百合小説【第48話】小学生にギャンブル教えるって興奮するよね
「渋谷国際大学付属新宿中学高等学校第31回灯篭祭を開催します。」
「メイドカジノやってまーす!ぜひ来てくださーい」
「いいぃぃぃいらっしゃ」
「店番じゃないよ〜宣伝なんだから」
事件のせいで学祭の規模が縮小したとは言え、それでも受験を控えた人や区内の人で賑わっている。
「怖い…」
「確かに怖いかもだけど、一緒なら…ね」
「けどぉ…」
「ちょっとこっち」
連れられるまま、人気の少ない立ち入り禁止の教室に連れてこられた。
「小百合」
「????」
そんな怒られることしただろうか。
「VTuberやってたんでしょ。」
「だって人の目見ないし、怖いもん」
「VTuberだと思って。」
「私が…」
と言われましても…比較的やりたいことやりながらコメント読んで雑談とかそういうのだし…現実世界とわけが違う。現実世界とは違って饒舌にはなるが、歩きながら言葉1つ話すだけで精一杯だ。
「それに今の服○いちゃんじゃん」
「どっちがやりやすい?なりきるなら」
星野ルナとして接客するか○いちゃんのコスプレで○いちゃんとしてやるか。ルナとしてやるのもありではあるが自分になりきるような形だし…○いちゃんは解像度低かったら怒られないかも気になるが、学祭だし…。
「○いちゃんかなぁ」
「やっぱ怖い」
手持ちの大きさが可変するため、手を下に伸ばしてちょうどいい高さをみつけ固定した。
「ういっしょ」
「やっぱなりきるの怖い」
「これなら怖くない」
プラカードを持っていない手を差し出してきた。求めていたようなそれを繋ぐ。プラカードを肩に寄りかけた嘉陽田さんと宣伝場所に戻る。
「まじ助かるわぁ」
「おぉしょっぱな?」
「じゃないと無理」
憑依型と言えばいいのか、1つでも素を出せばまた元に戻りそうで出せない。
「ういちゃんだ〜」
保護者連れの小さい子にに指を刺された。
「おねぇちゃん小学生?」
「うん!あのね!ういちゃんと…」
人差し指をくっつけながらモジモジしだし口が止まる。親御さんが代わりに言おうとしたのを嘉陽田さんがすかさず止める。ナイスプレイ。
「言えるかな?」
目が合った途端に顔を隠すように下を向いて、再度こちらを見てきた。
「しゃしん!パシャってしたくて」
「よく言えました〜」
頭を撫でると嬉しそうに笑みを浮かべて喜んでいる。
「手馴れてるな…」
嘉陽田さんが声を漏らすと、この家族と一緒にいた受験生らしい風貌の子が話しかけた。
「あの、白石さんですよね。良かったらサインと写真いいですか。」
「もちろん。SNSの投稿は控えてくださいねぇ〜今うちの学校結構厳しくて」
娘さんと一緒に、それから芸名白石の嘉陽田さんと受験生と、最後に家族で写真を撮った。
「あとね、その」
「どうしたの〜」
「この、メイドカジノ?ってどこにあるの」
パンフレットを取りだし、同じ高さに合うようにしゃがんで説明する。
「んーとねぇ2階に行ってもらって、トイレ近くの、ここ」
「ういちゃんもいこ」
「かよちゃん」
「仕事中だし」
「そんなこと言わさんなって、いこら」
「いこら?うぉ」
手を引っ張り嘉陽田さんと家族と共にメイドカジノの教室に連れてきた。
「お客様ご来店でーす」
「イラッシャッセー」
受付に座っていた為井達が声を張って歓迎した。
「ラーメン店員やめろや」
親子連れのお客さんを案内している途中に為井が嘉陽田さんに話しかけた。
「嘉陽田、影井どしたん」
「ういちゃんなりきっとると。そんな感じ。」
「変わるもんだなぁ…」
「為井代わりに宣伝回ってきて〜」
「えー今楽だったのにー」
「後で菓子でも奢るからよ、ほれ任せた」
「えぇ…」
プラカードを為井に投げ渡し、残念そうに宣伝に回りに行った。
「かよちゃん、○い思ったんだけどさ、小学生にギャンブル教えるって犯罪みたいで興奮するよね」
「思想強いよ。さっちゃん」
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