百合小説【第6話】賑やかなのもたまには
「私…その…高校留年して…て」
あまり口にしたことは無いし、同じクラスの同級生にも言ってはいない。こんな所でボロが出るなんて思ってもいなかった。
「さっちゃん…へぇ…」
「いやその…あんまり…いないじゃん…高校で…なんて」
「年上?ってことは同級生の先輩だ」
私が思い描いていた反応とは良い意味で違い胸を撫で下ろす。
「別に悪いことじゃないでしょ?そんな気にしなくてもいいって、世の中9浪とか12浪の人がいるんだから問題ない問題ない!」
「あの比較が…えぇ」
「おまたせ〜」
私のエスプレッソと嘉陽田さんのカフェラテが提供された。
「写真頂き」
出された直後に、すかさずそれらを写真に収める。どうやらイ○スタに載せるらしい。
「わぁぁたし映るの苦手でぇ…」
「B○eReal撮ろうよ〜幸代さんも一緒に」
本当に名前の知らないSNSアプリの名前を出された。顔写真は苦手なため、すかさず顔を下に向ける。
「えーさっちゃん?」
「私顔そんな撮られたくなくて…髪ボサボサだしあんまり自分の顔好きじゃないし」
「さっちゃん美形なんたなら!自信持とうよ!さっちゃんグラマーで魅力があるんだから」
「…」
何も聞かなかったことにしてエスプレッソを飲む。豆は友達のお父さんの好みで変えることが多く、その味のほとんどが一期一会である。今回は少し苦味があるかもしれない。
「髪っていつも誰が切ってるの?」
「ママが切ってる…美容師免許持っててね」
「ほほう…」
私の髪の毛を触り始める。少し絡まりはねたような癖と、日々の風呂キャンからか髪が傷んでるのかもしれないと私も思う。だが美容に関する興味は何一つないのだ。
「さっちゃんの場合は縮毛矯正かなぁ?もう髪がトゥルントゥルンになるの!うちもやってるからどうかなって?」
「これ、サービス」
「いいんですか?」
「あなたがいい子そうだから。小百合ちゃんのことよろしくね。」
幸代さんが作ったであろうクッキーと、冷やしパンケーキが提供された。
「はい!ありがとうございます!さっちゃんどっち食べる?じゃんけんで決めよっか?最初はグー」
こんなに賑やかなのもたまにはいいかもしれない。
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