百合小説【第66話】2日目の学園祭
家から歩いて10分ほどで高校に着いたが、皆時間に追われるように慌ただしく動いている。着いてからさらに構内を歩いてメイドカジノのある大教室に着いた。
「おはよ〜」
「最終日に遅刻とはけしからんぞかよちん」
思いのほか人はいて、先にいることに対してのマウントを取るように西条さんが先生のような口調で話してくる。
「まだ8時半ですぅ」
「もう8時半ですぅ」
「私8時に来たんですけど、お・ね・ぼ・う・さん!」
「そういう所でしかマウント取れないんだねぇ、Twitterでやりなよ鉄渋ちゃん」
「晒してやるわよ!」
「やってみろ!!」
「そういうのいいから着替えいきますよ」
このふたりの口論にキリがなさそうだったので手を掴んで着替えにいこうと出口に引っ張る。
「良かったなぁ止めてくれるやつがいて!止めてくれなかったら西条なんかけっちょんけっちょんに」
ほんの出来心で掴んでいた腕をパッと離した。
「離すなよ!」
離すことをあまりよく思っていないのか、案の定嘉陽田さんがこちらを見て怒ってきた。仕方が無いのでまたもう1回掴んで見ると、少し引っ張られるくらいの感覚で、戦意は毛頭なさそうだ。
「こいつが止めなか…だから離すなよ!!!」
「飼い慣らされてる駄犬みたい」
「行きますよ」
「おんま後で覚えてろよ」
そうして、私と嘉陽田の2人はトイレに着替えに行くことにした。
「…」
「なんか見慣れたはずなのに新鮮」
「髪編んでもなければ結んでもないですからね」
「確かに、もうやんないの?」
「そうですね、シフトもないので」
「昨日回れなかったところ回ろうかなぁって」
「例えば何かありますか?」
「おば」
「息の根止めますよ」
「体育館やたら盛りあがってますね」
「えぇっと、お笑いライブやってるって」
「それはどうりで」
その体育館の外で、法被を来た人達がビラを配って声を張っている。
「13時から灯篭祭カラオケ大会を開催しま〜す!飛び入り参加OKでーす!」
通りがかった私たちに近づいてきてビラを1枚貰った。
「なんですかそれ」
「チラシ、飛び入り参加OKらしい」
「私はやりませんよ」
「ちぇ」
先に釘を指しておいた方が賢明だと判断して先行を取った。ビラをくばっていた人が、食いついている私たちの前に立ち止まって回答を待っているようだ。
「どうですか?」
「嘉陽田さんは出るんですか?」
「めちゃくちゃあり」
「良かったら参加しますか?」
「うーしやるかー」
「本当に出るんですか?」
「面白そうじゃん」
二つ返事でOKした嘉陽田さんと隣にいた私を、テントのある方向まで連れて行って参加シートに名前を書いた。
「まって友里恵いんじゃん」
「本当ですね」
おもいの他人数は多く、嘉陽田さんを含めて8人がカラオケ大会に参加するらしい。思いのほか男性が多い気がするが、心做しか何かしらの下心がありそうな感じがした。
「ご記入ありがとうございます。開始30分前になりましたら、こちらまでお集まりください。」
「よろしくお願いします〜」
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