百合小説【第50話】頭の回る小学生
〇いちゃんのコスプレをして初対面の家族連れと嘉陽田さんと校内を巡ることになった。歩いているだけで視線がするのはこの服装のせいだと思う。
「どうしてこちらに?」
「娘が高校選びで悩んでおりまして…こちらの高校ですと学系別なので、この子が学びたい事が学べるんじゃないかと。」
嘉陽田さんが受験生であろう家族連れ姉さんとお母さんと話している。
「どこ志望?」
「芸術志望です」
「なるほど、確かに中学から美術全振りなんてとこ少ないしねぇ〜私編入だからあれだけど」
「元々はどこに在学していたんですか?」
「女子学園です」
「あらまぁ!御三家じゃありませんか…」
「理数学系です!銀〇こ店員が焼いたたこ焼きやってまーす!」
上の学年はたこ焼きをやっているらしい、味も4種類とかなり豊富に見える。
「パパ!あれ!食べたい!」
私の手を引っ張ってお父さん腰を叩く。父親がその叩いたところから財布を取り出してたこ焼きを買うことになった。この子人生2週目の知略家ではないかと思うほど賢い。
「良かったら御二方もどうぞ」
「いいんですか…?」
「お時間頂いている訳ですし、これくらいはさせてください。」
「ありがとうございます!」
味はできたてなこともあり、外見がカリカリで中かホロッホロのまさに銀〇このそれだと思う。400円でいいのだろうか…いや、奢りだからタダではないか。
「あ〜ん」
「言うタイプなんだ可愛いねぇ〜は〜いみほちゃーん」
「あ゛っっっっつ゛」
たこ焼きをみほちゃんの口に運ぶと、濁点ばかりの低めの声がでた気がする小学生…なんだよね?本当に。
「ごめんねぇ!熱かったよねぇ…ふーふーした方がいいよねぇ」
私が息を吹いていいのか正直怪しい…だってよそのお子様ですもの。お嬢様言葉になるほど禁忌に触れないかが気になる。
「じーーーー」
それを伝えるように嘉陽田さんがこちらに視線を向けてくる。
「お、お父さんにしてもらおっか」
「嫌だ!」
「ほら、お姉さん困ってるよ」
「パパ口臭い」
なんて正直なんだ、反抗期の女子中学生のような…私反抗期来てないけど…!!!やはり怪しい薬を飲まされて幼女化されてしまったのではと思うほど…これは言い過ぎかもしれない。
「〇いちゃんがいい!」
その後無事息を吹きかけて食べる事ができた。お父さんは先程の言動でマスクを付け始めたのがとてもシュールで面白い。
その後は電音部や美術部、ニチアサ研究会などマニアックなものを見つつ、お昼を忘れて学校説明の時間になる。
「みほはどうする?」
「い゛く゛!!!!!」
小学生特有の高く強い声音が響く。
「私たちは入れないので」
「今日は本当にありがとうございました。」
「いえいえ、お役に立てたら嬉しいな」
「え」
そう話していると、みほちゃんが呆然と立ち止まる。立ち止まったみほちゃんの目線に近づけるように、お父さんがしゃがみ肩を掴んだ。
「やーだー!〇いちゃんと一緒にいたいーー」
「もう学校説明会の時間だからお姉さんとバイバイしなきゃ」
「えー。さっきのルーレット当選したため36倍、つまり、〇いちゃんコイン36万枚価値がある訳で、したがってう」
先程まで幼稚に話していた子が急に論理的に、そして饒舌に説明し始めた。人生2週目としか思えない言動の数々に戸惑いを隠せない。
「みほ、チョコブラウニー」
「やだ!〇いちゃん!」
「困ってるよ」
「私が困る、本日〇いちゃんと同伴する権利を得たのであります。」
どこの軍人だよ。そう説得の試合に痺れを切らしたのか嘉陽田さんが2人に向けて提案する。
「後で合流すれば良くない?」
「本当に今日1日よろしいのでしょうか。」
母親が口を開いて、私もその会話に混ざることに。
「全然大丈夫ですよ。それにみほちゃんの言ってる通りなので。」
「ありがとうございます。」
憑依していたものが剥がれたかのようにみほちゃんはまた幼さを取り戻した。
「んじゃまたねー」
「うん!またね!〇いちゃん!」
そうして、同伴していた家族一行は大講義室に入っていった。
「なんか、みほちゃんの言動かよちゃんそっくりなんだけどうける」
「んな事ないでしょ」
「頭の回転回るのに言動が幼いところとか、すーぐワガママ言うところとか面白いほど似てる。」
「私にもあーんして欲しいなぁ」
「理数学系でーす!カレー販売してまーす」
「激辛あるって、食べるよね?あ・ん・り・ちゃん?」
「そういう時だけやめてくんない?影井ちゃん」
「今は〇いちゃんですぅ〜からかわないで頂いて?」
「あー私の好きな影井ちゃんは一体どこへ行ったやら」
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