街灯の光と居酒屋で眠らない夜の街を1人歩く。
何気ない日常で、特別な1日だった気がする。
いつもより軽やかな足で神楽坂駅に向かい、9時台の電車に乗った。それにもかかわらずサラリーマンや大学生らが乗っていて立ったまま電車に揺られる。いつもはバス帰りだが、たまになら悪くは無い。バスだといつもは2時間はかかるが電車なら30分で着く。満員電車はあまりいい思い出がないため使わないが、こういう混んでいない時なら電車はありかなと思う。
何本か乗り継ぎ葛西駅に着く。ママに頼まれていたものを東○ストアで買おうとスマホで買い物リストを見ていると通知が来た。
画像が送信されました
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6件のメッセージ
『さっきの写真送っとくねん』
嘉陽田さんからさっき撮られた画像が送られてきた。
ブレブレの写真から私の盗撮写真まで複数枚ある。
嘉陽田さんの件、忘れていたけれどあの人は一体何者なのかを私は知らない。
一方的に知られている恐怖を知っているが、それでも気になってしまった。
買い物は続けながらスマホで嘉陽田さんという人間を調べることにした。
調べている間に買い物は終わっていて、エコバックに物を詰めて家まで歩いて帰る。
東○ストアを出て家に向かう。こういう時のT○itterだと『白石甘里』という名前を検索にかけて見る。
話題の欄には高橋 映一郎の件と一緒に出てきて、どうやら彼は再逮捕らしい。「ほんの出来心だったと」言いつつ被害者が他にもいるそうだ。やはり嘉陽田さんを擁護する内容が多く安心したが、記事の引用とともに避難する無慈悲な人もいる。
『白石甘里』をW○kipediaで調べて見ると、天才○れびくん番組で子役時代から活躍していたらしい。そこから中学進学時に事務所を脱退、その後は個人の時期が数年、そして今の事務所という経歴がある。子供時代など知らないのに既視感がある。明るく活発でリアクションが激しい人なのだろう。その反面、彼とどうしてそのような関係になったのか、もし想像していることが正しいのならという想像をしてしまい青ざめる。調べている間に家に着く。スマホをスカートのポケットにしまい、カバンから鍵を出す。
「ただいま」
「おかえり小百合〜」
「これ」
買ってきたものを渡す。P○yPayで支払ったので、その分の金額を後でママが送ってくれる。
中身を漁り、ママがレシートと買ってきた物を凝視する。
「あれ?カレーのルーは」
「あれ、買い忘れた…かも…」
ながらで買い物をしていたせいか、肝心のカレーのルーを買い忘れていた。
「珍しいわね〜今まで買い忘れなんてなかったのに」
「ごめん…考え事してて…買いに行こうか?近くま○ばすけっとあるし」
「いいわよ気にしないで、そうしたら…肉じゃがか豚汁どっちがいい?」
「豚汁…かな」
「わかった、悩み事?どうしたの」
悩み事を聞かれるが何を話したらいいのか順序建てが難しい。嘉陽田さんの話しか、それともニュースの話しか、少し黙り込んでいると、猫が私の足元をスリスリ擦り始めてくる。
「チャチャ〜」
キジトラの猫で名前はチャチャ。茶色だからチャチャという名前だが、小学生から約10年の付き合いである。前までは俊敏に家の中を動き回っていたが、最近は歳のせいか2階のリビングでよくおじいちゃんとゆっくり過ごしている。私が帰ってくると昔から膝の上に乗ってくることがあり、この気まぐれさがなんとも愛おしい。歳のせいで上がれないため、チャチャを抱え私の膝の上に乗せる。
「今日ね、お友達ができてね、嘉陽田さんって子なんだけど」
「珍しい苗字ね初めて聞いたわ、名前は?」
「杏里って名前」
「女の子か、どこで出会ったの」
「トイレ行こうとしたら声かけられて」
「何それ?」
「だよね私もよくわかってない」
「その子が転校生らしいんだけど、英語教えてくれたり一緒に遊んでくれたり不思議な子でね、今日初めてあったのに」
「そういうことが小百合に合ってると思うわ、何にそんな悩んでるの?」
「その…」
「?」
「小百合?」
「ごめん言葉にするのが難しくて…一旦部屋戻るね」
「先風呂入っちゃいな、まだ作るの時間かかるから。」
「わかった。」
猫を下ろし、椅子から上がる。荷物は一旦3階にあるの自分の部屋に置き、寝巻きを持って2階にあるお風呂場に入る。何かを隠すように、今日はお風呂場の鍵を閉めた。