百合小説【第57話】私たちは〝まだ〟付き合っていない
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「んで、私にどうしろって」
「小百合さんお付き合いさせていただいてもよろしいでしょうか?」
私は未だに承諾してないのだけれど、親から先に説得するなんて、先が見えない。
「え、してんでしょ?なんでそんな許可必要なわけ?小百合、また変な人に捕まって…しかも相手は同性って」
「それは別に…」
「またって…前になにかあったんですか?」
「小百合ほんと馬鹿だからさ、中学の時」
「言わないで」
学校に行っていない時期、私はSNSだけが居場所だった。廃人のよう朝から夜までゲーム配信をして、そこから交流を持った人と色々あった。中身を出せば人気者になっていて、それを自分の実況が上手いからだと勘違いしていた痛い時期が続いた。配信者仲間から『リアルで会おう』なんていわれた私は嬉しくなって、れない化粧道具でおめかしをして行った秋葉原。なんの知識もなかった私は気がつけばその人と鶯谷のラブホテルに入りかけていて大問題に発展したそんな過去がある。収益がではじめた頃にVTuberの立ち絵も書いてもらい、そこから転生して、今の事務所に入るきっかけもそこからだった。
「もう終わった話じゃない、それでね」
「小百合が嫌がってますお母さん。」
それを全て知っている母親は、何か話題を振ればこのように1から10まで出てくる。私の嫌がる表情と察してか、嘉陽田さんは止めに入った。
「聞いたのはあんたでしょ?なに急に偽善者ぶっちゃって」
「まだ出会って1ヶ月しか経っていないので、小百合のこと私何も知らなくて、これから知っていけたらと思ってます。」
「え、それだけ?言いたかったの?自己中過ぎない?」
この場では言えないけれど、それは私も思う節がある。嘉陽田さんの距離感がおかしいことと一方的なこと、付き合う前に一線を越えてしまったこと、嘉陽田さんが自己中だなんで既に知ってる。それを知った上で関わって、今みたいに交友関係が広くなって、これだけ聞けば美談かもしれない。
「もっと話すことはいっぱいあって…その。あの小さい時の」
「それを聞いて黙れって言ったのはあんただろ」
痺れを切らしたのか、何度も聞くなと言わんばかりの罵声がカフェ全体に轟いた。ゴホンと席を1回し、それをなかったかのように話を続ける。
「ごめんなさいね取り乱しちゃって、たまにあるのよ。で?」
「杏里ちゃん、落ち着いて。私話すから」
隣にいた嘉陽田さんがこちらを向いて手を繋いだ後に、悔しそうな表情を浮かべ下を向いた。
「ママ、聞いて欲しいことがある。」
「何、小百合?」
「私たち、まだ付き合っていない」
「え」
「え」
「お待たせ…」
幸代さんが注文を聞きに来たと同時にその発言をうっかり聞いてしまった。




